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第20話 「帰りの席順」

男子達が集合場所に戻った。

30分遅れて、女子達が現れた。


上野美樹が、男子を待たせていたことを悟って、苦笑いを浮かべながら、先頭でやって来た。

「ごめん、待った?」


土田守がにこやかに答えた。

「全然。」


水越渉が、ちょっと大げさにおどけた。

「おーっ! 水着も良かったけど、これもまたいいねー。」


土田守も、お世辞気味の発言をしてみた。

「とても高校生には見えないなー。どこかのモデルさんですか?」


水越渉は、割と細かいところまで良く見ている。

「みんな、さっきと化粧も違うよね?」


井上知佳は、自分が化粧で一番変わると思っている。

「さっきは、泳いだりしてるし、それ用のメイクだから。」


土田守も、話を合わせた。

「アスリートメイクとホリディメイクだね。随分と変るもんだね。」


井上知佳は、野田誠が気になっていた。

「野田さんが、みずきをじっと見てる!」


野田誠は、慌てた。

「違う、違う! ちらっと見ただけだよ!」


井上知佳は、誠の表情が面白かった。

「あーっ、むきになってるー。」


上野美樹も、参入してきた。

「野田さん、みずき、可愛いでしょー。野田さんの為に、一生懸命にメイクしてたんだから。」


橘みずきは照れて、美樹のスカートを引っ張った。

「もー、何言ってるのよ!」


水越渉は、上野美樹をちょっとからかいたくなった。

「美樹ちゃんも、すごーく、かわいいよ!」


意外な言葉に、上野美樹は、みずきの倍ほど照れまくった。

「えっ? 何、何言っちゃってるのよ! もー、どうしていいか、解らないじゃん!」


水越渉も、ちょっと意地悪だ。

「ほんとに、そう思ったから。僕には、一番可愛く思えるよ。」


土田守も、これでは井上知佳がいじけると思い言ってみた。

「知佳ちゃんだって、可愛いよ!」


井上知佳は、クールだった。

「手遅れで~す! 無理しなくていいで~す!」


「違うって! ほんとだって!」


「ハハハッ! ありがとう~、ありがたーく、受けとっておきまーす!」


「参ったなー。そうじゃなくて・・・。」


橘みずきが、ちょっと飽きた。

「さぁー、行こうよ! 遅くなるよ!」


土田守は、みずきの発言に救われた気がした。

「そうだ、出発、出発!」


6人は、駐車場に歩き出した。


土田守は、どこに行けばいいのか聞いてみた。

「横浜駅でいいのかな?」


橘みずきが、答えた。

「最寄駅は、京浜急行の能見台駅なんですけど、大丈夫ですか?」


「いいよ、分かるから。」


橘みずきが、知佳と美樹に小声で話し始めた。

「知佳、美樹。どうする?」


聞かれた上野美樹が、いつも頼りになるみずきに聞き返した。

「みずきはどう思う?」


橘みずきが、顎に右手のこぶしを当てて考えると答えた。

「んー、私は大丈夫だと思うけど。」


3人の様子を見ていた水越渉が、3人に向かって、相談を遮るように少し声を大きくして言った。

「もしかして、俺達、信用されてない?」


3人が何を相談していたのか、さっぱり分からなかった土田守が、渉の一言でどういうことなのか気がついた。

「そーいうことか。それなら、全然大丈夫。変なことしないから。」


井上知佳が、喰いついた。

「始めから、変なことするって言う人は居ないでしょ?」


「そーだけど。今さら、なんだよ。」


「仕方ないじゃん。今そう思ったんだから。」


「俺達は、絶対だいじょーぶ! 人相見れば解るじゃん。」


上野美樹は、曖昧な土田守の言葉なんか耳に入らなかったが、何かひらめいたように言った。

「そーだ。東京創工大でしたよね。学生証か免許証の写真撮らせてよ。」


土田守が、その手が有ったと、感心した。

「えー、個人情報だからなー。・・・冗談。いいよ。渉も誠も出せよ。」


水越渉は、海水浴の目的を忘れていなかった。

「一方通行じゃな~。君たちのメルアドや番号も教えてくれなきゃなー。」


上野美樹は、自分が言い出したことだったので歯切れ良く答えた。

「いいですよ。知佳やみずきもいいでしょ?」


井上知佳と橘みずきは、美樹に聞かれたので、半分弾みで返事をした。

「いいよ。」


みんな、ポケットや鞄から携帯電話を取り出して、メルアド交換が始まった。

水越渉が学生証を出すと、上野美樹がすぐに反応した。

「免許証の方がいいな~。」


水越渉が、面倒くさそうに言った。

「何でだよ。」


「ん~、住所が無いんだよね~。」


水越渉は、面倒くさそうに免許証を出した。

「別にいいよ。ほれ。」


橘みずきは、美樹をまねてみた。

「ねぇねぇ。野田さんは?」


野田誠は何も考えずに普通に答えた。

「俺、免許証持ってないよ。」


橘みずきは、がっかりして溢した。

「そうなんだー。」


みずきのがっかりした顔を見て、美樹が誠に言った。

「ねぇー、野田さん。あなただけ住所が解らないんだけど。」


「あっー、それなら、守と同じだよ。守の家のアパートに住んでるから。」


女子3人が口を揃えて言った。

「うっそー、そうなんだー。」


そこで、土田守が聞かれてもいないのに、元気良く言った。

「俺は免許証有るよ!」


井上知佳は、土田守の出した免許証を受け取りながら、にこやかに答えた。

「知ってるよー、危ない運転してるんでしょ。うふふっ。」



水越渉は、車に乗ろうとしたが、ふと考えた。

「席はどうしようか?」


井上知佳が、気を使って言ってみた。

「みずきが、野田さんと一緒がいいって!」


たまらず、みずきが、言った。

「ちょっと! もう止めてよ、野田さんだって迷惑だから。」


井上知佳は、悪びれた感も無く聞いた。

「そうなんですか? 野田さん。」


「別に、迷惑なんか・・・。」


「じゃー、野田さんは、みずきと一番後ろの席でイチャイチャしてください。」


橘みずきは、声を大きくした。

「ちょーっと! 何言ってるのよ!」


水越渉は、誠と橘みずきが一番後ろの席なら、当然その前の席は、自分だろうと思って言った。

「真ん中の席は、俺と美樹ちゃんで・・・。美樹ちゃんいいよね?」


ところが上野美樹は、本音が出てしまった。

「えっ? 知佳と二人がいいなー。」


土田守は、ためらいも無く、あっさり言った。

「じゃー、前は、俺と渉。 さぁー乗って。」


「ちょっとー、守。」


「乙女心、感じろよ。」


上野美樹が、思わず声を上げた。

「土田さん、すてきー。」


水越渉が元気なく言った。

「仕方ないかー。 知佳ちゃん、いつでも換わるからね。前に来たくなったら言ってね。」


「はーい! 大丈夫です!」


土田守が、エンジンを掛けた。

「さぁー、出発するよ!」




お読み頂きありがとうございます。更新は、毎週日曜日朝10時となります。

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