第68話 捜索
俺たちは、学院敷地内にある旧普通科学院棟にむけて、歩いていた。
「ここまでする必要あったのかな? 悪いことしたと決まった訳じゃないのに……」
「何言ってんの。私達から逃げたってこと自体が、やましい事をしていた証拠みたいな物よ」
「う〜ん……まぁ、そうだね。悪い人にはバツをって。
どこかの神様も言ってたし、悪い事をしたなら、少しは反省してもらわなくちゃね」
「誰だよ、そいつは……」
「あれだよ。えっと……名前……名前が〜」
「それって、もしかして命神教会の教えをいってる?」
「それだよ! 命神教!」
「だとしたら、簡略化し過ぎ……。正確には『罪深き者は、その罪に対しそれ相応の罰をもって、赦される。聖人達よ、今こそ汚れた罪人を救済してあげましょう』でしょ?」
「へっ? 覚えてるの?」
「教養としてね。だって、人間世界で最も有名な神様の教えの1つよ」
「命神教……」
「ユウ、貴方も知らないの?」
「いや、知ってるよ。魔力を神命って呼ぶ人達だろ」
「えぇ……彼らは、魔力が神様の命の一部を分け与えられたものだと未だに信じているの。そして、魔力を持つ生物こそ神に愛されているともね。
古い考えよ……だからかロワード国民にはあまり合わなかったみたいだけどね」
魔力とは命あるもの全てに宿る生命力。決して神に与えられているモノではない。
そして、魔族や魔物にも当然生命力はあり、魔力とは違う形で持っているとされている。
ユーフテスやロワードでは、この認識が一般的だ。
「ていうか、マナは何処で聞いたんだ?
もしかして、命神教に入っているのか?」
「私は入ってないよ。ただ、よくお店に勧誘に来るんだよね、一緒にテオ様を信仰しようって……」
「そういうことか」
「ねぇ、もうこの話やめましょ。私あまり好きじゃないの」
「そうだな……そもそも別に俺達は罰を与えにきた訳じゃない。確実な証拠を掴みに来たんだ」
俺たちはあの後、急いで聞き込みを開始した。
結果、俺達の予想通り、普段は普通科の校舎に立ち寄る筈がない上級科の生徒の目撃証言を多く集めることができた。
犯人だと思われる生徒は相当に自身過剰なのか、詰めが甘いのか知らないが、上級科の生徒であることを象徴ともいえる漆黒のマントを羽織ったまま、侵入していたため多くの人の目に留まったのだ。
あと証言から、生徒がピンク髪の女性であること。そして、少し大きいな本を持って移動していたと言うことがわかった。本は恐らくだが、先生の部屋から持ち出した物だろう。
……でも、本当にここまで集めるのに苦労した。別に二人が悪い訳ではないないのだが、二人を連れていると、話も聴いてくれない生徒がちらほらいたからな。
まぁ結局は、犯人が目立っていたおかげで、聴けた人が少なくても情報はしっかりと集まったけど。
そして、今俺たちが何をしているかというと、証言から得た犯人が辿った軌跡を元に、彼女が何をしようしているか考察した結果。
どうやら、ここ旧学院棟にいることがわかった。
旧学院棟は、俺達が会長の手伝いで訪れた、古くカビ臭い建物だ。
もう使われていないことや、現学生達の生活域から少し行きづらい位置にあることから、何かを隠れてするには、うってつけなのだ。
俺達は旧学生棟の屋上の扉につく。
「やっぱりここね。同じ気配がする……。
ふたりとも、向こうには私達のことなんて、バレてるだろうから、ここからは警戒していくわよ」
「オッケー……」
エリカが扉を開けると、黒いマントを被った女生徒が目に入る。
その瞬間、出鱈目の数の黒い液状の物体が俺たち目掛けて飛んできた。
罠が張られていたのだ。
俺は咄嗟にその物体を避けようと、身体強化の術式を発動する。
しかし、その飛んできた物体は流動的に形をかえ、まるで砂鉄が磁石に吸い付くように、俺の身体に集まり、黒い金属の輪をつくり梗塞した。
「これは魔導具か!?」
「うげぇ〜。なにこれ〜!?」
マナも俺と同様に黒い拘束具に捕まっているなか、エリカだけは華麗に飛び上がり、上に逃げていた。その勢いのまま、マントの女生徒にとってかかる。
「こんなもんに……引っかかるかぁ!!」
エリカは女生徒を上から押さえつけ……思いっきり、地面に叩きつけた。
「がっ!?」
「ふん、私達が追いかけてきてることを見越して、こんなしょうもないトラップを張るとか……。あまり私達を舐めないでもらえるかしら」
そんな格好いい事、言われても困るな。
「よく見ろエリカ……。そのしょうもないトラップにしっかりと俺もマナも引っかかってるんだぞ」
「はぁ……もう何してんのよ、ふたりとも」
「てか、エリカやり過ぎだ。伸びてるぞ、そいつ」
「えっ? あっ……力入れ過ぎたかしら」




