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第2話 「行動開始」


3人は、海の家にチェックインをすると、直ぐに着替えて砂浜に近いテーブルに陣取った。

目の前で、焼きそばを焼いているので、空腹の3人は、匂いに誘われて腹ごしらえを始めた。


最初に食べ終えた土田守が、2人をせかした。

「さーて、空腹も収まったし、そろそろ行動開始と行きますか?」


待ってましたとばかりに水越渉が、周りを見渡した。

「おい、あの白いビキニの()()くなーい?」


野田誠が、水越渉の見ている方向に目をやった。

「んー、なんか、遊び慣れてるような・・・。」


「遊びに来たくせに!」

水越渉が、何言ってるんだとばかりに、直ぐに突っ込みを入れた。


水越渉の言った言葉が耳に入っていないのか、野田誠は平然と返した。

「タイプじゃないんだよなー。」


水越渉の目に別な()が映った。

「じゃー、あっちのオレンジの()は?」


「髪型がね~。」

野田誠は軽く受け流した。

水越渉は簡単にダメ出しする野田誠にいらついた。

「何だよ、声掛ける気あるのかよ!」


熱くなった水越渉に土田守が割って入った。

「無駄だよ、渉。誠にそんな勇気なんか無いさ。」


「そんなことないよ。ただ、気に入った()が居ないだけだよ。僕よりも、渉はどうなのさ。言いだしっぺだろ。」

野田誠は、勇気が無いと言われたことが気に触り、少し強い口調になった。


水越渉は、野田誠が言い返したことで、冷静さを取り戻して、軽くいなした。

「俺は、ゆっくりとなー。」


しかし、野田誠のアドレナリンは止まらずに、余裕有るような態度の水越渉に切り込んだ。

「なんだよ。自分だって、声掛けれないんだろ?」


水越渉は、平静に答えた。

「そんなことはないさ。やる気のない誠のお陰で、ちょっと冷めただけだよ。」


雰囲気が悪くなるのを気にした土田守が、思いついたように言った。

「なー、誠の好みって、鮎川留美だよな?」


野田誠は、急な質問に、少し警戒した。

「まぁー、そうだけど。」


2人とも声を掛けられないだろうと思った土田守は一工夫してみた。

「よーし誠、それじゃー、鮎川留美に似た娘が居たら、声掛けろよ。 渉、探そうぜ!」


水越渉が面白がって、やる気が戻った。

「分かった。見つけてやるから待ってな!」


困ったように、野田誠は言った。

「お~い。居るわけないよ。」



 野田誠、水越渉、土田守の3人は、今年から東京創工大学に通う、ゼミの仲間。普段から仲が良く、3人で居ることが多かった。

 夏休みのある日、もてない渉が、彼女の居ない誠に「ナンパしよう!」と、湘南海水浴に誘ったことが、少し変わった恋愛物語の始まりだった。


 誠は、高校3年の夏に、ずっと好きだった可愛いクラスメイトの女子に一大決心で告白した。彼女は、誠に関心が無かったが、あまり第一印象を気にしないでとりあえず付き合ってみようとするタイプだった。また、本命の彼氏と出会っていないと思っていたらしく、複数の男子と付き合っていた。それが幸いして誠とも付き合ってくれることになったが、誠はそんなことは知らなかったので、有頂天になり喜びいっぱいだった。


 テニス部だった誠は、練習が無いある日、廊下ですれ違った時に満面の緊張で、一緒に帰ろうと彼女を誘ってみた。彼女は快く了解してくれて、帰りに人気のドーナツ店で、初めて向かい合って話をした。誠には夢の時間が過ぎていたように思えた、ところが、誠にとって、彼女から衝撃の言葉を聞くことになった。彼女は、他にも4人と付き合っていると打ち明けたのだった。誠には理解不能の言葉だったけれども、自分と付き合ってくれるということ、それが大事なことと割り切って、動揺しながらも気にしない素振りをした。


 毎日、テニス部の練習が忙しく、なかなかデートの時間が作れなかった誠は、彼女からすると物足りなく感じられて、他の4人よりもだいぶ影が薄かった。

 そんな中、やっと空いた日曜日に2人で映画に行くことになった。

 誠は、映画が見たかった訳ではなかったが、デートの経験が無い誠には、他に考えが浮かばず、昔からのデートのセオリーに頼っただけの事だった。

 待ち合わせの場所に現れた彼女は、当然いつもの見慣れた制服とは違った雰囲気のお洒落着姿だった。ナチュラルメイクも決めていた彼女を前にした誠は、緊張のあまり自分から話し掛けることが出来ずに、ただ興味の無い映画を見ることになってしまった。映画の帰りにお茶してみたものの、そこでも誠は、ただ映画の感想を話すだけで面白いことも言えずに時間が過ぎた。彼女もまた特に映画が好きでも無かったので、退屈な時間を過ごしただけの印象を持ってしまった。


 次の日、彼女に放課後呼び出された誠は、一緒に居てもつまらないと、あっさり交際を断られてしまった。天国から地獄に突き落とされたような誠は、落ちに落ち込んだ。どうして良いのかも分からず、ただ自分に自信を失ってしまい、女子と付き合うことが出来なくなってしまった。そして芸能人に興味を持つことで現実の恋愛から逃げるようになってしまった。

 それから数カ月、大学に入った誠は、徐々に傷も癒え始めた。ともあれ思春期の誠に彼女が欲しい気持ちが消える訳もなく、もしかしたらと若干の期待を持って、意気込む渉の誘いを何となく受けてみる気になった。

 2人は、いつも行動を一緒にしている守を誘おうとしたが、守にはゼミで仲良しになった彼女、松本由香が居たことから、誘わない方が良いのではと迷った。しかし、ナンパに付き物の車を調達したかったので、自慢の7人乗りのワゴン車を乗り回している守を結局誘うことになり、守も彼女がいるくせにノリノリで、一緒に行くことになった。また、守の親の伝手で安く泊まれるホテルに1泊、しかも費用は、守持ちというおまけまで付いて。



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