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第37話 「白いアパート」


バスを降りて、住宅街へ少し歩くと大きな家が在って、垣根の壁に沿って進むと、白いアパートが見えた。


白いアパートの前に来ると、誠が立ち止った。

「ここだよ。」

「ボロって言ってたけど、そうでもないじゃない。」

「そう? 2階なんだけど。」


みずきが、今通って来た道の方を向いて、指を差した。

「ねぇー、あの大きな家が、守さんの家?」

「あーそうだよ。」

「すごーい! ファミレスみたい。それに、庭が広過ぎー。」

「全くだよなー。どう頑張ったて、あんな家には住めないよなー。」

「分からないわよ。あなたにも才能が眠ってるかもしれないよ。」

「だと良いんだけど。」


誠は、階段を上がって、鍵を開けた。

「散らかってるけど、どうぞ。」

「お邪魔しまーす。」


誠は部屋に入ると、照れ臭そうにソファーを彼く叩いた。

「こっちに、座って。」

「綺麗に片付いてるじゃない。いつもこうなの?」

「こんなもんだよ。」

「洋室なのに、ベッドじゃないんだー。」

「人が来た時に、部屋が狭くなるのが嫌なんだ。」

「毎日、布団を上げ下げしてるんだー。偉いなー。」

「大したことないよ。1分も掛からないし。」

「そっか。でも私は無理だから、ベッドにしてる。 さぁー、カレー作らなきゃ。」

「少しゆっくりすればいいのに。」

「作ってからゆっくりするよ。」

「そっか。じゃー、道具はここ。調味料は、そこ。」

「うん。急いで作るから待っててね。」

「じゃー僕は、その間に風呂に入るよ。」


誠は、服を脱ぎだし、パンツ一丁になった。

みずきの視界に、誠が入った。

「キャー、もう、何してんの、そんなところで。」

「えっ? あ~、いつもこうしてるから・・・。」


誠は、風呂に入った。

みずきは、手際良くカレー作りを進めた。


30分位して、誠が風呂からパンツ一丁で出て来た。

「キャー。」

「そんな声出すなよ。隣に聞こえるよ。」

「カレー出来た?」

「もう少し。」


誠は、テレビの前に座った。

アニメを見始めて少しすると、みずきが声を掛けた。

「お待たせ、出来たよー。」


誠が、ダイニングのテーブルに着いた。

テーブルには、カレーライスとコーンスープ、マカロニサラダとフルーツ。

「おー、すげー!」

「そんなことないよ。」

「この部屋で、こんな風にして食べるの初めてだ。頂きまーす。」

「頂きます。」

「おー、うめー! レストランのよりも美味いよ! 昼の弁当といい、本当に料理上手いんだなー。マジで、料理人になる才能あるよ。」

「そんな、そんな。これくらい誰でも出来るよ。」

「あのさー、お世辞で言ってると思う? 僕は、お世辞が嫌いで、自分の言った事には責任を持ってるんだ。今まで食べたレストランのカレーより、本当に美味しいんだ。自信を持っていいよ。それに、このコーンスープだって、インスタントとは全然違うし、美味しいよ。」

