第十七話 攻撃
「敵イギリス地中海艦隊の数は?」
俺は大川内に聞く。
「存在を確認された艦艇は戦艦キング・ジョージ五世、巡洋戦艦レナウン、空母イラストリアス、ビクトリアス、巡洋艦六、駆逐艦二十隻です」
……まぁまぁの戦力やな。
「イギリス地中海艦隊攻撃隊の準備は?」
「既に準備完了です」
嶋崎少佐率いる攻撃隊一四四機は飛行甲板に集結している。
後は俺の命令だけか……。
「……よし、攻撃隊発艦やッ!!地中海決戦始めるでッ!!」
『ハッ!!』
参謀達が艦橋内を駆け巡る。
各空母から攻撃隊が発艦していく。
そこへ通信兵が来た。
「古賀長官ッ!!マルタ島に向かった高橋機より入電ッ!!『我、攻撃成功ス。マルタ島ノ被害甚大』以上です」
……叩いたか。
『電探に反応ッ!!偵察機の模様ですッ!!』
電探員が報告してきた。
「……カタリナやろな…」
「恐らく発見されるでしょう」
俺の呟きに大川内が繋ぐ。
「直掩の零戦が向かいます」
数分後、カタリナ偵察機は火を噴きながら墜落していく。
「長官、カタリナより電波が飛んでいました」
田所通信参謀が報告する。
「……各空母に連絡や。零戦は何時でも発艦出来るようにしとくんや。無論補用機もや」
「了解です」
「長官ッ!!」
通信兵が艦橋に来た。
「長官、独伊の攻撃隊から入電です『我、駆逐艦二隻ヲ撃沈セス。巡洋艦二、駆逐艦四隻ヲ損傷サス』以上です」
「……対艦攻撃が不慣れやのにようやってくれるわ」
俺がしみじみと言う。
―――1時間後―――
「マルタ島攻撃隊着艦します」
既に上空にはマルタ島に向かった攻撃隊が着艦準備をしていた。
まずは損傷した機体からで、それが終わると艦攻隊、艦爆隊が着艦して最後に零戦隊が着艦する。
俺は防空指揮所でそれらの作業を見ていた。
「……高橋の戦果報告を聞かなくていいのか?」
翔鶴が来る。
「すぐに第二次攻撃隊として飛んでもらうから報告は全てが終わってからや」
「……そうか…」
翔鶴はそう呟くと黙ってしまう。
「……何かあったんか?」
「……嫌な予感がするんだ」
「嫌な予感?」
「……あぁ」
翔鶴はその一言だけを言って黙ってしまう。
……何か気まずいなぁ。
「長官ッ!!嶋崎機より入電ですッ!!『我、敵空母一、巡洋艦二隻を撃沈ス。戦艦一、中破。サレド、レナウン型不明ナリ』以上です」
「……何やて?」
何でレナウンが不明てどういう事や?
「どういう事や?」
「はぁ、攻撃隊が到着した時にはレナウン型が見受けられなかったようです」
「……独伊の攻撃隊がレナウン型に何らかの損傷を与えたんか?」
「多分それじゃないかと……」
大川内も分からんしな。
「長官ッ!!」
そこへ奥宮航空参謀が来た。
「何や?」
「敵機来襲ですッ!!数は約二十ですッ!!」
「方向は?」
「マルタ島からです」
てことはどっかに飛行隊を隠してたか、残存機か……。
「直掩の零戦は?」
「迎撃に向かっています」
なら安心やな。
「攻撃隊準備の状況は?」
「艦爆隊は準備完了しています。艦攻隊も約半数が完了しています」
大川内が答える。
「ならそれだけでええわ。発進させるんや。艦攻隊の半数はレナウンを探すんや」
「分かりました。イタリア艦隊に気をつけるよう通信を入れとけ」
「了解ッ!!」
「それと、攻撃隊を発進させた後に戦艦中心の砲撃部隊を編成や」
「砲撃で叩くのですか?」
大川内が聞く。
「徹底的に叩くッ!!ただそれだけやッ!!」
各空母から零戦二七機、九九式艦爆五四機、九七式艦攻二四機が発進する。
「長官。マルタから飛来した敵攻撃隊は全滅しました」
全機がソードフィッシュ雷撃機らしい。
攻撃隊が発進後、戦艦長門、陸奥、金剛、榛名、重巡妙高、足柄、軽巡長良、駆逐艦八隻が敵イギリス地中海艦隊を叩くために空母部隊と別れた。
「大和、任せておけ。地中海艦隊は必ず殲滅する」
金剛が意気込む。
「おぅ、期待してるで」
金剛と別れる。
「……皆、空母をしっかりと守ってくれよ」
俺は空母部隊を護衛する愛宕や摩耶に言う。
『了解ッ!!』
全員が敬礼で答える。
「大丈夫だよ大和さん。レナウンは逃げただけだよ」
眼鏡をかけた摩耶が言う。
「そうやと嬉しいんやけどな」
ちなみに、イタリア艦隊は輸送船団の護衛や。
―――PM:21:00―――
「長官ッ!!松田大佐より入電です。最後まで浮かんでいた空母イラストリアス、ビクトリアスを捕獲したとの事ですッ!!」
通信兵が艦橋に慌ただしく入ってきた。
イギリス地中海艦隊は二波に及ぶ攻撃を何とか耐え抜いていた。
けど、四一センチ砲を搭載する長門と陸奥に砲撃戦では叶わず、キング・ジョージ五世は撃沈。
巡洋艦三隻と駆逐艦九隻が逃げたらしい。
「……勝ちましたね長官」
「……あぁ」
俺はホッと溜め息をつくが、翔鶴は今だに顔を険しくしたままやった。
しかし、翔鶴が何かを見つけた。
「大和ッ!!至急に退避だッ!!レナウンだッ!!」
俺は反射的に叫んだ。
「全艦反転180度やッ!!」
ズドオォォォォーーンッ!!
暗闇から四つの光りが現れた。
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