第63話 軽い拳
「ぎゃあぁぁ!!! なんだよ。なんだよ、これぇぇっ!!」
そこに、もだえ苦しみながら倒れたのは、殴られたマナではなく、殴ったダニエラであった。
いま、何が起こった?
マナをなぐったダニエラの手首は、赤く腫れ上がっている。
その間、マナは何もしてなかった。ただ立っていただけ……。
これが呪いなのか……。いや、なにかカラクリがある筈だ。マナは暴力での解決をしないといったじゃないか! なら、これも意図していなかったことに違いないだろ。
息を荒げながら、少女は立りあがり、折れた腕に自ら回復術式をかけ、苦悶の表情を浮かべる。
そして、仲間に支えられながら、声を荒げた。
「言いつけてやる……。お前等のやった事、全部言いつけてやる!! お前等のような、変人の言うことなんてだれも信じないだろうしな!!!」
「そこまでにしておけ、お前ら……」
混乱を極める状況の中、場を収める一筋の光がさした。
なんと、そこに現れたのは、国立魔術学院の教授であることを示すローブをきたオリビア先生だった。
「一部始終は見させてもらった……」
先生に登場に瞬時に反応し、慣れたように彼女らは行動を起こす。
「先生……。オリビア先生!! コ、コイツ等がいきなり、私達を殴りつけてきてー」
なに!? ここにきて何言ってやがる! 猫かぶるのも大概にしろよ!
「はぁ……。一部始終をみたと言ったろ。勿論、お前達がそこの生徒を暴行しているところからだ」
「で、でも、先生。コイツも悪いでしょ、魔族が調子に乗ってるから!! 私達は友達として教育してあげてるんです。
それに、私のお父様はこの学院に多額の寄付しているの! 多少の権利はある筈だわ!!」
「その事と……今回の事に、何の関係があるんだ? 」
「まってください! 私はここにお父様の推薦でー」
いつもと違う流れを感じとった少女達に動揺が走る。
「お前達はっ!!! ……勘違いしているようだから言っておく。この学院はそんなに甘くない。推薦だからといって、特別扱いはしない」
「そんな……でも、でも」
「はぁ……前の学院では許されていたからって、ここでも同じことが通用する訳ないだろ?
少しは考えろ。これ以上、親の名を汚すのはやめとおけ」
「でも、いつもは……」
少女達は崩れ落ちる。ようやく今の状況を呑み込、絶望が彼女達を包み込んだ。
※
オリビア先生の到着後、事件はすぐに解決へ進んだ。
少女5人は、先生が呼んでくれていた他の教授に、連れて行かれた。
俺達は急いで倒れているエリカの元にかけよった。
「エリカ! 大丈夫!?」
マナは倒れたエリカを、大切な物を抱えるように、優しく抱き起こした。
「えぇ、何とかね……。でも、なんでここまで…… 」
「そんな悲しいこと言わないでよ。私達、友達でしょ!!」
「ともだちって……。昨日、初めて会ったばかりじゃない」
「何言ってるの! 挨拶して、名前を呼びあったら、それはもう私にとっては友達なの。それにユウの友達でしょ。友達の友達もう射程圏内なの!!」
「なに、めちゃくちゃいってるのよ……。
でも……マナ、ありがとう。
そして、ユウ。貴方はやっぱり……」
「なんだよ?」
「いえ……なんでもない」
「あっ! エリカっ エリカっ!」
エリカは安心したのか、肩の力を抜き、意識を落とした。
「落ち着け……。大丈夫だ、寝ているだけだ。そっとしといてやれ」




