第13話 「ナンパ」
そして、3人は砂浜に戻って来た。
さすが湘南、平日だというのに9時には、かなり人が増えた。
駐車場は、ほぼ満車だ。
守が、獲物を見つけたらしい。
「行くぞ、誠。」
「まじっすか?」
「おー、まじっすよ。ほら、あのピンクの水着の娘。胸でかいし、はい、ご主人様って感じじゃん。ほら、行くぞ。」
誠は、仕方なく守を追った。
「そー言えば、由香ちゃん胸が無かったかー。つまり、男の願望が良心を超えちゃった訳ね。でも、ご主人様なんて趣味有ったんだー・・・。はいはい、行きますよ。」
守は、獲物の前に出た。
「ねー君たち、一緒に遊ばない?」
ピンクの水着の娘とハイビスカス柄の水着の娘は、下を向いたまま守を無視して、避けて歩いた。
守は、再び彼女たちの前へ立った。
「ねー君たち、シカトは酷いじゃん?」
ピンクの水着の娘が、顔を上げた。
「どいてください。」
守はどかない。
「どこ行くの?」
ピンクの水着の娘は、どうやら守が思ったような、ご主人様って感じじゃないようだ。
「うざいんですけど。」
守は、彼女の態度と、自分の感が外れたことでムッとした。
「何だよ、その態度。少しばかり胸がでかいからって、威張ってんじゃねえよ。」
ピンクの水着の娘もさすがに怒った。
「どこ見てんのよ、変態! 行こう、みどり。」
ハイビスカス柄の水着の娘も、軽蔑の視線を送っていた。
「うん。この変態エロじじー。」
守は、頭に血が上った。
「何だと、このやろー。」
誠は、慌てて守の前に立った。
「ちょっとー、マジ熱くなってどうするんだよ。そんなんじゃ、成功するわけないよ。」
2人の娘は小走りで行ってしまった。
守は、落ち着くなり誠に聞いた。
「なー誠。何が悪かったんだろう?」
「マジ解ってないんですか? 胸ばかり見てるからだよ。」
「えっ? そんなに見てた? 見てたつもり無いんだけどなー。」
「あの目は、エロい! 俺でも逃げるよ。」
「ひでーなー。それじゃーあの黄色の2人、行くぞ!」
「待て、守! 数撃てば当たるつーもんでも無いでしょ。」
「撃たなきゃ、当たんねーだろ。ほら、行くぞ。」
守は、歩いて行く女の子2人の前に立ち塞がった。
「君たち可愛いね。ねぇ、どこから来たの?」
「ナンパ? 間に合ってまーす。」
「ちょっとでいいから、お茶しない?」
「だ・か・らー。趣味じゃないのー。ねー、純子。」
「どこがいけないんだよ。」
純子と呼ばれた女の子が、指を差しながら答えた。
「そのお腹、出てるじゃん。でも、そっちの彼なら、まーいいかな。」
「誠、お前ならいいんだと。何か言ってやれよ。」
誠は、守が悪口を言われたことが、気になって守の見方をしてた。
「何だよ、お前らだって、足太てーじゃん。」
まさか、誠がそんなことを言うとは思っていなかった守は、慌てて女の子が文句を言うより先に言った。
「おいおい、悪口言ってどーすんだよ。」
「言われて平気なのかよ。」
「初めは、我慢しないと。だいたい、さっきお前が熱くなるなって言ってたじゃん。」
純子が、呆れた。
「何ウダウダ言ってるんだか。行こう、幸。」
「うん。バッカじゃないの。」
守は、残念そうに後姿を見ながら、誠に言った。
「ほら、行っちゃったじゃない。純子ちゃんが誠とならいいって言ったのに、もったいないじゃん。案外見た目も良かったしさ。」
「そうかなー? 初対面で人の悪口言うような奴なんて、僕は全然興味が湧かなかったけど。」
「まー、そう言うなよ。俺、腹出てるし。戻って、一息入れようか。」