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第十九話 ベルリン





俺はベルリンへ向かうハインケルHe111双発輸送機の乗客席からヨーロッパ大陸を見下ろしながら奇妙な場違いな印象を禁じえなかった。


何やろ?


いきなりのベルリンへ召喚は?


「……長官、一体何でしょうね?」


ルツィアが俺に聞いてくる。


マリノとルツィアは通訳兼里帰りで同乗させていた。


「恐らくは派手にセレモニーでするのでは?」


マリノが聞く。


「多分それやろなぁ……」


チョビ髭嫌いなんやけどなぁ。


ユダヤ人を大量に虐殺させるし。


その後、輸送機はベルリン郊外のテンペルホーフ空港に着陸した。


俺は輸送機を降りる。


輸送機を降りると、すぐに親衛隊が俺達を出迎えた。


『ハイル・ヒトラーッ!!』


黒服の親衛隊員達が、右手をあげて声高々に総統の名を叫ぶ。


……うっさいわ(´Д`)


ナチス式敬礼はあんま好きちゃうな。


ガミ○スみたいに『デ○ラー総統万歳ッ!!』をしとけよ。


俺達は無言のまま、きつい角度で伸ばした手を帽子のひさしにあてる海軍式の敬礼で応えた。


「ようこそおいでくださいました」


一人だけ普通の背広を着た人物がいた。


どうやら大使館付きの外交官らしい。


綺麗な日本語やな。


「どうぞこちらへ」


招かれた先には、黒いピカピカのメルセデスが二台並んでいた。


立派な服装の親衛隊将校がドアを開ける。


俺達はそれに乗り込む。


車は直ぐに出発した。






俺達はベルリンの目抜き通りをぬけ、ブランデンブルグゲート近くの総統官邸に着いた。


「こちらでお待ち下さい」


外交官に暖かく、広い一室に案内された。


豪華な部屋やな。


赤い絨毯が敷き詰められ、壁には絵が飾ってある。


また、大きながっちりとしたテーブルにヨーロッパの地図が広げられていた。


執事がシャンパンを持ってきた。


威勢の良い音がして栓が抜かれて、足付きのグラスに注がれる。


俺は一気にシャンパンを飲み干す。


喉の辺りが熱くなってくる。


「酒は美味いな」


ルツィアとマリノは苦笑してシャンパンを飲む。


その時、親衛隊員が部屋に入り、ドイツ語で一言告げた。


「ヒトラーが来るらしいです」


ルツィアが言う。


部屋にいた親衛隊員全員が整列し、踵を合わせ、一斉に右手をあげてナチス式の敬礼をした。


……だからうっさいねん(´Д`)




チョビ髭の男が悠揚たる態度で部屋に入る。


はい、どうみてもアドルフ・ヒトラーやな。


黒い親衛隊の制服の左腕にナチス党の腕章を巻いただけで、勲章も装飾もないシンプルな軍装から凄まじい圧力を発している。


ヒトラーは親衛隊員達に頷き、今度はマリノとルツィアに何事か話し掛けた。


二人は流石に動揺したけど、慌てて通訳をする。


「遠いところをようこそおいで下さった」


親しげに俺の手を取った。


友人と話してるような感じやな。


「こちらこそお会いできて光栄です総統」


俺は一言だけで言う。


すると、もう一人でっぷりて太った男が姿を現す。


絶対にドイツ空相ヘルマン・ゲーリングやな。


「貴方が空母部隊の提督ですか。お会いできて幸いです。私はヘルマン・ゲーリング、ドイツ空相です」


俺はゲーリングと握手をする。


「地中海での活躍は私も伺いました。さらに、貴国の戦闘機の素晴らしさも聞いています」


ゲーリングはにこやかに話す。


が、そこへ親密さを断ち切るような声が割って入った。


「では早速、本題に入りたい」


勿論ヒトラーやね。


空気読めよチョビ髭め……。


ちなみに通訳はルツィアにやってもらう。


「古賀提督、貴方の艦隊には北海でソビエト向けの通商破壊戦をお願いしたい」


……何やて?


「どういう意味やねん?」


最初はヒトラーの発言の真意が分からんかった。


俺の反応にヒトラーは腕組みをした指先をいらいらと動かしている。


息を詰まらせるような空気がわだかまっている。


ドイツ人にとって、ヒトラーの命令の答えは常に「ヤー」やしな。


……待てよ。


このチョビ髭、機動部隊の作戦行動を期待しているんやな。


「私は日本海軍です。そして貴方はドイツの総統。命令を受ける立場はないわ」


俺の反論にヒトラーの表情が険しくなった。


「古賀提督。貴方は我々の立場を理解していないのか?日本とドイツは同盟国で、国の利害はほぼ一致する。勿論、日本がソビエト船に対して攻撃を加えろと言っているわけではない。北海の英米輸送船を叩いて連合国全体の戦力を落としたいのだ」


……オイオイ普通、そう言うのは日本に打診してから豊田長官が俺に命令として出すもんやろ。


ルツィアも困ったようにオロオロしとるし。


「総統閣下、そういうのは日本本国に打診してから言って下さい。いくら貴方が我々をクズ以下とけなしていても、クズ以下の国があるのですからね」


ルツィアがそれをヒトラーに言うと、ヒトラーは顔を真っ赤にしてドカドカと退出した。


親衛隊員達はオロオロしてる。


「古賀提督。いくら何でも少しやり過ぎですよ」


ゲーリングが苦笑しながら言う。


「ハッハッハ。人を見下してたから少し悪戯をな……(そういや、ゲーリング空相はモルヒネとかしてるん?)」


「(はい、してるみたいです)」


ルツィアと小声で喋る。


そうか……なら、一つ手を打つか。


「ゲーリング空相、私と模擬空戦でもしませんか?」


「古賀提督と?」


「はい、貴方は第一次大戦時は戦闘機パイロットだと聞きました。私もパイロットで撃墜数は三十機(セイロン島攻略や、アフリカ等でたまに出撃して撃ち落としてる)です。将官対将官の空戦は滅多に見れない対決ですし、どうでしょう?」


俺の提案にゲーリングは喜んだ。


「将官対将官の空戦対決ですか?中々面白い対決ですね。分かりました。その対決、受けましょう。場所や日時はまたお知らせしますよ」


ゲーリングはウキウキしながら俺に会釈して部屋を出た。


「さて、俺も帰るか」


俺達は用意されたホテルに戻った。


翌日、東條首相がわざわざ電文を寄越してドイツ軍の作戦に参加するようにと言われた。


けど、俺はヒトラーにある条件を出して、それを承認したら参加すると言った。




ユダヤ人を解放すると条件をな……。




御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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