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第23話 「GTR」

朝比奈に出ると渋滞も緩和されていたが、土田守はトイレ休憩が必要と考えた。

「もうすぐ着くけど、ファミレスで飯でも食わない?」


水越渉も、守と同じ考えだった。

「そうだね、トイレも行きたいし、このままさよならも、ちょっと寂しい気がするし。」


橘みずきは、夕食をどうしようか迷っていたようだ。

「そうね、家に帰ってもご飯用意してないし。」


上野美樹は、みずきに合わせることが多い。

「私も食べて帰るつもりだったから。」


井上知佳も、このままサヨナラするのには少し抵抗が有った。

「定食とか食べたい気がする。」


野田誠は、知佳の言葉に妙に同感した。

「分かるよ、その気持ち。僕もほとんど毎日、朝抜きで、夜は、カップめんや、コンビニ弁当だから、学食で定食食うと、何かほっとするもんな。」


井上知佳は、少しふざけた。

「みずき、野田さん夜はカップめんだって! 毎日通って何か作ってあげれば! みずき、料理得意なんですよ。ねっ!」


橘みずきは、困り顔になった。

「ちょっと、知佳ったら!」


土田守も、みんなが賛成したのでほっとしたせいか、調子に乗って冷やかした。

「おーおー、いいじゃない! 毎日通うなんて面倒くさいから、一緒に住んじゃったら?」


野田誠は、困惑気味だ。

「守、何言い出してんだよ。橘さんだって、困ってるじゃないか。」


橘みずきは、さっきの別れ話といい、ちょっと変になっている様子だった。

「一緒に住むのは無理ですけど、ご飯作りに行くのはありかなって・・・。」


水越渉が羨ましくもあって、ヤジった。

「おーおー、言わせちゃったね! この、色男が!」


上野美樹が、びっくりした。

「うっそー、みずきが、ご飯作りに行くって!」


土田守まで、面白がった。

「誠ちゃん、どうすんの? どうすんの?」


誠は、みんなが騒ぎ出したのが、少し嫌だった。

「そんなの、いいですよ。家だって離れてるし。」


井上知佳が、聞いた。

「野田さんって、どこに住んでるんでしたっけ?」


誠より早く、土田守が答えた。

「蒲田のボロアパート。その隣の大家が俺んち。」

知佳が、思い出したようだった。

「あっ! そうだった。」




上野美樹は、水越渉も近くだと思った。

「水越さんも、近くなんですか?」


水越渉は、何で聞くのかと思った。

「あー、俺は、川崎。ちょっと離れてるかな。さっき免許証見たじゃん。」


「あ~、そっか。でも、横浜からそんなに遠くもないですよね。みんな会う気になれば会えるんですね。」


井上知佳が、ハッとした。

「えーっ! 美樹も、夕飯作りに通う気?」


上野美樹が、慌てた。

「ち、違うわよ! 変なこと言わないでよ。」


水越渉が、突っ込みを入れた。

「変なことなんだ~。」


渉が、傷ついたように言うと、美樹が困った表情で言った。

「あ~、そういう意味じゃなくて・・・。」


土田守が、チラッと助手席を見ると、うつむいて、渉がニタニタ笑っていた。

「おっ! 大変だ。渉が泣いてる。」


美樹は、2人がふざけているのは解っていたが、対応に困った。

「もー、ちょっとやめてくださいよ!」


土田守が、笑いながら言った。

「ファミレス在ったから、入るよ。」


みんなを乗せた土田の白い高級ワゴン車は、ファミレスの駐車場に止まった。

