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第90話 頼み綱

「そんな話……聞いたこともない。冗談?」


 俺たちは放課後、すぐさまエヴァの元を訪れた。


 そして、簡単に経緯と事情を説明してからの、このバッサリと切り捨てる、この一言である。


 頼み綱にしていたエヴァに諦めて貰うわけにはいかない。俺は図々しく諦め悪く、エヴァに詰め寄る。

 

「ホントだって、使えたんだ!」


「う〜ん……。ちょっと待って」


 エヴァは綺麗に整頓されていた研究室内を、バダバタと崩してまわる。そして、書類が纏められた棚から、一つの紙を取り出した。


「聞いただけじゃ、解らないことも多いし……。式を模写して見せてよ」


 そう言って、エヴァは魔術式用の写し紙を渡してくれた。 


 渡されたこの写し紙は、脳内に想像した式を映し出してくれる非常に便利な代物だ。主に魔術の校正につかったり、新しい魔術を編みだす時に使う。


「わかった……ちょっと待ってくれ」


 俺は言われた通りに、さっき使った式を想像し模写する。模写された式は、纏まりが悪く、綺麗な円ではなく、歪な形をとっていた。


「ほら、これでいいか?」


「うん。貸して」


 エヴァは式の写しを目で隅々まで見て、考え込む。そして納得したのか、難しい顔をやめた。


「わかった。これは違う……。ラヴィス兄弟のものとは別物」


「そ、そうだよな!」


 そう言って貰って、深く安堵した自分がいる。でも、そうだとしたら、この式は一体なんだというのだろう 。


「エヴァ、あなた。アイツらの式構造を知っていたの?」


「いえ観たことはあるけど、構造までは知らない。でも、違うとは断言できる。だって、無駄が多すぎるから」


「どういうこと?」


「この式は云うならば、同じ結果を導くために、持ち合わせた知識だけで無理やり式を構築したって感じね。

 だから色々と無駄も多いし、構造も繋ぎも甘いから、式全体が不安定で脆い……」

 

「まって。そんなこと……即興で式を創るなんて本当に可能なの?」


「少なくとも、私には無理……。見ただけじゃ、結果をそこまで具体的に捉えれないから。

 造っている過程で綻びが出て、まず発動すらしないんじゃないかな……」


「じゃあじゃあ! それを可能にした、ユウはすごいってことだよね!」


「う〜ん……良く魔術を観察できていて、確かに凄いかもしれない。でも、厳しいこと言うことになるけど、この程度の模倣なら二度やらない方が懸命じゃないかな」


「えっ! どうして?」


「上級科を受けたユウやエリカは、十分理解していると思うけど、安定した魔術を一つ作るのには膨大な時間を要するの。


 それでいて、やっとの想いで創った試作魔術も失敗するなんて、ザラにある。最悪のケースでは魔術が暴走して命を落とすことも……。  

 まぁ慎重に検討していけば、命まで関わる例は極稀だけど……。


 それでもね、ユウがやっていることは、その慎重に進めていくべきな工程を省いて、いきなり本番で使ってるようなもの。それはあまりに危険で、命知らずな行為……」


「ごめんなさい、考えなしに発言しちゃ、駄目だったね……」


「気にすんな。俺も一瞬、自分には才能があるかもとか勘違いしかけた。

 でも、そうだよな…………。

 わかった、もう止めておく。

 ありがとうな、エヴァ。そこまでハッキリと言ってくれて、とても助かるよ」


「当然よ。こんな事で居なくなられたら、困るからね」


 そうだ。この模倣は危険なんだ。俺に出来たということは、きっと俺以外にも同様に『見える』人は沢山いるんだ。


 でも可能とか不可能の以前に、その危険性から誰もやらないんだ。常識という正常なストッパーが働いているから。

 

 転生した俺にはその常識がなかったんだ。 ユウは持っていたのだから、忘れていたと言った方が正しいか。


 ……魔術師としての常識が欠如していた俺は、あの日できる気がしたんだ。


 ラヴィス兄と戦った時、俺には魔術の発動がよく視えていた。元の式構造は知らない。ただ現象は、それの在り方は理解して見えていたのだ。


 だから、あとは結果まで導くだけ、過程が歪な形であろうと、中身を組み込めばいいと思った自分がいた。いや俺と同じく、視えていたユウもずっと前から出来ると確信していた。脳裏に構想もしていた。でも、やらなかったんだ。


 俺はその考えに危険性も考慮せずに、便乗しただけだったのだ。ユウが考えていた偽証魔術に。


「まぁでも、この写してもらった魔術式もここまで出来てるなら。あと少し見直しせば、実用的レベルになると思う。だから、その協力なら惜しみなく手伝ってあげる」


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