第3話 「水色のTシャツ」
土田守が、大声を上げた。
「イターッ! ほら、あそこの水色のTシャツ。」
水越渉が慌てて駆け寄り、土田守の指さした方向を見た。
「えっ、どれー。んーんー、似てる似てる。」
土田守と水越渉が、野田誠を大声で呼びながらおいでおいでのジェスチャーをした。野田誠は仕方なく歩み寄ったが、似ているなんて鼻から信じていないとばかりに言った。
「そんなに都合良く、似てる人なんか居るはずないよ。」
土田守が野田誠の腕を掴んだ。
「いいから、ちょっと見てみろよ! ほれ、あそこ。」
野田誠がおもたい首を向けた。
「しょうがないな~。・・・あっ!」
野田誠の顔色を見た土田守は、自信を持った。
「ほら、似てるだろ? 行くしかねえな。」
野田誠は、本当に似ていたので、怖くなった。
「マジで? マジ行くの?」
土田守は強気に出た。
「おー、ルールだからな。」
野田誠は、逃げ腰になった。
「そんなルール承諾したつもりないし・・・。」
水越渉も、何だか強気だ。
「いいから、行って声掛けろよ!」
野田誠は、諦め気味になった。
「参ったな~。」
仕方なく、誠は、重い腰を上げて歩き出した。
目標の水色のTシャツの娘に近づくと、周りの雰囲気が違っていた。
目標の水色のTシャツの娘は、4人の男にガードされて、砂浜に作られたステージの裏側へ向かって歩いていた。
誠は、10メートル位に近づいた時に、やっと気が付いた。
「似てるんじゃない! あれは、鮎川留美だ! 本物だ!」
誠は、振り返ると、渉と守に手を振って、「こっちへ来い。」と、手招きした。
2人もステージが在ることに気付き、走ってやって来た。
ステージの表側に回ると、前の方は若い男女でいっぱいで、後ろの方に立つしかなかった。
土田守は、良く似ていたことに納得した。
「どおりで似てるわけだ。」
野田誠は驚きで口が開いていた。
「まさか、本人とはね。」
水越渉が、突っ込みを入れた。
「いっそのこと、本人をナンパしてみたら?」
野田誠は、馬鹿にされたように感じた。
「何言ってるんだよ! 近づくことだってできないよ。」
土田守がつまらないことを言い出した。
「そんなことないんじゃねぇー。俺達2人が、取り巻き4人を引き付ければさ。」
野田誠はくだらなく感じた。
「できる訳ないだろ。お前らが、K-1でもやってるんなら分かるけど。」
土田守のいつもの悪い癖が出た。
「誠が本気でナンパする気があるなら、俺達付き合ってもいいぜ。なっ、渉?」
さすがに水越渉も、返事に困った。
「えっ、まぁ~。」
野田誠は、土田守の顔が真剣な表情に見えてしまった。
「芸能人と付き合うなんて、思ったことも無いし、100パー無理に決まってるしいいよ。でも、本気で言ってくれてるみたいで、ちょっとうれしいよ。」
土田守は、誠の表情をよんだ。
「俺達、ガチでやる気あるんだけど。なっ、渉?」
水越渉は困っていた。
「えっ、まぁ~。」
野田誠は、ステージを見ていた。
「おっ、始まるよ。」