第73話 晴れない心
蘇生術発動から一週間後、俺達は再びクロード教授の研究室を訪れていた。
だが、先生に会いに来た訳ではない。
マナはあの日から数日の間、ずっと悩んでいた。彼女が一体、どのように捉え考えて、答えを導き出したのか分からない……でも。
マナが研究室の扉を元気よく開ける。
「おつかれ〜! エヴァ〜!」
どうにか、彼女なりに吹っ切れることができたようだ。今は先生が言った通りに、エヴァを支える存在になろうとしているように見える。
「マナね……全く、またきたの?
私も忙しいだから。ほら早くして、何が解かんなかったの?」
「えへへ。えっとね〜。ここのー」
何故、エヴァが先生の研究室に居るのかというと、結論からいえばエヴァは正式なクロード先生の助手となったのだ。先生が側で導くといったのは、こうなることを指していたのだろう。
そして当然だが、あの日のエヴァの行為は、お咎めなしとはいかず、彼女は上級科を離れ、普通科へ移動することになったのだ。
しかし、それは寧ろ彼女には好都合だったかもしれない。先生の手伝いをしながら、上級科に通うことなんて、幾ら彼女が優秀であっても、不可能に近かっただろうから……。
今は普通科に通いながら、本格的に命の魔術の勉強をしているらしい。
「何度言ったらわかんのよ。ここはー」
マナは今日みたいに授業のわからないところを聞きに数回来ているみたいで、知らない間に随分とエヴァと親しげになっていた。
俺も先生の頼み通り、エヴァの心の支えになれたら、なるつもりだ。しかし、あの時の絶望した表情と今の幸福そうな表情のギャップを見ると、未だに心にモヤがかかっていることを嫌でも再確認する。それはきっと俺だけじゃない。
「ユウも……エリカもせっかくだし解かんない所あったらきいていいよ」
「私は特にないわね……」
エリカとの関係はまだこれからといった感じだ。でも、雰囲気はそこまで悪くない。
「俺も今はないよ。それにしても、エヴァはまるで、先生みたいだな。白衣が様になってるし」
「でしょ、私何でも着こなすの。それにもう実質、先生みたいなもんよね。こんなにも教え甲斐がある生徒抱えてんだから」
「エヴァ先生! 全く分かりません〜!」
「はいはい。いま教える」
ここで、楽しく談笑する彼女は普通の少女にしか見えない。これから先に厳しい現実に直面するなんて思いたくない。
今はエヴァの輝く笑顔がこれから、気づく真実によって翳らない(かげらない)ことを、ただただ願うことしかできなかった。




