第五話 作戦と発着艦訓練
調子に乗って今日二本目。
―――9月30日柱島泊地戦艦長門―――
「特設空母春日丸を第二航空艦隊に編入ですか?」
「うむ」
俺の問いに新連合艦隊司令長官の豊田副武大将が頷く。
「名前も大鷹に変更する」
「しかし、春日丸……大鷹の速度は遅いはずですが……」
「大丈夫だ。一週間前から機関を取り替え中だ。10月中旬には第二航空艦隊に配備する」
「はぁ、まぁ速度があれば、艦隊にも付いて行けますからね」
「それと……開戦は恐らく11月中旬から12月初旬のようだ」
「………やはりそうですか……」
「国民も限界に来てるようだ。しかし、米国と戦わなくて俺はホッとしとるよ」
豊田の言葉に俺は苦笑する。
「まぁ英国なら充分勝てますよ。ところで、遣独艦隊はどうなりましたか?」
「あぁ、伊八、伊二九、伊三○、伊三四、それに第四艦隊の第七潜水戦隊を二日前から派遣してる。しかし、陸軍のために派遣するのが嫌だな」
豊田大将は陸軍を「獣」と非難してるし、しゃあないわな。
今回の派遣目的は、ドイツ陸軍から購入した三号戦車J型と四号戦車F型の計三両ずつの受け取りと、ジェットエンジン、ロケットエンジン、油圧カタパルト、電探の購入と受け取り、さらに、多数の航空機用の工業機械と軍艦用の工業機械の購入と受け取りや。
日本軍からの見返りに、酸素魚雷、零戦三機、九七式艦攻三機、零式水偵三機の譲渡や。
わざわざ陸軍省行ったな。
むっちゃめんどかったけど。
まぁ、陸軍の奴らもドイツからの戦車購入に意欲的やし良しとしよう。
「搭乗員の練度はどうかね?」
「だいぶ、いい状況ですね」
皆頑張ってるよほんと。
「そうか。それと、戦艦の配備だが、金剛と榛名を配備する」
「上陸船団の護衛はどうするんですか?」
「第二戦隊を回す。何時までも、内地で泳がすわけにはいかんからな。高須には悪いが、青葉に旗艦にしてもらうしかない」
高須中将乙です。
「それと零戦だが、既に金星エンジンを搭載した試作機が飛行したらしい。結果は上々のようだ。これが改良型零戦の仕様はこれだ」
豊田大将から紙を渡された。
え〜と、何々………。
―――零戦三二型―――
全長と全幅は二一型と同じ。
三菱金星エンジン千三百馬力。
最大速度五百八十キロ。(推力式排気管を採用)
自重二千五十キロ。
武装 機首十二.七ミリ機関銃×二。二十ミリ機関砲×二(ベルト給弾方式を採用。弾丸は一門につき、百二十五発)
航続距離約三千キロ(座席後ろの胴体後部の中に燃料タンクを追加)
「二一型よりかなりいいと思います」
「うむ。しかし、まだ配備が出来ん。今、中島や三菱の工場で生産中だが、空母の配備は少なくとも来年の二月を目処にしている」
「早く配備してもらいたいですが、まぁしゃあないですね」
「うむ。それと、第一号艦と第二号艦だが、既に改装を施してるから竣工も予定より二ヶ月程遅れている」
第一号艦と第二号艦とは後の大和と武蔵や。
何の改装かはまだ内緒やな。
俺はその後、豊田長官と二、三度言葉を交わして長門を後にした。
―――空母翔鶴―――
はい、戻って来ました旗艦翔鶴です。
そして、今俺は飛行服を着ています。
「長官、それでは訓練をしましょうか」
空母翔鶴制空隊隊長の新郷英樹大尉が俺に声をかける。
「分かった」
俺達は、艦載機型に改造した零式練戦に乗り込み、エンジンをかける。
ブルンッ!!
さっき試運転をしてたので直ぐに掛かった。
俺は飛行眼鏡をかけて、風防をしめた。
発着艦指揮所からは、青い旗が振られている。
フラップを十度下げて離陸しやすい状態にする。
既にチョークは外されているため、俺はブレーキを踏んでスロットルレバーを開いて、最大出力にする。
ブレーキを離したら飛び出すように零式練戦が加速する。
飛行甲板の中央部を直進するように、両足で方向舵を操作する。
操縦桿を少し押さえ込み、機首が下がって尾部が浮く。
操縦桿を引かずに零式練戦はフワッと、飛行甲板から発艦した。
俺は、車輪を収納してフラップも収納する。
「いいですよ。合格点です」
後ろにいる新郷大尉が声をかける。
「あぁ」
「しかし、長官も物好きですね」
「ええやん。俺はまだ、十九や。少しでも、お前らの負担を楽したいしな」
俺が何故零式練戦で訓練してるのかだが……まぁ率直に言うと、俺も戦いたかってん。
こう見えても、憑依する前は航空自衛隊に入ろうと勉強してたからな。
大川内達に反対をくらったが、何とか説得した。
まぁ防空戦だけ参加するだけやし……。
流石に攻撃隊についていくのはな。
俺司令長官やし。
「長官、そろそろ着艦に入りましょう」
伝声管から新郷の声が聞こえてくる。
「分かった」
俺は頷いて、着艦に入った。
開戦は近かった。
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