第二十四話 別れは突然に……
これは連載時から考えてたところです。
ドーバー海峡突破作戦から一ヶ月が経った。
あれ以来、イギリスは何も仕掛けてはこない。
戦力の補給中やろな。
そう判断したヒトラーは東部戦線に戦力を送る中、イギリスに止めを刺すように大規模攻撃を実施。
俺達も協力して軍港やレーダー基地を徹底的に破壊した。
そして遂に根を上げてイギリスは和平交渉をドイツに申し上げた。
ヒトラーは大喜びをして和平交渉に望んだ。
俺達のドイツ救援は一応終わりなので、豊田長官の命令で日本に戻る事になった。
そうそう。
ゲーリングさんとの勝負はギリギリで俺が勝った。
無茶苦茶際どかったけどな。
俺は艦隊の指揮を大川内に任せて、翔鶴の様子を見るためにひと足早くハインケルの輸送機でイタリアに向かう事にした。
「長官、よかったんですか?自分らだけ先にイタリアに向かって」
輸送機の中でルツィアが聞く。
「イギリスとは一応停戦になったから大丈夫やろ。それに翔鶴達の修理を手伝ってくれたイタリアにも感謝したいしな」
翔鶴達の修理はイタリア海軍が協力してくれた。
それに翔鶴の顔も見たいしな。
その時やった。
「前方に雷雲を確認したので、経路を変更します」
見ると、前方には巨大な雷雲があった。
「いつの間になんやろ……」
何かすげぇ胸騒ぎがするんやけどなぁ。
しかし、輸送機は経路を変更しない。
「どないした?」
「そ、それが機体が動かないんです」
ドイツ人の機長が言う。
その間にも輸送機は雷雲に接近する。
「落下傘付けて脱出するか?」
「落下傘は付けてません。それに今はアルプス上空ですよ。例え脱出しても登山装備をしていない我々は凍死しますよ」
マリノが言う。
「これって……絶体絶命てやつ?」
瑞姫が言う。
………まさか。
「……これが歴史の運命か……」
俺はそう呟く。
そろそろ俺は死ぬべきてやつか?
史実の古賀峯一のように、殉職て事か……。
そして輸送機は雷雲の中に突入する。
ガラガラガラガラッ!!
雷雲の中はかなりの雷が鳴っている。
龍の巣か?
「無電は打っているのか?」
「打ってはいますが……」
そら急に助けにこられへんしな。
むしろ、二重遭難になりそうやしな。
「あの、長官はかなり落ちていてますね?」
早川が言う。
「……まぁな。此処が俺の死に場所らしいからな」
「そんなッ!?」
ルツィアが叫ぶ。
「史実でも古賀峯一は遭難事故で殉職した。俺と古賀峯一が入れ代わっても、運命は運命……か」
パシィンッ!!
……ルツィアに叩かれた。
「いい加減にして下さい長官ッ!!貴方は古賀峯一ではなく、古賀大和だッ!!歴史は既に変わっているんだッ!!」
………そうやな。
「スマン。ちょっとどうかしてたわ。ありがとうなルツィア」
「いいんですよ長官」
だが、神は残酷やった。
ピカァッ!!
ドガアァンッ!!
雷が機体に当たった。
「右エンジンに命中ッ!!駄目です、落ちますッ!!」
機体が急降下をする。
身体が無重力で浮く中、ルツィア達を抱きしめる。
「スマンな……お前らは残ればよかったな」
「構いません長官」
マリノが言う。
「日本の行く末が心配だな」
聖ちゃんが言う。
「ま、後は豊田さん達に任せるか」
その瞬間、輸送機は爆発した。
薄れゆく意識の中、俺は神を恨んだ。
「覚えとけよ神さんよ……」
その時、目の前に白い髭を蓄えたおっちゃんが苦笑いしてるように見えた。
―――ジェノバ―――
「た、大変です翔鶴さんッ!!」
慌ただしく、イタリアの駆逐艦の艦魂が翔鶴の部屋に入ってきた。
「何だ騒々しい」
「こ、古賀長官が―――――」
「………何?」
少女の言葉に翔鶴はただ唖然としていた。
そして三日後、日本で臨時速報が流れた。
『大本営より臨時速報。大本営より臨時速報。帝国海軍遣独艦隊司令長官古賀大和中将はドイツからイタリアへ輸送機の移動中、壮烈な最期を遂げる。繰り返す、帝国海軍古賀大和中将は輸送機の移動中、壮烈な最期を遂げる』
一週間後、代理司令長官の大川内は遣独艦隊を帰還するために、地中海に入りジェノバに寄港した。
「翔鶴ッ!!」
金剛や瑞鶴達が翔鶴の部屋に入る。
「何だ騒々しい」
翔鶴はいた。
「……何だ、一番心配していたのに損したなこりゃ」
榛名が肩を竦める。
「何を言うんだ。私だって最初は泣いたさ」
翔鶴は日本酒とコップを出す。
「まぁ座れ」
翔鶴が皆に促す。
そして、翔鶴はある一冊の本を出した。
「大和が書いた遺言てやつだろう」
本の中身は現代の政治の話しや外国の事が書いていた。
「……大和の世界はこのような未来になっているのか……」
本を見ている金剛が呟く。
「外国の項目は私が破る。後は大川内達に見える場所に置いておく」
「翔鶴、それでいいのか?」
「……大和が死んでなくてもいずれアイツがやるつもりのはずだから問題はない」
翔鶴は日本酒を飲む。
「……それならいい」
金剛も飲む。
「……それにしてもあまりにも突然過ぎるよな……」
榛名が呟く。
「……それが歴史の運命……か」
長門が呟く。
「史実でも古賀峯一は遭難殉職している。まぁそれが原因のようなものでマリアナ沖は負けたがな」
「……………」
「泣くな榛名」
「な、泣いてねぇよッ!!」
榛名が目を擦る。
「涙か……私もあの日は泣いた。片目だけだがな」
「……翔鶴……まさか……」
「あぁ、左目を失明したようだ。こないだの海戦で電探の一部が損傷したのが原因だ」
翔鶴の左目は生気が無いような目だった。
「だがな、私は嬉しいと思う」
「嬉しい……だと?」
長門が問う。
「大和と過ごした思い出だ。それに泣いても仕方ない。何時までも悲しみは捨てられないからな。それと……」
翔鶴は言葉を止める。
「それと?」
瑞鶴が促す。
「泣いてた時思った。この傷も悲しみも大和を愛せた印になるんだ……とな」
「……翔鶴、お前は凄いよ」
榛名が言う。
「褒めても何も出んぞ榛名。さぁ飲もう、今日は我々艦魂達で大和達の葬式だ」
翔鶴は大和の机を見る。
そこには六人分のコップがあり、中身は日本酒である。
「……大和。私はお前が好きだ……」
翔鶴達はゆっくりと六人分のコップに敬礼をした。
そして、時は流れた。
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