第六話 開戦
よう、第二航空艦隊司令長官の古賀大和や。
今日は、12月1日や。
史実やと、対米戦を決定した御前会議の日やけど、この世界は違う。
米国には宣戦布告をせず、英、蘭に宣戦布告をした。
第二航空艦隊は陸軍がコタバルに上陸するために、コタバルの飛行場と海岸を攻撃する役目がある。
小沢中将の第一航空艦隊は、シンガポールに直接に航空攻撃を加える予定や。
「長官。第一次攻撃隊発進準備完了です」
「ご苦労さん」
第一次攻撃隊は零戦十八機、九九式艦爆十八機、九七式艦攻十八機の計五十四機の攻撃隊や。
この攻撃隊はコタバルの飛行場を攻撃する。
第二次攻撃隊はコタバルの海岸にある英軍陣地の攻撃や。
機数は第一次と一緒や。
第三次攻撃隊も機数は一緒で攻撃目標は、第二次が攻撃したコタバルの海岸にある英軍陣地や。
これは英軍陣地の止めを刺すと考えてな。
第四次攻撃隊も機数は一緒で、コタバルの飛行場や。
これはコタバル飛行場の止めを刺すと考えてな。補用機も入れた攻撃隊やから被弾したら後がないけど、しゃぁないわ。
「第一次攻撃隊発進やッ!!」
俺の命令は発光信号で伝えられた。
『帽振れェェェーーーッ!!!』
手すきの乗組員達から帽を振られながら、零戦隊の一番機の新郷英樹大尉機が発艦する。
他の空母からも攻撃隊が発進する。
未来やと映像と、写真だけしか見れないのに現代人の俺が此処にいるなんてな……。
「長官。第一次攻撃隊発進完了しました。引き続き、第二次攻撃隊を発進させます」
「分かった」
ちなみに、航空機の数は、五航戦で零戦四十八機(補用機も含めて)、九九式艦爆、九七式艦攻は補用機を含めて六十機ずつ。
龍驤は零戦十八機、九九式艦爆が十八機、九七式艦攻十二機(補用機を含む)。
瑞鳳は零戦十八機、九七式艦攻十二機(補用機を含む)。
大鷹は零戦十八機、九七式艦攻九機(補用機を含む)を搭載している。
結果的に零戦は百二機、九九式艦爆七十八機、九七式艦攻九十三機の計二七三機を搭載している。
「どうかしたのか古賀?」
艦橋直下の飛行甲板でボウッとしていた俺に気がついたのか翔鶴が声をかけてくる。
「いやなに、壮観やなぁと思ってな」
「確かにこの艦隊の景色は壮観だな」
見回すと、空母を守るように金剛、榛名、重巡達が輪形陣を組んでいる。
「……何で飛行服を着ているんだ?」
翔鶴が、俺が着ている飛行服を見て問う。
「ん?言ってなかったか?俺は迎撃戦だけの搭乗員やで」
「……死亡フラグ満載だな」
「何故、お前がそれを知ってるねん。てか、俺戦死かよッ!!Σ(゜Д゜)」
俺と翔鶴が漫才をしていると、参謀長の大川内が来た。
「長官。第一次、第二次攻撃隊から入電です。『我、爆撃ニ成功ス』です」
「そうか。第三次、第四次攻撃隊にも徹底的に痛め付けろと伝えるんや。それと、第二戦隊も艦砲射撃するよう言ってな」
「了解です」
大川内はニヤリッと笑って艦橋に向かう。
「第二戦隊を陸軍の支援に向かわすのか……」
金剛、いつの間に来てんの?
