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6話:再会

 教員室を出た俺は暇を持て余していた。この学校には一階級ごとに一クラスしか存在しない。階級の試験を合格することで昇級することが出来て、計三つの試験をクリアすることで晴れて卒業となる。俺が担当しているのは最上級の階級だから、本日の授業はもうない。


 そのため、俺は散策して学校の施設を巡っていた。学問の分野でも最前線を走っているこの学校の施設も勿論先進的だった。


 学内で最も面積を取っているのが研究室だ。研究室に顔を出してみるとそこでは能力の起源について熱心に研究されていた。


「おお、久しぶりです、ラプラス様。何故こんなところに」


 そこではフロイトが他の研究員を率いて、実験を進めていた。医者以外にも学者としても活躍しているなんて頭が上がらない。


「いや、興味本位で見学しに来ただけです。気にしないで下さい」


 高尚な空気感に気圧されてかしこまった口調になってしまう。辺りには、何に使用するのか分からないメカメカしい装置が設置されていた。


「あっそうだ。今、能力の起源が幾つかについて研究していて、複数能力持ちの意見が欲しいと思っていたところなんです。じゃあリン君、アンケートを頼む」


 そこで聞き覚えのある名前が呼ばれた。俺が英雄として名を馳せる前からの知り合いの名だった。

「久しぶり、ラプラス。最近の調子はどう」


 昔と変わらない明るい声がとても懐かしい。彼女は俺の一つ上でいつも俺のことをリードする程活発な女の子だった。当時、幼馴染の死で気分が落ち込んでいた俺のことを何度も励ましてくれたのは今でも良く覚えている。


「まあ、ぼちぼちだな」


「いや~、驚いたよ。私が教師になるために勉強しているうちに君は人気者になっちゃって、そしたら今度はうちの学校に来るなんて」


 リンは思いを馳せながら昔話を始めた。俺達の出会いは途方に暮れていた俺を彼女ら一行が拾ってくれたことに始まる。しかし、子供だった俺達を束ねていた大人の死によって別れることになった。


 この大人の名はアルベルトと言い、俺の師匠で今でも尊敬している。能力は逃げに特化したもので戦闘は大して強くはなかったのに、その生き様はかっこ良かった。面倒なことに首を突っ込まずにはいられないおせっかいな性格だったが、最後の最後でそれが仇となった。結局、逃げなかったせいで負けた。


「お前も教師になれていたようで安心したよ」


 過去のことを思い出しても暗くなると思った俺は話を変えた。リンは昔から誰かに教えるのが得意でいつも俺にアルベルトら一行について、説明してくれた。


「教師にはなれなかったの……。だって私の能力は"包帯を裾から生み出す"でパッとしないし」


 しばし気まずい空気が流れた。なんてフォローを入れたら良いのか分からなかった。


「い、いや別に学者が不満って訳じゃないよ」


 彼女は顔の前で手を振って、明るく振舞った。俺は何も言葉を返せなかった。


「よし、そろそろ作業に入らないと怒られちゃうから始めるね」


 まずリンはその研究の概略を説明した。


 元来能力は"全知全能"が誕生して全ての能力がそれの派生だと考えられていた。しかし、近年では何故"全知全能"の能力者は死亡したのか、存在することが禁忌の"不死"、"滅亡"、"上限解放"といった能力があるのかなど疑問が生まれている。そこで五大元素と似たように複数の要素の混ざり合いによって能力が生まれたという説が支持されているらしい。


「じゃあ私達は能力は常時発動系、付与系、生成系に分けられると考えているんだけど例外はある?」


「多分生成するタイプにももっと分類があると思う。例えば、その生成されたものに本人の感覚の有無とか。あとフィールド生成系の能力は空間に付与してるとも言えるし、本人の常時発動に空間が影響を受けているとも言えるし曖昧だ。それ以外は使っている本人としても違和感はない」


「なるほど、興味深い視点だね。じゃあ三つの分類は能力を使っている時にどう違う?」


「常時発動は呼吸するのに似ていて全身で無意識にっていう感じで、付与系は例えば手にエネルギーを集める感覚、そして生成系は頭で念じてって……。う~ん、良く表せないけどざっとこんな感じだ」


「やっぱ能力複数持ちは貴重な人材だ。質問はこれで終了。ここの研究所には複数持ちなんていないし頭脳重視だから、新鮮な情報だったよ。また暇だったら遊びにおいで」


 軽く見学するつもりだったが、随分と込み入った話も聞けて実りがあった。もし、能力者の死後能力が空気中に浮遊したりしているのなら、能力の回収の効率も上がる。そうだとしたら、あの戦場には数百の能力が散乱しているに違いない。

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