緊張していたせいか乗り込む時には、車にあまり関心が湧かなかったが、色々と話をしたせいか、降りた車を見て知佳が切り出した。


「この車って、高いんでしょ?」


水越渉は、車が好きだった。

「守、400万だっけ?」


「そんなもんだったかな。」


水越渉は、自分の事のように話した。

「他にもベンツ持ってんだぜ。」


「あー、オヤジのだけどね。」


野田誠が、少し前に見た光景の謎が解決した。

「この前乗ってたのオヤジさんのだったんだー。」


水越渉が、誠に聞いた。

「その時のベンツいくらだと思う?」


野田誠は、車に興味がない。

「分かんないなー、600万くらい?」


「それじゃー半分。1200万だっけ?」


土田守も、車に興味がない。

「あー、そんなもんだと思う。」


井上知佳の目の輝きが変わった。

「すごーい! えっ? それじゃー、この車は、守さんの?」


水越渉は、得意げだ。

「そう。何にするか迷ってたから、俺がこれがいいって言ったんだ。こうやって、みんなで遊びに行けるじゃん。」


「へーっ、そうなんだー。水越さんは、車持ってないんですか?」


その質問が、今まで自分の事のように話していた、渉の鼻を折ってしまった。

「あっ、そーね。オヤジがジジ臭いセダン持ってるけど、俺は持ってないよ。だから、ボロでもいいから自分のが欲しくてバイトして、金貯めてるとこ。」


上野美樹は、渉が少ししょげたのが解った。

「バイトですかー。自分で働いて買うなんて偉いじゃないですか。それで、何を買うんですか?」


井上知佳は、車には特別な興味がない。

「やっぱり、気になるんだ? 美樹は、車好きなんですよ。速いのが。」


「そうなんだー。バイト代で買うから、車検付で50万位のスカイラインとか。車って諸費用が、高いんだよな。任意保険とか入ると車代の他に、30万位必要だし、ただ、駐車場は有るから助かるんだけど。」


上野美樹はスポーツカーが好きだ。

「スカイラインかー、GTRとかいいですよねー。」


「知ってるんだね。でも、無理無理。GTRなんて、相当古いのだって高いもん。」


井上知佳が、思い出したように言った。

「確か、うちのお兄ちゃんが、それ乗ってる。」


「うっそ!お兄さんいるの?」


「相当なカーキチで、中古で買って、買ったお金以上に改造費掛けちゃって、ばっかみたい。始めから新車買えばいいのに。」


上野美樹も、初耳だった。

「へーっ、そうだったんだー。今度、乗せてほしいな~。」


「うん、いいよ。水越さんも来る?」


「いいや、俺は人の物に興味ないから遠慮しておくよ。」


上野美樹は、渉の車に興味を持った。

「そっかー。それじゃー、いつ頃、買う予定なの?」


水越渉は、指を折ってお金の計算をした。

「1年後かなー。」


「えーっ! そんな先なの?」


「だって、80万くらい貯めないと。」


土田守が、痛いところを突いてきた。

「車好きなのに、1年も我慢できんのか?」


水越渉は、うつむき加減になってきた。

「仕方ねーじゃん。バイトじゃローンなんか無理だし、借金嫌いだし。」


上野美樹の声が少し大きくなった。

「すごーい! 借金が嫌いだからって、好きな車を1年も我慢するなんて。」


土田守の金持ち発言が出た。

「じゃー、俺が貸してやるよ。利息無しでいいよ。」


「それはちょっとな。」


上野美樹は、不思議に思った。

「どーして? 仲いいんでしょ、せっかく言ってくれてるんだし、早く車買って、月々少しずつ返せばいいんじゃないの? 何だか、私、渉さんとドライブ行きたくなちゃった。」


