第79話 アイディア
女学生寮の一室の扉が強く開かれた。
急いで戻ってきたため、エリカは息を切らしていた。それでも呼吸にまわすことなく、急いぎ想いを伝えるため口を動かした。
「エヴァ、さっきの話だけど」
「なに? もう落ち込んでるアピールはいいの?」
「えぇ……。だからお願い、私が大会に出るために協力して……」
「さっきよりかはマシになったんだ。
わかった……協力してあげる。
じゃあ、まずそのボードをみせて貰ってもいい?」
「もちろん」
エヴァは赤いボードを手に取り、魔術式を解析し始めた。
「なるほどね。無駄がなくて、よく出来てる。
魔導具研の先輩がギリギリと言ったのはたしかよ。
そもそも魔人が無理なく使用出来る魔力量の平均は研究で明らかになってるの。
まぁ、あまり褒められた研究法じゃなかったけど。
この魔術式は、その限界値に合わせて創られてる」
「それはやっぱり、もう無理ってことじゃないの?」
「結論に急がない。
エリカはしってる? クロムとロワードではボードの形状が少し異なってることを」
次の日、エリカは朝早くから再びニナ先輩のもとを訪れていた。
エヴァに貰ったアイディアをいち早く伝えるためである。
「それっす! 車輪をつけるんすね!!」
「そうです、ニナ先輩」
エリカが提案したのはボードに車輪をつけるという原始的なものだった。
「いやぁ〜! 盲点だったっす。その発想はなかったすね!!」
「いえ、私のアイディアじゃないです。友達が教えてくれたんですよ。クロムではそれが未だに基本だって」
「たしかに噂で聴いたことがあるっすね……」
「今は浮くタイプの方も増えてきてるみたいですけどね」
「ふむふむ……浮かない分の魔力を速度に回せばかなりのスピードアップが見込めるっす。
ただその代わり悪路には弱くなるんすね」
「でも王都の道はある程度整備されてますから、影響は少ない。それで……制作できそうですか?」
「もちろんす! 魔導具研の名にかけて! 任せてくださいっすよ!!」




