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SF火星の微生物化石(ラマン分光法によるシリカ鉱床の化学分析描写)②


「化学分析を開始。ラマン分光法でサンプルをスキャンしてください。」

火星探査ロボット「フィーニクス」に搭載された高度なラマン分光計が静かに起動した。サンプルホルダーには、火山活動によって生成されたシリカ鉱物の小片が固定されていた。ラマン分光計のレーザーが精密に焦点を合わせてサンプル表面に照射され、その瞬間、極小のフォーカススポットがシリカ層の微細な構造に輝きを与えた。


ラマン分光法は、物質にレーザー光を当てて分子の振動状態を調べ、その化学組成を特定する技術である。サンプルに照射されたレーザー光は、シリカ結晶に含まれる原子間の振動エネルギーに影響を受け、その一部が散乱される。この散乱光の周波数シフトを分析することで、分子の種類や結合状態を詳細に解析することができる。


「レーザー照射完了。ラマン散乱光を検出します。」

検出器が散乱光を捉え、分光計はそのスペクトルを解析し始めた。ディスプレイには、シリカ特有の特徴的なピークが現れ、その背後にはさらに興味深いピークが重なっていた。このピークは、有機物の存在を示すものであった。特に、炭素を含む化合物に由来するC-H結合の振動モードが明確に観測された。


「解析結果を表示します。」

解析結果は、サンプル中に微細な炭素ベースの有機物が存在することを示していた。さらに詳細な解析により、これらの有機物が環式炭化水素であることが確認された。ラマン散乱スペクトルの複雑な波形は、シリカに閉じ込められた微生物の細胞壁や有機物の残骸を反映していた。


「さらに、分子のスペクトルを詳細に解析します。」

フィーニクスのラマン分光計は、スペクトルのピーク位置と強度を高精度で解析し、有機物の特定に必要な化学結合の情報を得た。スペクトルには、炭素-炭素結合(C-C)や炭素-酸素結合(C=O)などの振動モードがはっきりと現れており、それが生物由来の有機物であることを示していた。


「炭素-炭素結合と炭素-酸素結合の振動モードを確認。生物由来の可能性があります。」

この高度な解析によって、シリカ堆積物内に保存された微細な微生物の形態が明らかになりつつあった。これにより、火星にかつて生命が存在した可能性を強く示唆する証拠が得られたのである。


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