第60話 溺れたひと達
講義室をでて、胸騒ぎを感じつつ、廊下を必死に走る。
そして、まっすぐ迷いなく学院棟を出たマナに、ギリギリで追いつき呼び止めた。
マナは意外に足が速くて、見失いかけるほどだ。
「マナ、どこにいるか分かるのか?」
「たぶん……こっち!」
「たぶんって、そんな感覚で大丈夫かよ!」
・
・
・
学院敷地内の南部は周りに人気がなく。普段、学生達が使わない大きな倉庫が並んでいる。
「ほら、こっち来いよ。お前の立場ってやつをわからせてやる!」
エリカは5人の少女に強引に捕まれながら、学院内施設でも人が通らない物陰に強引に引っ張られていった。
「にしても、エリカ……また同じ部屋になるなんて、運命的だと思わない?」
「…………」
「なに黙っての? お前さぁ……調子に乗ってんだろ。
普通科に入れたぐらいで、私と同等になったつもりか? あぁっ!?
本当だったら私は今頃、上級科にいた筈なんだよ! 枠がなく仕方なく、普通科に来てやったんだ」
「そう……それは可哀想に。貴方は凄いのにね。でも賢くない私は、貴方達と遊んでる暇はないの、そこをどいて」
エリカは穏便に済ませようとしたが、少女達はエリカを逃さぬように立ちふさがる。
その中の弱気な少女が心配そうに尋ねる。
「い、いいのかな……ダニエラ。こんなことして」
「大丈夫だってポーラ、気にするな……。コイツとは中等学院からの仲さっ!!」
ダニエラと呼ばれたリーダを気取った少女は、エリカを蹴り飛ばした。
抵抗を見せないエリカは、強く壁に打ち付けられる。
「ッ……」
「コイツ等、魔人はなぁ。この国にいるために、私達人間に手を出せないんだよ。それに都合がいいことに回復能力も早い」
「な、なるほど、そりゃいい玩具だね……」
「あぁ、前の学院ではいいサンドバッグだったからな。また仲良くしようやエ〜リ〜カ!」
不気味な笑みを浮かべ、嗤う少女達。
そんな不吉な笑い声は狭い空間で、反響して辺りに嫌に響くが、誰にも届くことはない。
「ほら、ポーラやってみろ、最高に気持ちいいぞ」
「よ、よし……。
気持ち悪いだよ!! この化け物が!! なんて目で見てんだよ!!」
リーダに命令されたポーラもエリカの腹部を躊躇いなく、蹴りを入れる。
エリカは目を瞑り、顔を歪ませた。
「キャハハ!! なんだ、その顔は!
誰もお前のことなんか、助けてくれないんだよっ! オラ!!」
「ぐぅっ……」
もう少女達は止まらない。この快感に溺れては、止まることはできない。自らの手では……。




