第十四話 新たなる作戦
展開が急なのは気にしないで下さい(汗)
翔鶴型が再び第二航空艦隊の配備された二日後、俺は二式飛行艇を使って柱島に帰還した。
―――旗艦大和―――
「古賀大和中将、入ります」
「うむ」
豊田長官の了承により長官室に入る。
「急に呼び出してすまないな。軍令部からの作戦要請が来たんだ」
部屋に入ると、豊田長官が計画書をくれた。
「『印度攻略作戦』ですか。軍令部の奴ら、陸軍に急かされたんですか?」
「いや、違う。印度攻略はあくまでもカモフラージュだ。まぁ読みたまえ」
豊田長官に促されて、俺は計画書を読む。
「……これは本気ですか?」
「うむ、奴らからの支援要請だ。奴らも躍起になってきたらしい」
俺はある頁を見た。
『本作戦は北アフリカのドイツ軍を支援す』
「だが、陸軍の奴らは印度を占領したいらしいがな」
「戦力の無駄遣いですね……て、まさか俺に陸軍を説得しろと?」
豊田長官はニヤリッと笑う。
「その通りだ」
―――陸軍省―――
「それでまた君か……」
「俺もまさかこーなるとは思わなかったですけど……」
陸軍省の一室で東條と俺が話している。
「中国からの撤退は最初は貴様に計られたと思ったが……兵器の生産が予想以上に順調だからよしとしよう」
中国に駐留していた部隊の大半は内地に戻り除隊になり、工場や工廠等に雇用され、慣れない仕事に汗を流していた。翔鶴型の改装が早く終わったのも復員達のお陰やしな。
「我々は印度は占領しないほうがいいでしょう。ボース氏を援助したらいいですね。まぁ援蒋ルートを破壊するなら、カルカッタは占領するべきですね」
「……確かに」
「それと、北アフリカのドイツ軍の支援をすると言っていますが、一カ所だけ占領したい場所があります」
俺は持参した世界地図を広げて、ある一カ所を指差した。
「場所はイエメン王国のアデンです」
「何故此処かね?」
「これは北アフリカ戦線にも影響しているんですが、ここ一ヶ月程、第二航空艦隊でここの紅海を通過する英輸送船団を攻撃しています。セイロン島から出撃してるのですが、この海域まで行くのに少々燃料が勿体ないです。なので、紅海の入口であるアデンを占領したら、通過する英輸送船団をやすやすと攻撃しやすいのです。英軍の補給を苦しめる事になるので、北アフリカのドイツ軍は侵攻しやすいはずです」
「……成る程。ヒトラーに恩を売るか」
まぁヒトラーは恩を感じひんやろな。
「伊号潜の偵察によると、一個連隊規模の英軍が駐留しているとの事です」
「……二個師団で良かろう。しかし、占領と言ってもイエメン王国がおるだろう?」
「はい、そこでイエメン王国にはこの大戦が終わるまでアデンを占領させてほしいと頼み込むのが最良ですね。向こうにも、我が軍の武器を提供するのがいいですね」
「……成る程。『武器を上げるから土地を貸して下さい』か。分かった。交渉はこちらでやろう」
「ありがとうございます」
陸軍の了承を得た俺は大和に帰還して豊田長官にも説明した。
豊田長官もアデンの占領は最良だと納得してくれた。
「……ドイツ軍を支援するのはあまり嫌だがな」と長官は零していたが、我慢して下さいよ。
東條からの連絡によると、イエメン王国には五十ミリ戦車砲を搭載した二式中戦車五十両等を多数提供する事らしい。
なお、日本陸軍の戦車は海軍から八センチ高角砲の提供を受けて作った二式戦車や。
装甲は七十ミリらしい。
まぁ、ソ連のT―34にも負けんと思うけどな。
閑話及第や。
俺はその後、セイロン島に戻って大川内達に説明した。
説明後、全艦は出撃準備に入った。
そして、今はコロンボ上空で訓練をしていた。
『長官、後ろを取ったぞ』
無線から後方から急降下する聖機の声が聞こえる。
「残念やな」
俺は速度を落とし、左フットバーを踏む。
そして、操縦桿を左に倒す、
新型の零戦三二型の機首が左を向き、左主翼の先端を支点に横転したかのように、機体全体が尻を振りながら左に回転する。
零戦が得意の「左ひねり」や。
左にひねった機体の脇を聖機が急降下する。
『しまったッ!?』
聖は驚く。
俺は、体制を整えて聖機の後方に回り込む。
「撃墜やな」
『また負けたか……』
当たり前や。エー〇コンバットと零式〇上戦闘記で鍛えた俺やで。
豊後水道上空戦で、零戦二一型でP―51とF6Fに挑んで見事にSを出したな。
俺達二機はそのまま翔鶴に着艦した。
「長官。陸軍さんからの報告で輸送船団の出撃準備完了との事です」
大川内に言われて腕時計を見ると午後五時半や。
「全艦の出撃準備は?」
「全艦完了しています」
「よし、全艦に発光信号と陸軍に打電『全艦出撃。目指スハアデンナリ』」
「了解ッ!!」
チカッ!!チカッ!!
発光信号が全艦に飛び交い、駆逐艦が出港する。
軽巡、重巡、戦艦と出港していき、最後は空母が出港する。
「目標、イエメン王国のアデン。全艦巡航を維持や」
第二航空艦隊は輸送船団と合流して一路、アデンを目指した。
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