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第78話 他人の目

暗くなり、誰も居なくなったグラウンドで、マナとエリカの二人はボード練習に励んでいた。


先輩達と別れた後、エリカは借りているボードで練習を重ねて、抜群な運動神経により、先よりも更にボードを乗りこなしていた。


 より洗礼され、無駄がなくなったためか、最高時速も上がっていた。


しかし、それでも一緒に練習していたマナよりは遥かに遅かったためか、エリカは浮かない顔をしていた。


幾ら技術を磨こうとも、マシンパワーの差は覆せない、そう実感する時間になってしまったのだ。


「それでず〜と、あぁやってうだうだ悩みながら練習してんの?」


「そうだな……」


あまりにも二人の帰りが遅く、心配したエヴァがグラウンドまで来た時点で、20時をまわっていた。


「……十分乗れてんだから、出たいなら出りゃいいのに」


「そういう問題でもないんじゃないか?」


「どういうこと?」


「周りの目、気にしてるとか……?」


「そんなの性格的に無さそうだけど……」


「まぁ……魔人に対して向けられる目の怖さは、エリカ達にしかわからないだろうな」


 あの目に見られる怖さを、俺もここに入学した日に少しだけ体験した。

 監視するように圧力がかかった目、怨みがこもった刺すような目、見下すような蔑む目……色々な嫌な目だ。


 エリカ達はあの目に常に見つめらてきた。意識しない方が無理がある。


「はっ? なにそれ……意味わかんない。ちょっと言ってくる」


「えっ? ちょ、ちょっと待てって!」


俺の静止を無視して、エヴァは隠さず不満を示すように、ズカズカと練習していたエリカに強い足取りで近づいていく。


そして。


「エリカ、話しがあるんだけど、少しいい?」


「な、なによ?」


「そうやってウジウジと悩まれるの、いい迷惑なんだけど、止めてくれない?」


「はぁ? アンタには関係ないでしょ?」


「なにいってんの? 大〜ありよ。

今、アンタと私はルームメイト。部屋でその暗い顔されんの想像しただけでも鬱陶しい」


「そんな……暗い顔なんてしてないわ……」


発言とは裏腹にエリカの声のトーンが下がっていく。


「あぁ〜面倒くさ……。ほんっと効率悪い。

なに悩んでるのか、わたしは知らないし興味もないけど、アンタなにを悩むことがあんの?」


「何が言いたいの……?」


「だから悩んでんのが、理解できないって言ってんの!

 チラシ見る限り、魔人が大会に出場してはいけないなんて何処にも書いてないし。もしそこら辺の他人の目を気にしてるのだとしたら、ほんとありえない。

 いま、貴方の周りには誰がいるのか、もう一度よく見て考えたら? 自分が一番実感してんだから分からない?

 大体……悩むだったら、もっと建設的なことで悩むべきでしょ」


 すべてを吐き出し、エヴァは大きく息を吸い直した。


「はぁ〜……言いたかったのはそれだけ。

じゃあ、もうここにいても時間の無駄だから、私は先に戻るけど、そんな顔して帰ってきたら許さないから……」


 言いたいことだけを一方的に言い残して、エヴァは寮部屋に帰っていた。


 エリカは残された言葉に取り憑かれ、唖然としてしていた。


 今の言葉、色々と思うことがあるのだろう。


 俺はフォローするために声をかけた。


「エリカ、今のエヴァの言い方キツかったけど、悪気はないと思うんだ。それはわかってやってくれよ」


「大丈夫……あんな事言うなんて意外だったけど、エヴァが言いたいことは伝わってきたし、わかってるつもりよ」


「そうか……」


後ろで聴いていたマナは寂しそうな顔をしていた。そして、エリカの手を取り。


「私には……難しいことは分かんないけど。

 私はエリカと一緒に出たいな。

 それだけじゃやっぱりダメなのかな?」


「ありがとう、マナ……。

 でも、私のわがままで大会に出て、情けない走りをしようものなら、その影響は私にだけじゃない。そう思うと……なかなかね」


「そっか……」


 俺達はエリカとしてみるが、周りの観衆は魔人として見るという意味だろう。

 きっと魔人が魔導具を扱えないという悪い印象をこれ以上広めたくないのだ。


 でも、それに関しては俺も言っておきたい。


「エリカの考えはわかった。でも……なんで最初から、情けない走りをするって諦めてるんだよ。確かにこれ以上の改造は無理だってさっき結論づけたけど、まだ早くないか?」


「はやい?」


「あぁ……。

 マナ、大会まであとどれくらい時間がある?」


「え? え〜と、あと12日だね」


「ほらな、あと12日もある。俺達は別に研究会じゃないけど。魔術学院の生徒だ。魔術を追求する義務がある。

 エヴァが最後に言っていたのは、そういう事じゃないのか?」

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