土田守が、びっくりした。

「おーっ! これは、もう買うきゃないでしょ。何なら、GTRとかでもいいぜ。」


上野美樹が騒ぎ出した。

「すごーい! GTRだって! 乗りたーい!乗りたーい!」


「あのさー美樹ちゃん・・・・・、俺、借金、嫌いだって言ったじゃん。」


「あーっ、そっかー。ごめんなさい。つい調子に乗っちゃって・・・。」


土田守が、何か思いついたらしい。

「そーだ! いい手がある。俺が、そのGTRとかいうの買ちゃって、渉に貸すつーのはどうよ。俺にしては、いい考えでしょ!」


上野美樹が、声を大きくした。

「いーよ! それ、ナイスアイデア。 守さん、冴えてます!・・・あー、また、余計な事言っちゃったー。ごめんなさい。」


「別に、大丈夫だって。なっ、渉! 俺の考え、ナイスアイデアだろ?」


「うっ、うーん、でも、GTRって高いぜ。中古だって・・・。」


「何言ってんだよ、俺が買うのに、中古なんて買うわけないじゃん。」


「えっ! 新車? じゃー、900万くらいしちゃうよ。」


上野美樹の声がまた大きくなった。

「そんなに、するの! 国産車なのに。」


「案外、高いんだなー。でも、速いんだろ?」


「相当に。」


「なら、いいや。速い車もどんなのか乗ってみたいし。あした買いに行こう!」


「あした?」


上野美樹も、興味津々だ。

「私も、行っていいですか?」


「もちろん、なっ! 渉。」


井上知佳は、お金持ちが好きだ。

「私も、行っていい?」


橘みずきは、この雰囲気を今日一日で終わらせたくなかった。

「ねぇー、みんなで行こうよ。野田さんも、いいでしょ!」


「いいよ、どうせ行くことになるだろうし。」


橘みずきは、2人でドライブがしたいと思った。

「野田さんも免許取ればいいのに。」


「車に興味無いんだよね。」


「ドライブとか行けると、普通の女の子は喜ぶと思うんだけどなー。」


井上知佳が、笑いだした。

「それって、みずきのことでしょ! ハハハッ!」


「もー、知佳ったら。」


「何よ、いまさら。野田さんって呼び方も、固いよ。誠さんにすれば?」


土田守が、提案した。

「そーだ。みんな、下の名前で呼ぶことにしようよ。」


水越渉には、免許証を取りたいと思わない誠の気持が解らなかった。

「だけどさー、誠。免許は有った方がいいよ。車は借りればいいんだし。みずきちゃんと2人きりになれるんだぜ。夜の湾岸なんて走ったら、みずきちゃんもその気になちゃうかもよ!」


言われたみずきは、たまったものではない。

「ちょっとー!何言い出してるんですか!」


上野美樹は、誰の見方なのか解らない時が有る。

「おかしいな? このあいだ、映画でそんなシーン出て来て、いいなーって言ってたの誰だっけ?」


「もー、美樹!変なこと言わないでよ。美樹だって、さっきラブホの前通った時、行ってみたーいって言ってたくせに。」


「言ってない、言ってない! 中がどんな風になってるのかなって、言っただけでしょ。」


土田守が、気にした。

「へーっ、美樹ちゃんって、そんなの興味あるんだ?」


「ない、ない!」


土田守は、追及したくなった。

「えっ? 今、自分で言ったじゃん?」


美樹が返事に困っていると、知佳が守に言った。

「そんなこと言ってないで、あした行くんでしょ? どこに何時に集合する?」


土田守も、ちょっと突っ込み過ぎたかなと反省していた。

「そうだね。横浜駅でいいんじゃない?」


「でも、守さんの家の近くのお店で買うんでしょ? こっちまで来て、戻るのって大変だよね。」


「そっかー。でも、それじゃーどうする?」


「私達が、1時に守さんの家の最寄り駅まで行きますよ。ねっ、美樹もみずきも、それでいいよね?」


上野美樹・橘みずきは、合わせて言った。

「異議なーし。」


「それで、最寄駅ってどこですか?」


「京急蒲田。改札に1時でいいかな?」


上野美樹・橘みずき・井上知佳が一緒に。

「いいとも~。」


1時間半くらい食べながら話した後、ファミレスを出て、能見台駅に着いた。


土田 守は、車から降りる女子達に言った。

「それじゃー、今日はどうもありがとう。楽しかった。」


水越 渉も、後ろに振り向きながら言った。

「あしたまたな!」


井上知佳が、手を振りながら言った。

「楽しみー!」


上野美樹も手を振りながら、渉を見ていた。

「ありがとう、ばいばい!」


橘みずきは最後に降りながら言った。

「さよなら、またあしたね。」


3人を降ろして、車は水越渉の家が在る川崎に向かった。



手違いで、更新時間が遅れた事をお詫びします。

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