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第51話 約束の終わり

 先程までの締まりのない空気から一転、場の空気が凍りつく。


 俺だって言いたくなかった。でも、今言わないと他にタイミングなんてない。


「皆んな黙ってて、すまなかった。俺は併願受験で、普通科も受けていたんだ」


「ユウ、それ見せて!」


 俺の合格通知をアイナが荒く奪い取った。


「本当なのね……」


 皆、混乱している。頭の中にはハテナが溢れているだろうな。


「あぁ、俺は上級科には受からなかったみたいだ。本当にすまない」


 暫く沈黙が続き、ノアが嫌な雰囲気を察して空気を変えようとしてくれた。


「……そっか。でも、謝る必要なんてないぜ。こればっかりは、どうしようもないことだ。

 俺達は皆んな、ここまで一生懸命、努力してきた。でも、この国最難関の学院だぜ。受験生は皆んな努力している。だから、皆んなが受かるほど、甘くないと考えていた」

 

「まて、ノア。俺は納得いかない。

 ユウ、一つ教えてくれ。

 お前は最初から受かる可能性が低いと決めつけて、俺達に黙って併願受験に変えていたのか!?」


「そうだ……。俺は上級科に受かる自信がなかったから、普通科も受けることにしたんだ」


「お前がよりにもよって……。

 何を腑抜けこと言ってるんだ! 

 俺達、5人の約束を始めたのは、ユウお前だろ!!

 お前が、皆を最初にまとめたんだろう!!!

 お前が5人で上級魔術師になって、皆を、家族を守ろうって言ったんじゃないか!! そんな、お前が、お前が……」


「落ち着けって、ルイ」


「なんだ!? ノアは納得できるのか?」


「納得もなにも、受験の仕方は個人の自由だ。  

 ユウは別に約束を破ろうとしていた訳じゃない、自分にとっての最善策をとっただけ。今は昔と違って、留年できないんだ。落ちたら、二度目はない。そんな状況だ。俺だって、一回は同じことを考えたさ」


「そうかもしれない。わかってはいる。だが、俺はただ、ただ……」


 ルイは言葉をつまらせ、黙ってしまった。

 そして、やるせない気持ちから、逃げるように外に出ていった。

 

「ちょっとまて! ルイ何処行くの!?

 わ、私、追いかけてくる」


 俺はルイの哀しい顔をみて、心が棘が刺さったように痛むのがわかった。けど、この痛みはユウのものだった。


「フォローありがとうな、ノア。

 でもごめん、俺もいっぱいいっぱいなんだ……。

 じゃあ、まだ姉さんに報告してねぇから、もう行く……」


「おい! まてよ、ユウ!」


 ユウもまたその場の空気に耐えかね、アイナの家を出た。


 残された二人は重苦しい空気の中、嘆かわしい現状への思いを言葉で表す。


「お疲れ様。必死に皆の輪を崩さないようにして頑張ってくれたみたいだけど、失敗しちゃったわね」


「……そう思ってたんなら、助け舟出してくれてもよかったんじゃねぇか?」

 

「出そうにも、流石の私も驚いて、状況を掴めていなかったからね。

 でも……ノア、アンタはある程度、事情を知っていたのかしら?」


「いんや。な〜にも知らなかったよ。俺もさっき知った。

 でも……驚きはなかったな。落ちる可能性は誰にでもあったろ?」


「そうね。その辺りの意見は同じ。

 でも、ユウが黙って併願受験していたことには、私もルイと同じで違和感を覚えたわ。

 ていうか数日前から、あの音の事件以来、ユウもルイも変だわ。そしてそれは……ノア、貴方もよ」


「……そうか?」


「下手くそなのよ、演技が」


「なんのことだか、わからないな……」


「いいって……話せないのは何となくわかっているから。

 ポトルから帰ってきた二人は何か隠しているし、ルイは何処か怯えているよう。そして、それに気づいていても、何もしない2人。おかしいところだらけよね」


「いやぁ〜流石、よく俺たちの事を見てらっしゃる。けど俺は何も知らないぜ。今回は検討が外れたんじゃないか」


「……まぁ、そうかもね。でも、一番気になったのは、やっぱりユウの変化かしら。

 この一週間ぎこちないような、少し不自然さを覚えてた。でも試験前の緊張によるものだと軽く考えて大して気にしていなかったわ。けど……試験で明らかな違和感があった。


 それはノアも思っているでしょ。ていうか、皆思ってる筈、言わないだけでね。

 あんなにも魔族、魔人に拒絶的だったユウが魔人と会話したというだけでも、まるで人が変わったぐらいの変化に感じるのに、ましてや試験の協力者に選ぶなんて。はっきり言ってありえない。……それとも、二人が隠していることが、ユウの変化に関係あるのかな?」


「……そうだな。ユウの変化は俺も感じてた。でも、理由はなんも知らないし。

 本当に俺が言えることはねぇな」


「そう…………。

 で? これから、どうするの?」


「まぁ〜……あれだ。今は何をしても無駄だと思うぜ。ユウは今、俺達から距離を取ろうとしている気がするんだ。そこを無理やり歩み寄っても、逆効果になるだろ。

 んで、ルイは一時的に熱くなっているだけさ、すぐに頭を冷やす。

 アイツはさ。多分、悔しかったんだよ。ルイが一番、ユウの実力を評価していたからな、裏切られたように感じたんだ」


「ふ〜ん……そういうもんなの? 

 やっぱり、わからないわね。男のことは」


「俺たち、男は意外と繊細で複雑なんだよ。そんなに簡単に解られてたまるか」

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