第76話 先輩達
俺は思いつきというか思い出しから、昨日誘われた魔導具研究会にマナとエリカを連れてきた。
絶対ではないだろうけど、魔人の先輩が所属しているなら、魔人が使える魔道具を扱っている筈だから……。
「ユウ〜、ここは?」
「魔導具研究会だ、街の専門店もありだけどさ。折角あるんだし、聞いてみるのもいいだろ?」
「そうね……いいと思う。ここには魔人の先輩がいるものね」
「ん? エリカ知ってたのか?」
「知ってたというか。ユウも誘われたんでしょ?」
「あぁ、そういう……。エリカも勧誘されたのか」
「えぇ、ついこの間ね」
もしかしたら、あの先輩が俺を誘ってきたのはエリカと一緒に居るところを見たりしたからかもしれないな。
「えっ? えっ? ちょっと待って!
なんで二人は勧誘されて、私はされてないの〜? なんか寂しいじゃんっ!!」
「そんなの知らないわ」
「えぇ〜まって! 仲間はずれみたいでいやだよ〜」
そんな俺たちの話を遮るように。
「あれれ? エリっちじゃないすか、どうしたんすか?」
特徴的な語尾で誰かが後ろから話しかけてきた。どうやらエリカと顔見知りらしい。
「ニナ先輩、こんにちは」
「ここに来たとうことは……もしかして! 気分変わったんすか!?」
「いぇ、すみません、今日は別の用事です」
「そうなんスカ? それは残念っす……」
ニナ先輩と呼ばれた活発そうな彼女もまた、首に赤いチョーカーをしていた。魔人であるのは間違えない。
「エリカ、こちらの方は?」
「魔導工学部のニナ先輩よ。ここの会員の1人」
「そうなのか……。
ニナ先輩、はじめまして。俺は……」
「あっ! ちょっと待つっす。用事があることは確かなんすから、立ち話なんて駄目っすよ。
遠慮せず。ささっ! 入ってくださいっす」
「それじゃあ……お言葉に甘えて、失礼します」
扉をくぐると研究会の部屋内には、男のロマンが詰まっていた。
小さな研究会なのか、決して中は広くない。
でも魔導具研究会と名乗るだけ事はあり、壁一面に魔導具、魔導武器等が飾られていたのだ。ただ残念な事に軽く見渡した感じ、目的のボードは見つけられなかった。
「す、すごいね。なんか」
「そうね……」
「そう言ってもらえると嬉しいすよ〜、レイアウトには拘ってるすから。
あっ! もちろん殺傷性はないっすから安心してくださいっす!」
「そうなんですか……」
どうやら心に響いたのは俺だけらしい。エリカもマナもこの魅力をイマイチ理解していない様子。興味もなさ気だ。
「ほんと、どれも格好いいですね。特にこの摩術銃なんて最高だと思います!」
魔術銃はその名の通り、魔術で動作する銃だ。ただ、この魔術が発達した世界において魔術銃は、様々な理由から実用性が低く。さらに高価なこともあってか、使用者は殆んど見かけない。まぁ、これは殺傷性がないレプリカ(飾り)なのだろうな。
「このセンスがわかるとは、お前も中々の慧眼を持っているみたいだな 」
そう話しかけてきたのは、昨日の放課後、俺を勧誘してきたレオン先輩であった。
なるほど、この人の趣味なのだろうな。
ワイルドでカッコいいし、持っているのを想像したら様になる。
「ありがとう御座います……レオン先輩。
でも、男なら誰だって憧れますよ 」
「なに言ってる。元々は会長の趣味だ」
「会長?」
「あぁ……すまない。会長は女性なんだ。
まぁ、あいにく今日は居ないがな」
「そうなんですか……」
「しかしどうした? 雁首そろえて……どんな要件だ?」
俺達全員の自己紹介と、レオン先輩にここに来た目的を伝えた。
「なるほど……。大会に出たくてウチに。
だとしたら、俺達の所に来たのは間違えでもない。
そもそも、この研究会の目的は『魔人』が使える魔導具の開発だからな」
「でしたら!」
「まて、慌てるな。
ニナお前、たしか作ってたよな?」
「はいっす、まだ試作品レベルすけどね……。ちょっと待ってくださいっす」
ニナさんは、部屋の奥隅に立てかけられていたボードを持ってきてくれた。
「これっす!」
そう差し出されたのは、炎を彷彿とさせる真紅のボードであった。中二心を擽るカッコ良さだ。
「これには実際、魔人でも乗れるんですか?」
「それはまぁ……勿論乗れるっすよ。でも、ちょっとというか、色々というか沢山問題があってすね」
「お前、真面目にやってたのか?」
「レオンさん! 怒んないでください! 試作品って言ったじゃないすか!
そうだ! どんな物か知りたいなら、説明するより、乗ってみてもらった方がいいスッよ」