「まぁ第二戦隊は速度も遅いしな。輸送船団の護衛にはピッタリや。軍艦は有効に使わへんとな」
今の第二戦隊は艦隊戦には向いてないしな。
まぁ内地帰ったら早く改装するよう艦政本部に言うとこ。
『ウゥゥゥゥゥーーーッ!!!』
敵機来襲の警報が艦隊に響いた。
俺は近くにあった零戦に乗る。
「ちょ、長官ッ!?」
「チョーク外せッ!!モタモタするなッ!!」
整備員は俺が零戦に乗ったのに驚いたが、俺の言葉に慌ててチョークを外した。
「古賀ッ!!貴様、本気で行く気かッ!?」
翔鶴と、金剛が零戦に駆け寄る。
「本気やなかったら操縦技術は習わんわ。お前ら下がってるんやッ!!」
発着艦指揮所では、既に『発艦セヨ』の旗が振られている。
俺は車輪のブレーキを解除する。
左手でスロットルレバーを全開の位置まで押し出す。
操縦桿を僅かに前に押す。
既に零戦は滑走してる。
機体が水平になる。
飛行甲板の端まで来た瞬間、操縦桿をゆっくりと引いた。
ブオォォォォォンッ!!
俺を乗せた零戦は飛行甲板を蹴って、大空へと舞い上がる。
車輪を収納して、高度二千に上がる。
この時の上空警戒機は零戦九機。
九機の零戦は、真正面に来る飛行編隊を視認した。
英軍の艦上戦闘機フルマー二十機と爆撃機ブレニム二十機やった。
「いくら旧式でも気をつけへんとな……」
十機の零戦は編隊の後方についた。
二十機のフルマーは散開して俺らに襲い掛かる。
九機の零戦はフルマーに向かうが、俺は速度を上げてブレニムに向かう。
「ま、一応は空母を狙う爆撃機やしな」
俺は最後尾のブレニムに狙いをつける。
タタタタタタタタタタッ!!
ブレニムから七.七ミリ機銃が襲い掛かる。
しかし、俺は内心慌てて機体を左右に揺らして銃弾を避ける。
照準器の中にあるブレニムが一杯に広がる。
「貰ったッ!!」
俺は二十ミリ発射レバーを握った。
ドドドドドドッ!!
時間的に一秒だけ握り、素早くレバーを離した。
放たれた二十ミリ機関砲弾は、エンジンと燃料タンクを貫いた。
ボゥッ………グワアァァーンッ!!
ブレニム爆撃機は、炎に包まれ、そのまま爆発四散した。
俺の撃墜第一号や。けど、人を殺したのに実感がわけへんな。やっぱ、死体を直接見てへんからかな?
不意に、後ろから殺気を感じた。
俺は咄嗟に、左フットバーを蹴飛ばして左旋回をする。
タタタタタタタタタタッ!!
俺がいた空域に機銃弾が撃ち込まれた。
撃った犯人は一機のフルマーやった。
俺はフルマーの後方に回り込む。
フルマーは逃げようと旋回するが、零戦の機動力には勝てん。
俺は機首の七.七ミリ機銃弾を放った。
タタタタタタタタタタッ!!
ボゥッ………。
機銃弾は左翼の燃料タンクを貫き、フルマーは炎を上げながら墜落していく。
既に、艦隊との距離は八千を切っており、高角砲が火を噴いている。
さらに、増援の零戦隊二十六機が来ており、フルマーとブレニムは正に四面楚歌やった。
すると、3時下方に一機のフルマーが白い煙を吐きながら逃げていくのを見つけた。
「悪いけど、一機も逃がさんで」
俺は速度を出して降下した。
フルマーが飛行していた高度は約二百。
あっという間に追いついた。
俺は後方の確認をしてから七.七ミリ機銃を放った。
タタタタタタタタタタッ!!
弾丸は吸い込まれるようにエンジンに命中した。
ボゥッ……クワアァンッズシャアァァンッ!!
フルマーは火を噴き、回転をしながら海面にぶつかった。
「よっしゃッ!!」
俺は辺りを見回すが一機も敵機はいない。
「……おらんな。さぁ翔鶴に帰るか」
俺は機首を翔鶴に向けた。
後日、陸軍から上陸支援の協力をかなりしたため、感謝状を貰った。
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