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第36話 「みずきの手作り弁当」


翌朝、みずきは、蒲田駅へ向かった。


例によって、約束より少し早い7時30分に着いた。


柱に寄り掛かって、誠を待とうとしたら、柱の陰から誠が現れた。


「よっ、おはよう!」


「おはよー。どうしたの? 早いじゃない?」


「起きたらすぐに出て、ここでパンでもかじって待った方が、遅刻しないと思ったからさ。」


「なるほど、いい心掛けね。でも、私を泊めてくれれば、ちゃんと起こしてあげるのに。」


「まだそんなこと言ってるのかよ。みずきちゃんが、泊って、俺が何もしないと思ってる

の?」


「思ってないよ。私、初めて会った日に感じたの、運命の人だって。」


「運命の人? それって、小指と小指が、赤い糸で結ばれてるって云うやつ?」


「そうそう、誠さんの小指には見えない? 私のはハッキリ見えるわ。」


「何言ってんだか。 だけどさ、両親が許さないでしょ?」


「夜は2人とも家に居ないから大丈夫。ていうか、私が毎日何をしているかなんて、気にも留めてないわ。」


「信用されてるんじゃないの? 信用を裏切っちゃだめじゃん?」


「そんなんじゃないよ。みんな好き勝手やってるだけ。正直言うと、私、寂しいんだ。

小さい時からお姉ちゃんは、勉強も出来て目立ってて、友達はみんなお姉ちゃんのそばに集まるし、私が好きになる子は、みんなお姉ちゃんに取られちゃうし。

親もお姉ちゃんばかり可愛がるし、私なんか、あの家には必要無かったの。」


「何言ってんだよ。そんなこと無いと思うよ。みずきがそう思い込んでるだけじゃないの?」


みずきの表情が硬くなった。

「そんなんじゃないって言ってるでしょ!」


「分かった、分かった。そう怒るなよ。」


「どう分かったのよ?」


「ま~、そ~ね~。 じゃー、今日、泊れよ。ご両親が心配して電話してきたら、みずきの考えすぎということで、泊りは中止。」


「掛かって来なかったら?」


「ま~、その時は、OKということかな~・・・。」


「掛かってくるまで、泊ってていいということね。」


「あ~、ま~、そういうことかな。」


「忘れないでよ。ちゃんと聞いたからね。」


みずきの表情が、明るくなった。

誠は、みずきが背負っている赤い大きなリュックサックが気になった。


「でかいリュック背負って、何が入ってんだよ?」


「もちろん、お泊まりセットに決まってるじゃん。」


「山にでも行くのかと思った。」


送迎バスに乗ると、15分くらいで、自動車教習所に着いた。


みずきは入口に立つと、誠の顔を見て言った。

「さぁー、これからだね。今日は、学科4つ、一緒だね。がんばろう。」


「みずきは、勉強ができそうだなー。」


「そんなことないよ。」


「大学は行くの?」


「美大に行きたいんだ。」


「そーかー、絵が好きなんだね。」


「まー、絵も好きなんだけど、デザインをやってみたいの。」


「何のデザイン?」


「家具なの。」


「家具かー、正直あんまり気にしたこと無かったなー。でもやりたいことが有るのはいいことだよ。頑張ってみればいいじゃん。」


「この教室だわ。」


「結構、人が多いんだなー。」


暫くすると、教官が来て、学科教習が始まった。


教材が配布されて、教習の進め方や注意事項などの説明があった後に、性格診断が行われ

た。


「誠さんの本当の性格が、分かっちゃうんだね~。興味あるな~。楽しみ~。」


「何言ってんだよ。見せる訳無いだろ。」


「じゃー、私のも、みーせない、よっ。」


「別に、見たくもないし・・・。」


休憩を挟んで、そのまま次の教習が始まった。


教本を開いての教習が始まり、催眠ガスがまかれたような眠気の空気が漂った。

何とか乗り切ると、次の教習は1時からで、ランチを摂ることになった。


「飯、どうしようか? コンビニが直ぐそばに在ったけど・・・。」


みずきが、大きなリュックから、カラフルな容器を4つ取りだした。


「じゃーん、お弁当作って来たんだ。」


「おーっ! 凄いじゃん。」


「凄くないよ~。おにぎりだよ。食べやすいかなーと思って。

おかずはこっち。鶏の唐揚げ、ミニハンバーグ、エビメンチと、ツナサラダ。

デザートはこっち。フルーツポンチだよ。

子供のお弁当みたいになっちゃったけど、好みが分からないから

無難かなっと思って。 どうぞ召し上がれ!」


「いただきまーす。」

誠は、おにぎりを手に取った。

「うめー! このおにぎり、米が旨いし、炊き方がグッド。しゃけも美味い。」


「ありがとうー。これも食べて!」

みずきは、鶏の唐揚げ、を差し出した。


「うん、うん。この唐揚げは、カレー味だけど、スパイスが効いてる。なんか普通の唐揚げと全然違う。」


「でしょ、でしょ! この味出すの大変だったんだ。じゃーこっちも、食べて!」

今度は、ミニハンバーグを差し出した。


「このハンバーグ、冷凍食品と違う。って言うか、肉が違う!」


「うれしーぃ。違いが分かってくれるなんて、作ってきて良かった。」


「なんか、みんなうめー。自分で作らないから、コンビニ弁当が多いけど、手作りは、やっぱり違うなー。」


「どんどん食べて。」


誠は、休む間もなく食べて、あっという間に、無くなってしまった。

「美味かったー! みずきって、料理が上手なんだな。」


「そんなことないよ。家で少しやってるだけだから。」


「これなら、店出せるよ。絶対、繁盛するよ。」


「褒めすぎだよー。」


昼食を終えて、少し休むと午後の教習の時間になった。

教室を移動して、2つの教習を受けた。

誠は、眠気との戦いの時間に終始して、殆ど何をやっていたのか分からないで終わった。


「夜、ちゃんと寝てないんでしょー。」


「そんなことないんだけどなー。」


教習が終わると、2人は予約を取れるだけ取って帰ることにした。


「ねぇー、晩御飯は何がいい?」


「本当に来るの?」


「往生際が悪いぞ!」


「分かったよ! んー、そうだなー、カレーが食べたいなー。」


「何カレーがいい?」


「それは、やっぱり、ビーフカレーでしょう。」


「よーし、それじゃー、頑張ちゃおうかなー。」


駅まで来ると、スーパーで買い物をした。

みずきは、手慣れた感じで、必要な物をカゴに入れて行った。

誠は、終始退屈そうにしていたが、お菓子の所を通ると、嬉しそうに2,3個カゴに入れた。


「なんか、誠って、子供みたーい!」


「いいじゃん。喰いたいんだから。」


「ねぇー、私達って、夫婦に見えるかなー?」


「見える分けないじゃん。どう見たって、みずきは高校生だよ。」


「そんなことないもん! お化粧すれば、大人に見えるもん。」


「ない、ない。」


「そんなことないってばー。」


スーパーを出ると、バスに乗って誠のアパートへと向かった。



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