第81話 予選レース後
レースを終えたエリカはすぐに戻ってきた。
嬉しかったたんだろう、こんな事を言っては失礼だが、エリカにしては珍しく素直に笑みをこぼしていた
「エリっち、お疲れ様っす」
「余裕だったな、練習で見たときより、さらに速くなってて驚いたよ」
実際、練習時のスカイフィッシュぐらいのスピードは余裕で出ていた。
「まぁ……皆んなのおかげよ」
「なにいってんすか、エリっちの努力が一番すよ」
「ありがとうございます、ニナ先輩。
それでユウ。マナはどう?」
「ちょうど、今からマナの組だ」
3組が終わり、次のレースの準備が進められていた。
「よかった……間に合って」
なるほど、早く戻ってきたのはマナのレースを見るためだったようだ。
「でも、マナのやつ。温存するとか言ってたけど、本当にこのボード無しで勝てるのか?」
俺は手元に置いてあった本選用のボードのスカイフィッシュに目をやった。『今は使わないから、持っておいて!』とマナから預かったのだ。
「ユウは直接指導してもらってないから知らないだろうけど、マナは相当上手よ」
マナ達の四組目のレースの準備が整い。
スタート審判員が最終確認を始めた。
「大体……あのボードが遅いなんて言ってなかったでしょ?」
そして合図が鳴り、スタートがきられた。
「うわっ!? マナっち! すごいっすよ!!」
マナはスタート直後、トップをはるという予選用ボードとは思えない走りをみせたのだ。
「あれで……温存なのか」
「ほらね? 言ったでしょ?」
「そうだな……」
この前、馬鹿にした事を改めて謝らないと駄目かもしれない。見ただけでわかる、マナの腕前は頭一つ抜けていた。
※
「たっだいま〜!!」
マナは余裕な顔で帰ってきた。そりゃそうだ、文句なしの一位だった訳だし。
「お疲れ様、もうそのボードで走れば?」
エリカの言うとおりだと思う。マナなら、普通のボードで普通に走った方が優勝を狙えそうだ。
「ダメダメ、私が目指してる走りはこれじゃ実現できないから」
「随分な拘りがあるんだな……。
そういえばボードは何歳からやってるんだ?」
「えぇ〜? 何歳からだろ……。お父さんに教えてもらったから、6か7才ぐらいからかな?」
「ということは……じゃあ9年もやってんすか!? すごいスッね、あれだけうまいのも納得すよ」
そんな会話をよそに唐突に歓声が湧き上がった。
何事かと思えば観戦者達は実況映像に夢中になっている。
「……なんか盛り上がってるな」
「みて! あの人、面白いことしてるよ!」
マナに言われて、映像に目を向けると。
赤髪の選手が大胆なショートカットを華麗にきめて、一気に上位の選手をごぼう抜きしていた。
「あの人、わかってるなぁ〜。私も彼処は狙えると思ってたもん」
「へぇ……」
ていうか、あの特徴的な赤い髪を見間違える筈がない、いま注目を集めて走っている選手はノアだ。
まぁ別に意外ではない。ノアは魔道具屋の子供な訳だし、何より興味を持っていた記憶がある。
いつか出場してみたいと言っていた。
それが実現できたようで何よりだと思う。
でも……マズイな。
ノアはそのまま一位をキープしてゴールし、歓声に応えるように振る舞っていた。
一瞬、こちらを見ていた気もしたが、俺が自意識過剰なだけで、大勢の観客に紛れているし、俺には気づいてないと思う……。
正直、なにを話したらいいかわからないから、皆には会いたくはないのが本音だ。
ノアがいるなら、他の三人もいるかもしれないし注意しておく必要があるだろうな。




