第15話 「運命の出会い、それとも逆ナン?」
誠が、海に歩き出すと、渉が立ち上がって続いた。
仕方なさそうに、守が大きなドーナツ型の浮き輪を手にして、後を追った。
誠は、海に入ると、スイスイと泳ぎ出した。
渉も、すぐに誠の後を追った。
誠は大きな声を出した。
「気持いいなー。やっぱ、海に来たら泳がないとなー。」
泳いでいると、渉は素直な気持ちになった。
「ナンパ付き合わせて、俺だけうまくいって、悪かったな、誠。」
「別に気にしてないよ。案外楽しかったし、鮎川留美と会えたし。」
いつの間にか、すぐ後ろに、浮き輪に入ってバタ足をする守が居た。
「なんか俺だけ、いい思いしてないんだけど。どうしてくれますかー。」
「由香ちゃんみたいな可愛い彼女が居るのに、浮気しようとするからさ。」
日頃から、由香が可愛いと密かに思っていた渉が言った。
「また、その話かよ。遊びに来たんだからそれはなしだって。次来た時は、作戦をもっと考えておいて、ナンパを成功させてやるよ。」
3人は、20分ほど泳いで砂浜に上がって来た。
その時、渉と話しながら歩いていた誠に、横から女の子がぶつかって来た。
女の子は、仲間とビーチバレーを楽しんでいて、夢中でボールを追いかけて、
上空のボールを見ながら斜め後ろ向きに走り、背中から誠にぶつかった。
女の子は慌てた。
「イテテッ。 ごめんなさい! 大丈夫ですか?」
「うーん、大丈夫みたい。・・・アッ!」
誠は、そのままうつ伏せに倒れてしまい、彼の背中には、女の子がうつ伏せにきれいに乗ってしまっていた。
気付いてみると背中に、柔らかい感触を感じて、鮎川留美をおぶった感覚が甦ってきた。
女の子は、恥ずかしそうな表情をしながらも、砂に手を着き、ゆっくりと立ち上がった。
誠の脳は、昨日の記憶をたどって、人が思い出し笑いをするように、ニンマリした笑顔のようになっていた。
丁度その時、誠は立ち上がった女の子を見て、顔がニンマリしたように見えてしまった。
「あーっ、なんか、いやらしいー。」
女の子は、誠の顔を見て言った。
誠は、ハッと我に返った。
「違う、違う。そんなんじゃないって!」
「別にいいですよ。私からぶつかったんですから!」
「でも、本当にそんなんじゃないんです。ちょっと昨日の事を思い出しちゃって。」
「そうですか。ずいぶんと変な時に思い出すんですね。」
座り込んでいる誠に、女の子が右手を差し伸べた。
「ありがとう。」
誠は、その手を握り、立ち上がった。
「ねーっ! 一緒にビーチバレーやりませんか? 3人でしょ? 私達も3人だから、混合で3チームできるじゃないですか。ネーッ、美樹、知佳、いいよね?」
横に来ていた、上野美樹と井上知佳が、うなずいた。
すると土田守が、待ってましたとばかりに、前に出て来た。
「いいね、いいね。やろうよ。俺、土田守、よろしく。」
誠と手を握って立っている女の子が、誠を見ながら口を開いた。
「橘みずきです。よろしくね。」
水越渉が、守の後ろから前に出た。
「あーっ、俺、水越渉、よろしく。・・・誠、いつまで、手繋いでんだよ。」
橘みずきが、慌てて繋いでいた手を離した。
誠は、手を離されたので、橘みずきの顔を見た。
「僕は、野田誠です。よろしく。」
守が、早速仕切り始めた。
「そっちの2人は? どっちが美樹ちゃんでー、どっちが知佳ちゃんかなー?」
浮気が嫌いだったはずの渉が、しゃしゃり出た。
「待って、待って。俺当てる。・・・うーんー、こっちが知佳ちゃんで、そっちが美樹ちゃん。」
「はずれー! 私が美樹で、そっちが知佳ちゃんでーす。」
「なーんだよ、どー見ても、知佳って顔してんじゃん。」
井上知佳が反応した。
「えーっ? どういうことですかー。」
守は、井上知佳が好みのようだ。
「そんな奴、相手にしない方がいいよ。俺と組もうぜ。」
上野美樹は、守が好みだったようだ。
「あーっ。私が組みたかったのになー。みずきは、野田さんで決まってるし。
しょうがない、水越さんでいいや。」
大塚美佳のことがすっかり頭から消えていた渉は、そう言われては黙っていられなかった。
「おーっ。しょうがない、水越さんでいいや。とは、何だよ~! 俺だって知佳ちゃんの方が良かったな~。」
上野美樹も、自分の失言とは解っていても、ムッとした。
「あーっ! 顔で区別したでしょ。どーせ、知佳もみずきも私より可愛いですよーだ。」
「違うって! 美樹ちゃん。 声、そう、声が、知佳ちゃんの声が、好みなんだよ。」
上野美樹は、本気で怒っているようではないようだ。
「ごまかしても、もう遅いですよーだ。ウッフフー!」
「参ったなー。それじゃー、俺と組んでください。」
「お願いされれば、仕方ないかー。」