第52話 二人での食事
入学式直前の夜。ユウとユリは家族二人で、食卓を囲んでいた。
……皆に不合格の話をしてから1週間が経った。
明日はもう王都に旅立つ日だ。
だから、こういった家族二人での食事は、俺が寮暮らしになるため、暫くはなくなるんだろう。
まぁ、姉さんも俺がこの家にいたから、こんな遠方の実家から職場に通っていただけで、俺が入学したら王都にある借家に移るらしいし。
それに、そうなるのは珍しいことではない。お互い学生の時は、ずっと二人とも寮ぐらしだったし。むしろ、この1ヶ月は久々にこの家に一緒に住んでいたのだ。
そんな貴重な1ヶ月最後の晩餐だというのに、こうも言葉数が少なく静かな食卓なのは、やはりお互いに気がかりがあるからだろうか……。
あの日、帰ってから直ぐに、姉さんにも上級科が不合格だったこと。普通科に進路を変更したことを話したが、特に意外だったという様子もなく。
ただ「おめでとう、よかったな」ととても嬉しそうな顔で、祝福してくれた。
でも……。
「なんで、姉さんは進路のこと、何も聞かないんだよ?」
俺の質問により、姉さんはフォークを止めた。
「なんだ……聞いてほしいの? 前はほっておいてくれって言ってたじゃない?」
「俺の中ではあれとこれは別のことなんだ。黙って進路変更したの、怒ってないのかよ」
「……怒ってない。ユウ自身で決めた進路に私が口出しをする必要ないでしょ。
それに私も散々、好き勝手やってきた。そんな私をユウが支えてくれてきたじゃない?
だから、ユウがやりたい事を見つけたんなら、今度は私が支え、見守る番なんだよ」
そうだ、姉さんはこういう人だったな……。
「ありがとう、頼もしいよ…………… 」
未だ浮かない俺の顔を見てか姉さんは……。
「どうしたの? 他にも悩み事?」
「いや、どうしてもその……先日の事件の事が気がかりで。俺はいま、勉強してる場合なのかと思ってしまうんだ」
「なに言ってだか……学生であるユウに、いま必要なことは学ぶことだよ。
それに学院で知識や技術を身につけるのこれから先、皆が幸福を求める事ができる国にするためだろ?」
「そうかな……」
「私はそう信じて学院で学び……今、国に貢献するため、その知識を役立てるんだ。
ユウ……そんなに私達が頼りない?
安心しなよ。私達、大人が国の内部では安全に暮らせるよう勤めているんだ。私達のことを信じて、ゆっくり勉学に励めばいい」
「うん……わかった。ずっと信じているよ 」
不思議だ。何故だが、この人には、姉さんには弱音を言って甘えてしまう。助けを求めてしまう。やはり、家族として過ごしてきた記憶があるからだろうか…………。
「当たり前だ。私はお前の姉だからね……」




