第七話 ジャワ島沖航空戦
マレー作戦は1942年の1月15日で終了した。
ま、ようするにシンガポールを占領したからや。
第二航空艦隊を攻撃した攻撃隊はペナン島から飛来した物やったが、ペナン島も既に占領してる。
ついでに、シンガポールに在泊していた旗艦プリンス・オブ・ウェールズ率いる英東洋艦隊も捕獲した。
初日に小沢中将の第一航空艦隊がシンガポールを奇襲攻撃したため、英東洋艦隊は史実の真珠湾同様に、損傷や大破着低の艦が多く、身動きが出来ずにそのままシンガポールを占領した陸軍部隊に捕獲された。
豊田長官は、工作艦朝日と明石を派遣して簡単な修理後に内地に回航、本格的な改装すると言っている。
そして、俺ら第二航空艦隊は、ジャワ島を攻略するために、上陸船団を率いてジャワ海に進出していた。
―――旗艦翔鶴―――
「……あちぃ」
「暑いのは皆もです」
艦橋で呟く俺の言葉に大川内が反応する。
いちいち反応するなよ。
俺は、うちわでパタパタと扇ぐ。
第二航空艦隊では、『暑かったらうちわで扇いでいいよ』と暗黙の法律がある。
むしろ、俺が作った。だって暑いもん。
「スラバヤの蘭艦隊は出てこないやろ?」
「はい、第一航空艦隊が叩いたと言っていますので」
ジャワ島のスラバヤには軽巡デ・ロイテルを旗艦とする蘭東インド艦隊がいたが、開戦一週間後の12月15日に、敵艦隊の掃射を目的とした第一航空艦隊がスラバヤを強襲。
全艦が中破以上の大破着低を余儀なくされている。
「ならええわ。……問題は空や」
ジャワ島には三七八機の航空機あった。
といっても、戦闘機は七二機で爆撃機は五八機、残りは飛行艇や練習機しかないけどな。
でも、爆弾架を取り付けて爆撃機にしてるやろな。
いくら零戦でも、人海戦術には勝てんしな。
「まぁ、こんな事もあろうかと(言ってみたかった)、空母祥鳳が加わってるし、ボルネオ島攻略支援のために、カリマータ海峡にあるブリトン島に駐留している第十一航空艦隊から三六機の零戦を借りてるから零戦一五六機やから大丈夫やろ」
「……誰に説明しているんだ?」
「勿論、読者」
翔鶴、……分かれよ。
けど、この時に飛行艇に見つかって、位置を発信されていたとは知らなかった。
―――スラバヤ司令部―――
「飛行艇がジャップの艦隊を発見したぞ」
蘭東インド艦隊司令長官のC・E・L・ヘルフリッヒ中将がジャワ空軍のヴァン・オーエン少将と話す。
「一つだけ案があります」
「何だ?」
「全航空機を持って、敵艦隊を体当たり攻撃をします。我等は旧式が多けれど、三百機近くあります」
「向こうにはゼロがいる。おそらく攻撃隊は壊滅するな」
「やむを得ません。この極東の地が、ジャップ猿が跳梁跋扈する野猿の天国と化すことを考えると、有意の若者達の生命を犠牲にすることも致し方ないと私は考えます」
「うむ、仕方あるまい。彼らだけをいたずらに死なせるようなことはせん」
このような経緯でオランダ空軍による第二航空艦隊をに対する『特攻作戦』が決断されて攻撃隊は離陸した。
―――第二航空艦隊―――
「スラバヤを爆撃やな」
「念のためですか?」
「いや、艦隊は大丈夫やと思うから飛行場やな」
大川内とそんな話をしてたら、通信兵が駆け込んで来た。
「スラバヤを偵察に向かった零式水偵をより緊急電ッ!!『我、敵ノ攻撃隊ヲ視認ス。数ハ、約三百。艦隊トノ距離百六十キロ』」
「長官の感が当たりましたな」
「ほんまやな。全空母は急いで零戦を発進させるんやッ!!補用の零戦もや、急げッ!!全艦対空戦闘準備ッ!!」
俺は急いで、飛行服に着替えて飛行甲板に行く。
飛行甲板では、次々と零戦がエレベーターで上げられている。
俺は近くにあった零戦に乗り込む。
既に、艦は最大速度になっており、1番機から発進していく。
「大和ッ!!」
翔鶴が俺の零戦に駆け寄る。
「どうした翔鶴?」
「……無茶はするなよ」
「分かっとるわ。ほな行ってくるで」
「あぁ」
翔鶴は俺に敬礼をして、俺も翔鶴に返礼をする。
そして、俺は発艦した。
―――高度三千―――
俺は編隊を組んで飛行している。
上空直掩の零戦二七機は既に、敵戦闘機と交戦しているみたいや。
増援の零戦は七八機。
「何とか食い止めへんとな……」
俺は呟いてスロットルレバーを押して、最大速度で敵攻撃隊に襲い掛かる。
タタタタタタタタタタッ!!
敵攻撃隊は旋回機銃で応戦するが、反動が旋回機銃では無理がある。
俺は、一機のグレン・マーチン双発爆撃機の後方に回り込む。
マーチン爆撃機からは旋回機銃が放たれているが、俺はラダーペダルで左右にぶれる。
照準器を覗き込み、右主翼の付け根に狙いを定めて、二十ミリ機関砲をぶっ放した。
ドドドドドッ!!
マーチン爆撃機は右主翼を貫かれ、クルクルと回りながら落ちていく。
そこへ、爆撃隊の邪魔をさせんとばかりに一機のP40が機銃をぶっ放してくる。
ダダダダダダダダッ!!
俺は慌てて左旋回をして逃れる。
P40もすかさず追う。
俺達はそのまま格闘戦になるが、運よくP40の後方に回り込めた。
タタタタタタタッ!!
ドドドドドッ!!
七.七ミリと二十ミリを同時に放つ。
エンジンを貫かれたP40は炎を噴きながら落ちていく。
「……通算五機目。これで、エースパイロットになったな」
俺は思わずにやけてしまう。
その後、俺は合計六機を撃墜した。
勿論、敵の攻撃隊は全滅した。二十数機は艦隊に向かったが、鈍速な飛行艇や練習機のため、次々と海面に叩きつけられた。
零戦隊の被害は七機が体当たりで喪失したが、五名のパイロットは救助した。
第二航空艦隊は平然とジャワ島を目指し、敵戦闘機のいない中、平然と第二航空艦隊の攻撃隊はジャワ島の軍事施設に集中攻撃をした結果、僅か10日で降伏。
ジャワ島攻略は終わった。
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