第18話 「雑誌に載ってる飲食店」
6人は、水着の上にTシャツやパーカーなどをはおり、ダラダラ歩いて店までやって来た。
まとめ役になった感じの土田守が、みんなに聞いた。
「何食う?」
橘みずきは、誠に合わせたい様な気持になった。
「野田さんは?」
野田誠は、自分がみずきに聞かれるとは思っていなかったので、戸惑った。
「えっ? 俺。そーだな・・・。ビーフカレーにしようかな。」
橘みずきは、笑みを浮かべて、すぐに言った。
「私も、ビーフカレーにしようっと。」
上野美樹は、みずきと出かけると昔から同じものを頼んでいた。
今日もの習慣に合わせた。
「私も!」
井上知佳は、雑誌には、スパゲティーとカレーが美味しいお店と紹介されていたので、どちらかにしようとしていたが、みずきも美樹もカレーなので結局、同じ物にした。
「私も、ビーフカレー!」
土田守は、3人が誠に合わせたように見えて、ちょっと面白くなかった。
「何それ。じゃー俺は、かつ丼。」
「えっ! かつ丼なんて有るの?」
井上知佳が、思わず声を上げた。雑誌には、スパゲティーとカレーが美味しいお店と紹介されていたので、意外に感じたのだった。
土田守が、メニューを指差した。
「ほれ。」
井上知佳が、覗きこんだ。
「あっ、有る。ハンバーグやステーキも。チキングリルや竜田揚げも。海老フライやコロッケにラーメンまで、ファミレス並みに有るよ。」
水越渉は、一瞬、守に付き合おうかとも思ったが、どうせならと、もうひとつの看板料理スパゲティーにした。
「俺は、カルボナーラ。」
注文した物が、直ぐに運ばれて来た。
あまりの早さに、みんな、びっくりしたようだったが、すぐに食べ始めた。
カルボナーラを食べていた水越渉が呟いた。
「美味いよこれ。ちゃんとパンチェッタが入ってる。」
土田守が、渉に聞いた。
「何だよ、パンチェッタって?」
「これのことだよ。生ベーコンとでも言うのかなー。」
「意外だなー、スパゲティーに詳しかったんだー。車にしか興味ないのかって思ってた。」
「このくらい、みんな知ってるよ。」
カレーやかつ丼は量も少なめで、特別美味しいという訳では無かったが、知佳の手前、みんなは、「美味しかった。ご馳走様。」とたいらげた。
一息ついたので、例によって土田守が、口を開いた。
「君たち、どこから来たの?」
橘みずきが、普通に答えた。
「横浜。」
土田守が、しめたと言いたげに返した。
「横浜! 俺達もそっちの方向だよ。それじゃー帰り、乗せてってあげようか?」
橘みずきが嬉しそうに聞いた。
「車で来てるんですか?」
「うん、うちの車。ワゴンだからみんな乗れるよ。」
水越渉が、補足した。
「こいつんち金持ちだから、いい車乗ってんだ。運転はへたくそだけどね。」
土田守が嫌そうな顔をした。
「余計なこと言うなよ。怖がって乗らないよ。」
「そっか。それじゃー・・・へたくそじゃなくて、免許取ったばかりでヨロヨロ運転してるだけってとこかな。」
土田守は、渉が余計な事を言った事で、彼女達の顔の表情を気にした。
「そんなに酷くないから、大丈夫だよ。」
みんなが苦笑した。
「ウフフフッ・・・。」
土田守は、気を取り直してにこやかに言った。
「みんなもう泳がないだろ? 早めに出ないと渋滞するし。」
上野美樹が、同調した。
「そうね。曇って来たし。」
橘みずきは、昔からの付き合いの中で、美樹との話のタイミングを持っていた。
「疲れたしね。帰ろう。」
まとめ役らしく、土田守が仕切った。
「それじゃー、着替えたら、さっきビーチバレーしてた所に集まることにしよう。」
井上知佳が、土田守に向けて、両手の指でOKサインを出した。
みんなが、それを見て、声にした。
「オーケー。」
みんなレストランから出ると、海の家に戻った。
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