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声が聞こえた方を振り返る。
この人が記憶を遡るかぎり、あまり仲良くない婚約者か。
声のかけられ方からしても、こちらに対してどのように思っているのか伝わってくる。
会社にこんな上司いたな。
露骨に思っていることが態度に出るから、面倒だったんだよな。
そんなことを考えながらも、この体が覚えている挨拶をする。
「トルーネ殿下、ご機嫌麗しゅうございます。」
挨拶の返事も特になく、怒っていますといったような足音を立たせながら近づいていくる。
「お前は先ほどからどこに行っていたんだ。おかげで恥をかいたではないか。」
「何のことでしょうか。」
記憶を遡っても思い当たる節がなく聞き返す。
「婚約者であれば、私の側で補佐をするのが役目だろう。お前のせいで賓客への挨拶ができず笑われ、父には呆れられたんだぞ。」
いや、何を言っているんだこの人は。
自分が覚える必要があったものを怠り人任せにして、挙句に人任せが上手くいかなくて上から目線で攻め立ててくるだなんて、一体全体何様なんだ。
今までの記憶を遡ってみると確かに、こういった場では補佐のような役割をしていたらしい。
だが本来覚えておくべきは私ではないのでは。
「ご自分の不手際を私に押し付ける前に、まずご自分の頭に用件を覚えさせたらどうですか?殿下の頭はそれすら難しいおつむなんでしょうか。」
私のことではないけれど、腹が立ち言い返してしまう。
イルに言い返されたことなんて無かったからか驚いた表情を見せたのも束の間、わなわなと肩が震え、握りしめた拳が白くなっている。
しまった、お坊ちゃん中のお坊ちゃんだからこんなこと言われたことないのかもしれない。
「お前は誰にも向かってそんな口の聞き方をしているんだ。」
怒鳴られると同時に力任せに肩を掴まれ、鈍い痛みが走る。
「離してくださいっ。」
振り解こうとするが男性の力に勝てるはずはなくら会場へと引きずられていく。
私たちの姿を見て周りが何事かとざわめく。
中央にあるシャンデリアの下まで来ると、乱暴に放り出され尻餅をついた。
立ち上がる間もなくトルーネ殿下が大きく息を吸い口を開く。
「イル・コロナリアとの婚約破棄をここに宣言する。そして私の婚約者の立場を利用し、聖女リズを幾度となく侮辱し、陰湿な嫌がらせを加えた罪をここで認めてもらおうではないか!」
...はい?
2025年は初めましての年でした。
拙い文章ではありますが、あなたが読んでくれたことがとても嬉しかったです。
それでは良いお年をお迎えください。




