第11話 「恋愛とナンパ」
渉は、喰いついた。
「えっ? 何、何? ナンパしてきたのか?」
守は自分のことのように、自慢げに言った。
「聞いて驚くなー・・・あの鮎川留美を、おんぶしたんだぞ。」
渉は、驚いた。
「えーっ! マジ? 有りえないしょ!」
誠が、口を開いた。
「マジ。」
渉が、誠に向いた。
「で、何で、おんぶ?」
誠は、少し照れ気味に、ちょっと自慢げに話した。
「それはさー、ジョキングしてたら、公園の階段で鮎川留美が倒れてたんだ。はじめは鮎川留美だと解らなかったんだけど、顔を見てびっくりだよ。足を怪我して歩けないって言うから、仕方なくおぶってこのホテルまで運んで来たんだ。」
「ほんとかよー。スゲー偶然じゃん。そんで、次会う約束とかしたの?」
誠が直ぐに答えなかったので、守が言いだした。
「それが、無いんだって。お礼も断って、帰って来ちゃったんだってさ。」
「えーっ! 何やってんだよ。でも、メルアドくらい聞いたんだろ?」
守がまた、誠より早く答えた。
「忘れたんだと。向こうが聞いて来たのに、言わなかったんだと。」
「信じらんねー。こんなチャンス二度とないのに。」
誠が、言い訳をするように元気なく言った。
「短い時間だったけど、話が出来て、おんぶまで出来たんだから十分だよ。どうせ好きになっても、付き合える訳でもないし、変に引きずるより良い気がする。」
守が、笑った。
「何格好付けてるんだよ!」
渉は、笑わなかった。
「まー、誠の言うことも当たってるかな。芸能人より普通の人の方が無理が無いしな。それに、万が一付き合えたとしても、上手く行く訳ないよ。」
少し暗くなった場の雰囲気を上げようと、守が言った。
「今更何言っても、始まらないさ。気分を変えて、明日ナンパしまくればいいじゃん。」
誠は、ナンパの事など忘れていた。
「ナンパ? 渉は、するの?」
「する訳ないでしょ、大塚美佳ちゃんに怒られちゃうよ。」
誠が天井を見上げてつぶやいた。
「そっかー、それじゃーあしたは、普通に泳ごうかなー。」
守は困った顔をした。
「2人とも何言ってんだよ。恋愛とナンパは別だろ?遊びに来たんだから楽しまなきゃ。明日は、俺も頑張ちゃおうかなー。」
渉が突っ込みを入れた。
「由香ちゃんに怒られても知らねーぞ。」
誠も、自分たちが守を誘ったことなど忘れている。
「そーだよ、由香ちゃんみたいな可愛い彼女が居るのに、ナンパなんておかしいよ。俺なら、絶対浮気なんかしないのに。」
守の声が大きくなった。
「お前ら、一人の女と長く付き合ったことないから、分かんないんだよ。いくら好きでも、毎日毎日一緒に居ると、息抜きしたくなるのさ。お前達だって、好きだからって、毎日毎日焼肉続いたら、ラーメンとか食いたくなるだろ?」
渉は、考えながら言った。
「まーそうだけど。食い物とは、違うんじゃねーの?」
誠も続いた。
「俺もそう思うなー。」
守は、自分は経験豊富だと、言わんばかりだ。
「2人とも、まだまだ青いねー。」
「そうかなー?」
渉も誠も、首を傾げた。