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エンシェント・ワーズ ~タンポポの綿毛たち~  作者: 角山亜衣


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30/35

30.夏といえば無人島!?

『あはははははーーー!!』


 バシャバシャバシャ☆


『まてまてーーっ!』


 バッシャ☆ バッシャ☆


『きゃーーはははーーっ!』


 バシャバシャバシャ☆


「はー……元気ですねー、みんな、楽しそうー」


「あ~? そうだなぁ~。エリーシャ先生も混ざっておいでよ」


 木陰に横たわるレオナルド先生は、麦わら帽子をひょいっとズラして、浜辺を走り回る生徒たちを一瞥した。


「そうじゃなくって……これから、どうするつもりなんですかーーーっ!!!」


 あたし達が今、どこで何をしているのかというと──事の発端は、数時間前にさかのぼります。




◇ ◇ ◇




「夏ですよ! 熱い夏! 夏といえば海!! 海水浴の季節ですよーーっ!!」


 ここ、ウェスタニアは港町ということもあって、すぐ近くに海水浴に適した浜辺もあったりします。


「みんなで海水浴に行きたいというタンポポの綿毛たちと共に、夏を満喫しましょうーーっ!!」


 窓際でうちわを扇ぐレオナルド先生は、いつも通り面倒くさそうに舌打ちをしています。


「(チッ)お前、何だってそんなテンション高ぇんだよ。暑さでやられたのかー?」


「何言ってんですか! 夏ですよ! 海が呼んでますよ! あ、そうだ。浜辺にはグラマラスな美女もいっぱいですよぉ~。先生は猫耳ビキニちゃんとかがお好みですかぁ~♡」


「ばっ、や、やめろよ! それ言うんじゃねー……はぁー……まぁ、ちょっとくらい付き合ってやるよ」


 ゲッツです☆


 そうして、あたしとタンポポの綿毛たちとレオナルド先生は、ウェスタニア海浜公園へとやってきたのですが──


「はわわ、すっごい人ですねぇ」


 背の低いマリルちゃんからは、もはや人の波しか見えていないことでしょう。


「こりゃー落ち着かねぇなぁ」

「座れそうな場所、無いね」

「波打ち際なんか、人をかき分けなきゃ海に入れそうにねぇぞ」

「先生ー、せっかく付いてきてもらったのに、これじゃー」


 残念がる生徒たち……。あたしだって泳ぎたかったわよぉ。この日のために、水着だって新調したんだから。


 ──あ、そうだ!


「レオナルド先生、あの塔の上から見た無人島って、アカデミーの所有なんですよね?」


「あー、あそこか。今もそのはずだが……お前、まさか」


 そうして、ベイルさんに大き目のトランク付きのイカダと、キャンプ道具一式を用意してもらって、無人島へと漕ぎ出しました。


「なんだかスゲー重たいな」「どんだけ荷物詰め込んできたんだよ」

「食事はフーリオシェフが腕を揮ってくれるっていうから、主に食材を詰め込んできたわよ!」

「料理は任せるでござるよ」

「きゃーっすっごい波ーっ」

「アル! デュロス! もっと速く! 漕いで漕いで!!」

「ひぃぃいいい!!」「ぬぉぉおおおりゃぁぁああああ!!!」


 ほどなくして、無事に上陸──。


「すっげー!」「誰もいなーい」「完全に貸し切り状態だ!」

「着てよかったー!」

「なんだか、こういうのも冒険してるみたいで、最っ高だなー!!」

「さっそく着替えてくるっ!」


 みんな、大はしゃぎ。よかった♪


「ぁ、みんな、遊ぶ前に荷物を下ろして、キャンプ地を設営しちゃいましょう」


「「「おー!」」」


 ババンっ☆


 突然、イカダの中央に設置していた大型トランクのフタが弾け飛んだ。

 そしてその中から現れたのは──


「え」「は?」「なんでお前らが」


「くっくっくっ 貴様らだけで、無人島サバイバルに出ると聞いて、こうして忍んできたのだよ」


 皇翼のガガンボのリオネルくん!?


