第58話 癖のある二人
学園内敷地中を探し周って、最後にしようと決めていた庭園でようやく一人目を見つけることができた。
そうか、彼がグリーンか……。
はぁ、長かった。なんでか、どっと疲れが出てくるのと、同時に妙な達成感に今は満たされている。
とにかく見つけれて良かった。途中からもしかして、表記があるだけで、一人部屋なのではないかと学院を疑ってしまうほど、疲れていたし。
はぁ……ほんとうによかった。
「なんだか申し訳ないです。色々と苦労をかけてしまったみたいで……」
「いえいえ、自由時間だった訳で、自分が勝手に探し回っていただけなんで、気にしないでください」
「そうですか……。でも、ちょっど良かったです。まさに今から寮に戻ろうと思っていたので、一緒に行きましょう」
「そうしてもらえると嬉しいです……。あぁでも、もう一人はどこにいるんですかね?」
「あぁ〜。えっと、ケイくんでしたら、部屋にいると思いますよ」
「エッ!? ほんとうですか!? 」
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ホントだ……。二段ベッドの上を確認すると白い布団に上手に包まれて、頭の一部、白金髪の部分だけを覗かせた状態で寝ている少年がいる。白いシーツに白い布団に包まった彼はベッドの一部へと変貌している。こうも擬態されては気づけない……。
それに、まさかオリエンテーションが終わって、直ぐに二段ベッドの上で、布団に包まって寝ているなんて、誰が想像できるだろう。しかも、自分の荷物の封も一斉、解かずにだ。
さらに驚きなのは俺が何度か戻ってきた間に一度も起きてこなかったこと。そして、俺が部屋を最初に訪れてから、ここに戻るまでの間、そして今もピクリとも動いた気配はない事に衝撃を受ける。
生きてるよな……?
「ケイくん、起きなよ。もう夜になっちゃうよ。駄目だ……やっぱり起きないや」
ふう。一日に二度も寝坊助を起こす羽目になるとは……。よし、やってやろう!
「ケイおきろ!!」
俺は勢いよく、布団を引き剥がした。
中からは、綺麗な白金パーマが似合う、子供のあどけなさを残した少年がでてきた。
「…………うっ」
彼は布団を引き剥がしても尚、寝たままだ。
コイツは、まだ寝るのか……。
「ボクも庭園に行く前に何度か起こしたんだけど、起きる気配が全く無くて」
先程の庭園では、お互い上級生だと勘違いしていたため、最初は敬語で話していた。しかし、同級生だというのに、敬語で会話するのは違和感があると、タメ口に直した。
「……まぁ、無理に起こそうもしなくてもいいじゃないかな。ケイくん、とっても幸せそうに寝てるし」
「そうか? いや、別に俺も無理に起こすつもりはない。でも、ここまで来たら不健康だろ?」
「う〜ん。
でも、ここまで深い眠り……。もしかしたら睡眠魔術かもしれない」
「睡眠魔術? そんなのがあるのか?」
「読んだことがあるんだ。遠い昔に不眠症を患った者に、実際に治療法として使われていた魔術なんだけど。その魔術を使えば、思い通りのタイミングで眠る事も……起きることも可能になると。でも悪用された場合の、その危険性から、魔術式は永久封印されたらしいけどね……」
「いやいや流石に違うだろ。普通科の生徒がなんで、封印された魔術を使えるだよ」
「……まぁ、そうだよね。ボクの早とちりかな。ケイくんの睡眠があまりに深い物だったからもしかしてと思ったけど」
「そうだよ。いくら僕でも睡眠魔術は使えないよ……」
「うおおっ! ビックリした。急に起きるなよ」
「ケイくん、おはよう」
ケイは身体を大きく伸ばし、身体を起こす。しかし、たっぷりと眠っていた筈の彼の顔は。未だに眠りに飢えた、けだるそうなモノであった。
「ん? ……おはよう。この部屋にいるってことは、君達二人が僕のルームメイトなんだよね?」
「そうだよ。
まぁ、ようやく3人揃った訳だし。改めて、自己紹介からしようぜ。俺はー」
それからは、お互いの自己紹介や寮部屋の簡単な決まりを話し合ったり、意外とスムーズにことは進んだ。グリーンもケイも話してみたら、最初の変に尖った印象などを感じさせないほど、案外普通の奴らだった。
……やっぱり訂正する。次の日朝、グリーンは朝6時の時点では既に出かけており部屋に居らず、逆にケイは朝まで出かけていたらしく、帰ってきた途端にまた寝具に包まれた。
そして初日の講義だというのに、俺が寮を出るギリギリまで起こしても結局起きなかった。
グリーンは、また庭園だろうと予想できるが、ケイは学院に一体何をしにきているんだ……。俺は起きる気がゼロのケイを放って、学院棟に向かった。