「そんなに褒められると、これからが困っちゃうなー。レパートリーがそれほど沢山無いし。」

「大変だから、弁当だって毎日作ることはないよ。負担になっても困るし。」

「ありがとう。でも、明日の夜は何がいい?」

「えっ? 明日も作るの?」

「約束、忘れてないよね? 両親から電話が来るまで、一緒に暮らすんだよ。」

「そうか、本気なんだ・・・。でもさー、もし、何日も電話が来ないってことは、何日も家族と会ってないということ?」

「まー、そういうことになるかな。」

「それって、どれくらい?」

「どれくらいって・・・、覚えてない。お姉ちゃんとは、この前ちょっと会ったけど。」

「ちょっとって、一緒に住んでないの?」

「う、う~ん。働いていて、収入がいいみたいで、綺麗なマンションに住んでる。実家は古くて嫌なんだって。」

「ダメな姉さんだなー。こんな可愛い妹に、色々させて。」

「えっ、今何て言った?  私のこと、可愛いって、言ったの?」

「あ~、でもそれは、言葉のはずみで・・・。」

「言葉のはずみでも、何でもいい。頭の片隅にでも無いとそんな言葉出てこないもの。」

「まー、そういう風に言うなら言っちゃうけど・・・みずきは、可愛いよ。そこいらのやつより全然。」

「えっ? 今、何て言った?」

「そんな何度も言えるかよ!」

「そっか、そうだったんだー。もっと早く言ってくれればいいのにー。」


誠は、話を変えた。

「明日、テニスやらないか?」

「どうしたの?急に。」

「明日、サークルの日なんだよ。」

「教習所は?」

「教習所は午前だから、終わってから、途中参加。」

「でも、私、部外者だよ。高校生だし。」

「そんなの全然平気。運動部じゃなくて、ただのサークルだから。みんなで楽しく過ごしてるだけだから。」

「でも、私なんか下手だし、何でこんなの連れて来たんだ。なんて、きっと言われちゃうよ。」

「意外に心配性なんだな。そしたら、僕の彼女です。って紹介するよ。」

「えっ! ほんとに。」

「あー、安心した?」


みずきは、うれしくなって、じっとしていられなくなった。

「お皿、洗っちゃうね。」

みずきは、さっと、立つとお皿を洗い始めた。

「でも、ラケットやウェアも取りに帰らないと無いよ。」

「帰る時間も無いし、ラケットとポロシャツは僕のを使うとして、靴は確か、テニスシューズを履いていたよーな・・・?」

「うん、教習はその方がいいと思って履いてた。」

「それじゃー、無いのはスコートだけだから、この際、買っちゃおう。僕がプレゼントするよ。」

みずきは、少し驚いて振り向いた。

「ヘルメットとグローブ貰ったばかりだしいいよ。」

「遠慮するなって。バイトしてるし、こう見えても少しは金持ってるんだ。免許とかあんまり必要なさそうな物に金使わないだけ。」

「そうなんだー。しっかりしてるというかー、なんかずるい感じ。」

「だって、免許なんか欲しいと思ったこと無かったし、あの時みんなが言ってたから、何となくだし、でも今は、欲しいと思ってきたんだ。」

「何で?」

「みずきとドライブに行きたくなったから。」

「あれあれ? 今頃私の魅力に気づいたのかな?」

「なー、もう皿、洗い終わったんだろ? こっちへ来いよ。」

みずきは、隣の部屋に行くと、テレビを見ながら肩肘を着いて横たわる誠の横に座った。

「本当に泊る気か? 僕、我慢なんて出来ないからな。帰るなら今のうちだよ。」

「分かってるよ。だけど、私の恋は、薄っぺらなもんじゃないから。」

「不思議なもので、僕もそんな気がするんだ。高2の時付き合った子に裏切られて、女なんて信じられないと思ってたけど、なんかみずきは違う気がする。」

「そっかー、前の恋愛で、ハートが傷ついてるんだね。少なくとも私は、誠に嘘はつかないし、誠を信じるし、誠を裏切らない。」

「なんだか、僕のハートの傷が見えてるみたいだな。正直言うと、初めて会った時に可愛い子だと思った。だけど、それを認めると、高2の時付き合った子の時と同じになって、また、酷い目に遭うんじゃないかって思えて、可愛いなんて言葉言えなかった。でも、こうやってじっくりみると本当にみずきって可愛いよな。可愛い顔した女ほど、醜い心を持ってるって思ってたんだけど、例外もいるのかな。」

「よほどのことが有ったんだね。私に話してくれて、うれしいよ。私を信じてくれたんだね。ありがとう。」

「う、うん。じゃー、お風呂に入れば?」

「うん。」

みずきは、お風呂に入った。



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