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8話:暗殺未遂

「やあやあ、魔王さん今は国からの攻めが来ないらしいっすね。何よりラプラスが手痛いダメージを負っているそうで」


 俺のもとに年は五十を越えているが四天王に君臨している男がやってきた。彼は終始、不敵に笑っていて何を考えているのか読み取れない。この組織一自由人のあいつを従えるのは骨が折れる。


「それならこっちから攻めてみましょうよ」


 彼の名はニコライと言い、元々国の兵士だったが訳あって俺の味方になっている。そして、彼の国王のこと恨んでいるらしくことあるごとに戦争を提案してくる。しかし、普段の生活は国内でしていると言った不思議な奴だ。


「しかし、こちらも万全と言える状況でもない。ここは様子を見て」


「別に俺は大丈夫だが」


 これまた四天王の一角ルードがそんなことを言ってきた。彼の能力は"暴発"体内に沸き起こるエネルギーが桁違いで定期的に発散しないと暴発して暴れ散らすことからそう言われている。この組織で一番の脳筋だ。力勝負で勝てる奴なんかいないのではないか。


「私もいつでも良いですよ」


 能力"感覚リンク"のパトラも賛成の意を示した。


 俺がこの組織で抱える大きな問題がこれだ。皆同じ組織に属しているのに目的が少しずつ違う。だから一枚岩ではなくて、組織の方向性をそろえるのが難しい。それに戦闘狂が多すぎて、すぐに戦いを仕掛けようとしている。それにいちいち従っていたら、すぐに崩壊してしまう。


 俺とラプラスがカナタにボコボコにされて以降、その傾向が増した。自分で言うことではないが俺のカリスマ性で成り立っていたのが、背後にいたラプラスがなくなったり、敗北を喫したりしたため崩れかけている。


「そんな簡単な問題でもないんだ。お前からも言ってくれ、バッカス」


 バッカスは四天王のうち唯一戦闘要員ではない。能力の研究者としてこの組織の中枢を担ってくれている。


「まあ私は実験さえできれば良いので、どちらでも」


 俺は思わず頭を抱える。このままでは敗北して再起不能になってしまう。この組織には軍師が存在しないのがここにきて響いてくるとは……。


「じゃあ俺は個別行動で仕掛ける」


 ニコライが席を立って隠れ家から出て行った。いつもふらっと現れて消える神出鬼没な奴だ。


 あいつはこうなったら制御不能だ。俺がサポートを入れてあげなければ。俺は影に潜ってあいつらの後を追った。



「国王これでさよならです」


 不審者が王室に侵入してきて斬りかかった。男は気配を消すことに長けており、部屋に入るまで気がつかなかった。不覚だった。もしかしたら、それ関係の能力かもしれない。


「おっ、おい、カナタあいつは何者だ」


 間一髪で刀を自分の体に刺されることで護衛に成功した。肩からとめどめもなく血が流れる。国王は非常に動揺してらっしゃる。僕は国王を抱えて人目のつく場所まで退避した。


「皆さん、国王を逃がして下さい。僕は不審者と交戦しますので離れて下さい」


 血を流している自分を見て宮殿の関係者は非常事態を認識して、すぐに避難させてくれた。


「あーあ、普通ならあれで殺せたんだが台無しだよ」


 男は作戦が失敗したというのに冷静で不気味だった。僕はとりあえず能力で止血をして彼からの攻撃を待つ。そして、全員が去るのを見計らって"魂の鳥かご”を発動させる。


「じゃあお前を殺すか」


 彼をニヤニヤ笑いながら刀を振るってがその動きには無駄がない。油断をしていると命を落としかねない。しかし、男は能力の類を発動した気配がない。それのお陰で助かっているとも言えるが不気味な雰囲気を漂わせている。


「もう諦めろ」


 着々と追い詰めていっているのに、一向に男は諦める気配はない。ここが無人で希望による身体強化がないとはいえ、能力を使わない相手に負けるほど弱くはない。


「ほれ、かすり傷。今油断しただろ、そういう奴の裏をかくのが楽しいんだよ」


 相手は満身創痍なのに攻撃を続けてきて、少しずつ疲労が溜まっていく。決めてを与えない戦いかたが鬱陶しい。


「ふぅん、お前戦闘経験が浅いのか、だから相手を殺すことを心のどこかで躊躇っている。ただの優等生に負けるほど落ちぶれてはいない」


 彼はまもなく死ぬというのに笑い続けていた。恐怖が感じられない。たとえはったりだとしても、それが不気味だった。


 最後は彼が僕に勝負をつけようとして隙を晒してきたことにあった。僕はしっかりと腹部に剣を突き刺してとどめをさした。結局、彼にも焦りがあったのだ僕はそれに安心した。


「俺の名前はニコライ、魔王軍四天王だ。だから負けない」


 彼の最期の言葉はそれだった。言った一秒後には息を引き取っていた。魔王軍はやはり強かった。だから絶対倒さねば。


 僕は国王に護衛に戻るべくニコライに背を向けた。背後でニコライがニヤニヤ笑った気がした。

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