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ありふれたゾンビのおっぱいを揉むのは犯罪ですか?

「なぁお前さおっぱいって触ったことある?」


「愚問だなぁ、底抜けにくだらない」


 大きな欠伸混じりで語尾が定まっていなかった。


「お前さぁ、いいかげんちりとてちんの草々の真似やめろよ」


「ちげぇよ、小草若だバカ」


「はぁバカはてめぇだ、小草若はそーこぬーけーにーだろ」


「うるさい」


 読みかけの本に視線を移すとつらつらとページをめくり始める。


「ふん、お前なんか知るか。なぁ御手洗お前はどうだ? おっぱい触ったことある?」


 相手にされなかったことに少しショックを受けしょぼくれた瞳で御手洗友吾を睨んで同意を求めてくる。


「お前らよくこんな状況でそんな話ができるな」


 先ほどからバタバタと頭を動かしている女性のゾンビを全力で羽交い絞めにして抑えている御手洗は怒りに満ちていた。


「鬼の形相で睨むなよ……だってなぁ(すめらぎ)、玄関前でか弱き女性がぽろりしてんだもんな」


「バカ言うな、お前が拾ってきたんだろ」


「はぁてめぇだって最初はノリノリでだったじゃないか、少々肉体が腐ってようがおっぱいに罪はないって言ってただろ。それに匂いが気になるからってファブリーズも振りかけておいて今更何言ってやがる」


「好奇心に勝る恐怖心はなしということだよ」


 皇慶が目にかかった前髪をかきあげながら即答する。ようやく口調がはっきりしてきたようで、読書にも身が入っているように見える。しかしそんなことはどうだってよかった。僕は眠気眼で部屋を訪れたらいきなり変なゾンビを押し付けられて、未だに緊張感を張り巡らせながらこうやってデットorライフの瀬戸際で力を緩められずにいる。その危機感がこの二人には全く伝わってないのが本当に嘆かわしい。


「おい菱田、てめえ後で投げ飛ばしてやるからな」


 野球帽を被りその上にスポーツサングラスをかけた青年、菱田輝彦にしっかりと殺意を向ける。


「あぁはいはいわろうございました、だからさあとで俺の部屋にあるサボテンを300円で売ってやるからゆるしてちょ」


 菱田は会話の脈力を無視したような言葉を能天気に言い放ち、「俺はお前からもらった300円でのり弁を食うんだ」とケラケラ笑う。


 御手洗の周りにはそんなバカばかりだった。



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