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第82話 本選

その後、予選組が全て終わり。


本選への出場者が発表された。


2位以内だったマナとエリカの二人はメンバーに入っており、本選参加にあたっての再受付と説明のため、大会本部の招集に行っていた。


そして、本選が始まる少し前。

 

観戦組の俺たちのところに、ニナ先輩が案内する形で、遅れてやって来た人物が二人いた。


「はやくしてくださいっす! こっちすよ、特等席っすから!」


「おい、引っ張るなよ……」

 

一人はニナ先輩に手を引っ張られて、嫌な顔をしているレオン先輩。


「あっ、レオン先輩こんにちわ。それと……えっと……」


そしてレオン先輩と一緒にきたのは、俺と同じか高いぐらいの身長の筋肉質な女性であった。


普段からよく鍛えているのが、パツンパツンに伸ばされた制服からよくわかる。腕相撲をしたら余裕で負けるだろう。

でも分厚く重たい筋肉というよりは細く引き締まった、しなやかな筋肉だ。


総合的な見た目の印象は、大人びていて頼れる人といった感じ……。


「そうか……お前は初対面だったな。

こちらは、うちの会長だ」


なるほど、この人が前に言っていた魔術銃が趣味の魔導具研の会長……。

少し気になったのは、彼女もまた赤いチョーカーを首付けていることだ。今更だけど魔導具研は全員が魔人で構成されているのだろう。研究会の目的も魔人が使える魔導具だと言っていたし、可能性は高いと思う。


「はじめまして、私はブレンダだ。よろしく」


 ブレンダさんは大きな手を俺の前に出し、握手を求めてきた。


 まぁ、これを拒否する理由は特にないよな。

 

「ユウ オルティスです。よろしくお願いします」


 ん? 握り返したブレンダさんの掌にはゴツゴツと硬い豆やタコがあった。鍛えてる時に出来たものだろうか……。それとも前にレオンさんに聞いたあれが理由かな?


「聞いた話ですと、たしか魔術銃がお好きなんですよね?」


俺は軽い気持ちで話題を振ったが、ブレンダさんは何故だが険しく顔を歪めた。何か不味いことを言ったのかもしれない。


「えぇ、そうだけど……レオン話したのか?」


「なんだ問題あったか?」


「う〜ん。まぁ……いいけど。できれば、あまりおおっぴらにしたくないんだ」


「そんなの初耳だぞ、なんでだ?」


「いやだってな、女で銃器を集めてるなんて、変わってないか?」


「別に、そんなことないだろ」


 銃は確かに男っぽいイメージを持ちやすいかもしれないが、そんなのは古い価値観だろう。それに女性のほうが精密射撃に向いていると聴いたこともある。


「自分も全然おかしくないと思います。ブレンダさん、とても格好いいですし、似合ってますよ」

 

「えっ? ほんと?」


「はい」


「そうなんだ、おかしくないのか。

 いやね…………両親にはどうせなら、もっと可愛いものを収集しろなんて、口を酸っぱくして言われてるから、なかなか理解されづらい趣味だと思っていたよ。でも、違ったんだね」


「あぁ、ふつうだ……」 


「そう言ってもらえて安心したよ。二人とも、ありがとうね。

 ……それはそうとユウ、私が不在のあいだ、ニナやコイツが色々と迷惑かけたんじゃないか? コイツはこの通り愛想がないし、ニナは無鉄砲なところがあるから」


「いぇ、色々と助けていただきました」


「そうなのか……それは良かった。

 私もね、大会の話は耳にしていたから、できる事ならボードの改造に協力したかったんだけど、最近何かと忙しくて。しばらく顔を出せてなかったんだよ」


「そうなんですか……」


「まぁ予選結果をきくに、私に代わって二人が頑張ってくれたみたいだね」


「いやいや、そんなことないっす!! 自分はガンバったすけど! レオン先輩は全然だったすよ、もう〜横からダメ出しばっかで」


「うるさいぞ……お前こそ、何枚ボードを駄目にした?」


「いやいやいや、それはレオン先輩が細部まで拘れって言ってきたからじゃないすか」


「いや、それはお前がお座なりに終わらせようとしたからだ」


「いやいやいやいや、嘘言わないでくださいっす! 自分はずっと真剣でしたっすよ! レオン先輩の方こそー」


 話が平行線を辿っていた所でレオン先輩はとうとう……。


「ぐげっ!?」


 ニナ先輩の脳天をどついた。


「しつこい……話が進まないだろ」


「かわいい後輩の頭を叩くなんて、とんだサドやろーぐぬっむぬ!」

  

 次にレオン先輩は黙らせるようにアイアンクローを決めていた。もはや逆に仲良く見てきたが……しかし、完全に決まってるけど大丈夫だろうか。


「はいはい、二人ともそこまで。後輩の前でみっともないよ」


この仲裁になれた感じ。研究会でもいつも3人はこうなんだろうな。


話に入ってこないなと、ふとエヴァの方をみれば、気づけば俺達から少し距離をとっていた。

 

顔も優れないというか俯き気味だ。


ニナ先輩やレオン先輩との交流時も、俺やマナ、エリカを介してして、直接話しているのはあまり見なかったし。


エリカとの関係が改善してきているから、問題ないと思っていたが、まだ魔人との接触に抵抗があるのかもしれないな。


ブレンダさんはそんな黙っているエヴァを気にしてか。


「そういえば……そちらのお嬢さんも初めましてだよね」


「彼女は一緒にボードの改造をしたエヴァっす。魔術式の改良をしてくれたんすよ」


「……エヴァ モルガンです。よろしくお願いします」


「うん、よろしく……エヴァも色々とありがとうね」


俺の時と同じくブレンダさんは握手を求め、手を差し出したが……


「いえ……こちらこそお世話になりました」


素っ気ない態度をとるエヴァが、その手をとることはなかった。


妙に気まずい空気を察してか、ブレンダさんは。


「そうだ……レースはもう始まるのかな?」


わかりやすく話題を変えた。


「はい、もう間もなくだと思います。エリカ達ももうスタートに並んでますし」


スタートにいる二人をみると、レース開始前に何やら話していた。



「マナ、ありがとうね。出ようって言ってくれて。今日は出れてよかった、ほんとうに……」


「私も一緒に出れて最高にうれしいよ。

だから、最高のレースにしようね!」


「えぇ、負けないから」


「望むところだよ! 師匠としてまだ負けられないからね!」


会話の内容はわからないが、二人ともいい表情をしている。あの二人なら最高のレースをみせてくれるだろう。


本戦出場選手がそれぞれのスタート位置ついた。


今回のスタート位置は抽選ではなくて、予選の順位とタイムにならっているため、マナは前方、エリカは中央からのスタートとなっていた。


「いよいよ始まるっすね」


「そうですね……」


審判員による最終チェックが終わり。


本選レースがいま開始された。

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