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突然の出来事に周囲の人達は驚き、ざわめいている。
「コロナリア家のご息女がそんなことするかしら。」
「そんな風には見えないけどな。」
こちらに聞こえないように話しているつもりだろうが、思ったより聞こえているぞ。
けど案外悪い事は言われていないようだ。
これまでのイルがどのように生きていたか、なんとなく分かったような気がした。
「殿下。申し訳ございませんが、なんのことでしょうか。」
"聖女リズ"
今すぐに思い出せないということは、この場にはいない人間かな。
ずっと尻餅をついた状況でいるわけにもいかないので、立ち上がりながらこの体の記憶を遡る。
この世界には聖女という存在もいるんだな。
人々や自然を癒せるだなんて、まるでおとぎ話の中みたい。
そう思っているうちに、聖女と話している記憶を見つけた。
聖女はとても可愛らしく小柄な女の子だ。
この体の人が...イルが侮辱し、陰湿な嫌がらせをしていたという記憶は特に見つからない。
思い出せないだけかもしれない可能性もあるが、記憶を遡る限りイルは聖女を好意的に思っているように感じる。
「改めて申し上げますが殿下、私にはまったく心当たりがございません。」
「しらばっくれるな!神殿のものから情報は得ているんだ。」
神殿からの情報と聞くと、周りの反応が一変した。
「神殿からの情報だなんて、相当なことをしたんだな。」
「火のないところに煙は立たないって言うじゃない。案外裏での本性は分からないものね。」
周囲の人達のヒソヒソとした声や、冷ややかな目線が刺さる。
手のひら返しもいいところだ。
「聖女への冒涜はこの国では大罪になることは知っているだろう。」
殿下が勝ち誇ったように笑っている。
神殿は神聖なる場所で、神殿に属するものはいかなる場合でも己を偽ることは許させれない。
私がいくらしていないと訴えても、周りは神殿の意見を信じるしかない。
この周りの空気じゃ、どんな弁明をしても信じてくれなさそう。
めんどくさいな...。
あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い致します。




