第19話 「更衣室のおしゃべり」
女子更衣室では・・・。
上野美樹は、橘みずきとは幼馴染で、お互いのことを良く理解していた。
「ねぇーみずき。野田さんのこと本気で気に入ったみたいだね。」
「分かっちゃった?」
「当り前じゃない。あれだけくっついてれば見え見え。野田さんは私のもの、美樹や知佳は手出さないで!って、言っているも同じ。」
「えへへっ。そんなつもりは・・・・・、ありましたー!!」
「あーっ、やっぱり。私も、野田さんがいいかなーと思ったんだけど、みずきを見てたら別にいいかーって感じ。次に土田さんと思ったけど、知佳が気に入ったみたいだし、3対3だったから、丸く収まろうかなって水越さんに。」
橘みずきのほほがほんのりと赤くなっていた。
「えへへっ。気を使ってもらって、めんぼくねーっ。グフフッ。」
井上知佳が、話し始めた。
「私はどうでも良かったからいいんだけど、土田さんが私を気に入ったみたいで、やたらと話しかけてくるんだよね。少し強引なところもあって、嫌いなタイプじゃないから、まっ、いいっかって感じ。」
上野美樹が、突っ込みを入れた。
「え~っ。それじゃー言い寄って来たら、付き合う気有るんだ?」
「ん~、まぁーね。」
「参ったなー、冷めてるのは私だけか。」
橘みずきが、上野美樹に少し気遣った。
「この際だから、水越さんと上手くやってみれば? いい人に見えるよ。」
井上知佳も、いつもと違う上野美樹を気にしていた。
「水越さんの目は、美樹に一目惚れしましたーって言っておりました。」
上野美樹は、2人の気持が解った。
「はいはい、ご心配どーも。」
男子更衣室では・・・。
土田守が、うらやましそーに言った。
「誠って、案外人気あるんだなー。少し積極的になれば彼女なんてすぐにできんじゃないの?橘みずきちゃんなんて、そばから離れないし。付き合っちゃえばいいのに。」
「う~ん、ま~ね~。」
水越渉が誠の顔色を見て言った。
「気乗りしてない感じだね。そーか、鮎川留美のことが頭から離れないんだな。」
土田守がアドバイスのつもりで言った。
「でも自分から連絡先を言わないで諦めたんだから、もう考えるのはやめて、この現実のチャンスをものにしろよ。」
水越渉は、橘みずきが気に入っていた。
「橘みずきちゃんだって、可愛いよ。どことなく鮎川瑠美に似てねぇ?」
土田守がすぐに共感した。
「俺もなんかそんな気がしたんだ。誠は?」
「そ~かな~? 瑠美ちゃんの方が、圧倒的に可愛いけどねー。」
水越渉は、分析した。
「それは、プロが化粧してるし、芸能界で磨かれてるからねー。」
土田守が更に、付け加えた。
「それは言える。スタイリストやプロのメイクさんが付いてるんだろうし。スッピンだと、案外、みずきちゃんの方が可愛いんじゃないの?」
野田誠は、こうと思うと客観的に物事が見れないことが有る。
「お前ら、目、おかしんじゃないの?」
水越渉がちょっと本音を漏らした。
「彼女が、誠のこと好きでないなら、俺が取っちゃうところなんだけどな。」
土田守も同じことを思っていた。
「ハハハッ。 それは無理だな。俺が頂く。」
水越渉が、知佳ちゃんの方に話をそらした。
「守は、井上知佳ちゃんと上手いこと行ってんじゃないの?」
「橘みずきちゃんが、誠に向いてたから、ああなっただけ。渉が知佳ちゃんのこと気に入ってるんだったら、別にいいぜ。」
「いや、俺も別にいいや。」
「そっかー、ビーチバレーのチーム決めの時、知佳ちゃんの方がいいようなこと言ってたからもしやと思ったけど、渉も役者だなー。で、結局、誠だけが上手くいった訳だ。でもこれで、2人に彼女出来そうじゃん。旅行の目的達成ってとこかな。」
水越渉が、勝手な想像を始めた。
「上野美樹ちゃんが、言い寄って来たらどうしようかなー。」
珍しく野田誠が、人のことに発言した。
「大丈夫、それは無い。はたから見て、仕方なくペア組んでるの見え見えだから。」
「おー、言ってくれるね。いいもん、俺には、美佳ちゃんがいるんだからさ。」
水越渉の言葉で、土田守が急に案内係の大塚美佳のことが気になった。
「そう言えば、美佳さんから連絡来てるのか?」
「ない。きっと、バイトが忙しいんだよ。」
土田守が、ちょっと構った。
「そーか~? 忘れられてるんじゃないの~。」
野田誠は、たまに冗談かどうか解らないことを言う時が有る。
「キスまでして、忘れるわけ無いじゃないですか。好意が有るなら、メールの一つくらい送ってきますよ。一夜の退屈しのぎ、きっと、遊びだったんですよ。」
土田守が、笑った。
「言うね、言うね。誠さん。渉君、やばいんじゃない?」
水越渉も、苦笑い。
「誠も言ってくれるよなー。心配している事をグサリ。」
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