第85話 怪我
レースも終盤に差し迫る頃。
「あっ……ユウが戻ってきましたよ」
ユウはエリカの無事を確認した後、スタート地点の観戦所まで戻ってきていた。
「エリッち、どうだったすか?」
「いやそれが……まだ走れるって、レースを続行してます」
「そうなんすか!?」
「えっ? 待ってユウ。エリカはあの怪我で今も走ってるの?」
「あぁ……」
「嘘でしょ? 止めなかったの!?」
「当然とめたさ! でも、まだ走りたいって」
「バカッ!! そんなこと言ってる場合じゃない。今からでも、途中棄権させないと!」
「やっぱり……そうだよな。わかった、ちょっと行ってー」
慌てて行動を起こそうとする二人をブレンダはなだめる。
「まぁまぁ二人とも待つんだ。
私達(魔人)はね。そんなに軟じゃない。あの程度の傷ならすぐに治る。だから、あと一周ぐらいならきっと問題ないよ」
「そ、そうなんですか?」
ユウは不安そうに他の先輩達に問いかけた。
「あぁ、どうということはないだろ」
「そうすっね。自分は怪我より魔術を使い過ぎることの方が心配すね」
「そうですか……」
「それにね。怪我を負っても尚、走る理由があったなら、友として見守ってあげるべきなんじゃないのか?」
「……わかりました。先輩方がそう言うなら従います。先輩の方が詳しいと思いますので……」
エヴァはエリカと同じ魔人であるブレンダ達の意見を尊重したが、釈然としてないと隠すことなく態度で示したのだった。
「うん、その方がいいだろう……」




