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4話:最弱への逆戻り

「ラプラス、現地での状況を話してもらおうか」


 能力の大半を失った愚かで哀れな英雄の名が呼ばれた。もう言い訳する元気も湧かない。俺は国王に呼び出されて、前回の戦争の成果の報告という名目のもと公開処刑をくらっていた。


「はい、魔王は前回の奇襲で与えた傷が完治しており、裏をかかれて惨敗という結果です」


「まさか援軍のカナタが危機を感じ取っていち早く到着した時にはお前以外が全滅だとはな」


 国王は非常に怒り心頭で俺のこと責めた。周囲の護衛の兵も冷ややかな視線を送ってくる。ここにいる全員は俺の敵だ。コウモリだって最後は鳥と動物に見捨てられた。自業自得だ。


「それにカナタもだ。お前とラプラスが共闘することで魔王を倒せると思っていたのに二人してこのざまとは」


「すみません。実力不足が招いた結果です。精進します」


 カナタは別に悪くないのに平謝りしている。もし俺の人気が地に落ちていたら、きっと真実を語るだろう。しかし、今そうしたら嘘を吹聴したことになる。まあ、人気がなかったら、真っ先に斬首されるだろうが。


「ただ今回の敗因はお前らに頼り過ぎたこちらの落ち度もある。だから、ラプラスお前を能力者育成学校の教師として採用して、一時的に戦線を離脱させる。そうなんだろ、カナタ」


 国王はカナタの方に視線を送って、カナタは首肯する。


「ラプラス様は先の戦闘で手痛い傷を負っていて、万全の体調を戻す必要があります」


 カナタは背筋を伸ばしてハキハキと述べた。


「異論はあるか」


 国王の考えに反論する要素などどこにもない。俺は無言で肯定した。



「この後、あの療養所に戻ってください」


 俺が大広間を出る時にカナタが耳打ちしてきた。


 そして、今俺はあの時の状況をカナタを目の前に説明することになっていた。


「まず、貴方を教師に推薦したのは私ですが、決して生徒の能力を奪うことを肯定している訳ではありません。あの学校は私が卒業した学校です。私の知り合いや恩師に貴方のことを警戒させているということは留意してください」


「ああ、分かった、分かった」


 俺は気だるそうに答える。人の目を欺くことは俺の得意分野だ。


「はぁ、本当に分かっているんですか。それで何で魔王と協力なんかを」


「利害の一致だ。あいつの四天王のうちに"負の感情をエネルギーに変える"能力を持ってる奴がいてこっちは能力が手に入る。win winの関係だ」


「魔王軍はそのエネルギーで何を」


「あぁ、お前はまだ若いから知らないのか。あいつらの目的は弱者の救済だ。集めたエネルギーで能力の研究をして恵まれない奴らの能力を調整することだ」


「えっ、それじゃあ何故悪者に」


「国の意見では能力の研究者が悪意を持った人間だったら……」


「世界が崩壊する」


「ただこの国での研究も進んでいないことから、本音別だろうな」


「例えば天然の能力を人工的な能力に越されたら損するのは実力者だ。」


 カナタは無言で聞き入っている。


「そういえば今国で権威のある奴のほとんどは実力者だったなぁ。まあこれは俺の想像の話だ忘れてくれ」


 カナタは頭の中で何が正しいのか思案している。作戦通り俺の動機の話題を逸らすことに成功した。俺にとってこんな平等なんて話は正直興味がない。あいつとの関係は本当に利害の一致でしかない。


 また一から頑張ることは面倒だが、折角もう一度お人好しからチャンスを貰ったんだ。頑張るしかない。

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