「お前、ガガンボのリオネルかー! 他の連中も!」


「無人島サバイバルって……」


「ぁ、確かに、ベイルさんに道具借りる時に言ったわ。まさか、あそこからトランクの中に隠れてたの!?ってか、キャンプ道具は! 食材は!?」


 皇翼のガガンボたちが忍んでいたコンテナの中身は──空っぽだった……。


「マリルちゃんが氷漬けにしてくれた食材も全部置いてきちゃったのー!?」


「サバイバルですからね、食材は現地調達が基本でしょ?」


 くっ、何を気取って言ってるのよ、この貴族のボンボンは……。


「わたくしと、フーリオ様が手を組めば、どんな食材でも高級料理に仕上げてみせますわ!」


 あ、えーっと、誰だっけ……フィオナちゃんだ! 確かに料理対決のは美味しかったけど、ここには調味料は無いのよ!? 海水から塩取るのだって、そんなすぐにできるかどうか……。


「とりあえず、着替えてひと泳ぎしよやー! 男の人ら、のぞかんといてなー」


 そう言って、クラリスちゃんは女子たちを連れて岩場の陰へ行ってしまった。

 男子たちは構わずその場でポイポイ着替え始める……。


 あ、あたしも着替えてこよっと──。




◇ ◇ ◇




「ジャジャーン! 男たちー! どうや? わたしらの水着姿わー」


 クラリスちゃんの一言で、ガガンボとタンポポの女子たちがずらりと並ぶと、そこには眩しすぎる水着軍団の姿が!


 セパレートのフリル付き、王道のワンピース、露出控えめなパレオ付き……個性豊かな水着姿が、白い砂浜と真っ青な海に映えて、まるで──


「ビーチの精霊たち……」


 と、誰かがつぶやいた気がする。


「エリちゃん先生の水着! めっちゃくちゃかわいいですぅ!」

「ぇ……あ、ありがとう……っ マリルちゃんのフリル付きもすっごく可愛いよ♡」


「ふっ……我が肉体の均整美に見惚れがよい、タンポポの諸君!」


 ドヤ顔でポーズを決めるギュスターヴくんに、数名の女子が引いている。


「お前さ、言うだけあって筋肉はスゲーけど、ブーメランパンツって……」


 ワーキャーと盛り上がる浜辺で、ふと、何かが足りない気がした。


 あ、レオナルド先生も水着に着替えたんだ。割と普通目の海水パンツ。引き締まった筋肉に目がイってしまう。


「あれ~? イカダ、どこいったんだ?」


「あ! イカダ! それだ!」


 何か足りないと思ったのは、さっきまでココにあったイカダだ!


「あの、ずーっと向こうを漂ってるのが、私たちが乗ってきたイカダじゃないですか?」


 マリルちゃん、冷静に沖を眺めてるけど、状況わかってるのかしら!?


「どどどど、どぉーすんのよーーっ! か、帰れないじゃない!?」


「うーん、誰も見張ってなかったからなー。いいかーお前らー。いい機会だから、よーく覚えておくんだ。イカダは、係留しとかないと、流されてっちまうんだ」


「「「はい! 先生!」」」


 ………………え、それだけ?


「とりあえず、遊ぼうぜー!」「うぉー!」


 バシャバシャバシャ☆

 ・

 ・

 ・


 ……そして、冒頭のシーンである。


「あんまり余裕かましてるから、ひょっとしたら、あのイカダ、戻ってくるのかなーって期待してたのに……もう見えなくなっちゃったじゃないですかー!」


 あたしの怒鳴り声に、波の音が、ちょっとだけ申し訳なさそうに重なる。


 木陰のレオナルド先生は、帽子を顔にかぶせたまま、やれやれとため息をついた。


「それならそれでさ、普通にサバイバルすりゃいいだろ。あいつらだって、もう素人じゃねぇ~んだから」


 普通にサバイバルって言ったって……


 アルフレッドくんとデュロスくんは、手製のヤリを作って魚を獲ろうとしていた。

 ガガンボの男子もそれに続いている。


 セルジュくんは魔法で焚火を用意して、マリルちゃんは魔法で鍋に水を満たしている。


 そっか。火も飲み水も問題ないんだ……。

 あの鍋、どうしたんだろ?


 フィオナちゃんが、バックパックから包丁とまな板を取り出して、フーリオくんに渡している。


 ……なるほど。調理道具は持ち歩いてるのね、あの子。


『獲ったぞー!』


 男子の声が響いた。


 シルフィちゃん、クラリスちゃん、アランくん、コンラッドくんの四人は、茂みの方から大きな葉っぱや、柔らかそうな木の芽を摘んで戻ってきた。


 みんな、遊んでるだけじゃなくって、ちゃんとサバイバルしてるんだ──。


 お昼は過ぎていたけど、みんなで魚料理を頂きました。


 流石は、フーリオくんとフィオナちゃんコンピ。

 この状況でも美味しい料理を作ってくれました。


 あたしだけ、あたふたしちゃってて、何も手伝えてない気がする……。


 いや! それを言うなら、レオナルド先生だって! 日陰で寝てただけじゃない!?


 だいたい、この島からどうやって帰ればいいのよーー!!

読んで頂き、ありがとうございます!

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