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第48話 新たな道

 会長はエリカにもお茶を入れ、エリカがひと息着いたのを見て、話し始めた。


「エリカ、今日は有難う。正直、君は来てくれないと思っていたよ」


「いいえ、その通りです……。

 最初、来るつもりはありませんでした。

 ですが、先生や妹に話だけでもと勧められたので来ただけです。

 ……こんなあやふやな理由で訪ねて申し訳ございません」


「いいよ。素直に話してくれてありがとう。

 大切な話だからね、話を聞くだけでも、来てもらった意味はあると思うよ。

 よし……3人で早速、本題を話していこうか」


「……お願いします」


「まず、これは最初に話しておかないといけない。君達にとって辛い話になる。覚悟はいいかな?」


「はい」


「昨日の試験、決定事項ではないが、君達二人の上級科の不合格はほぼ間違いないものとなっている」


「……はい」


「ふたりとも反応が薄いね。もう諦めていたのかい?」


「そうですね、彼は兎も角、私は……」


「なるほど……。必要ないかもしれないけど、一応理由も大まかには教えてもらっている。どうする? 聞くかい?」


「私は……結構です」


「自分は教えてください」


「わかったよ。ユウ……君は筆記試験については合格ラインには届いており、問題なかった。

 でも、基礎・中級魔術の発動試験において、発動時間、完成度の面から低い評価を受けている。つまり応用魔術試験、その評価前の段階で振り落とされている」


 なんだ……特に意外性もない。妥当な不合格理由だ。むしろ早い目に知れて、ラッキーとさえ、今は思える。


「そうですよね。自分で一番わかっていました」


「ふたりとも最初から暗い話をして、申し訳ない。ただ今日、私からの提案をする前に伝えなければならないことだったんだ」


「提案ですか?」


「特別、勿体付ける必要もない。

 結論を言うと、君達二人に学院の普通科の席ならば、与えられるという話だ」


「……そのようなことは可能なのですか」


「可能というよりも……知っているだろう? 

 この学院の受験制度として、君達のように、上級科に拘って第一志望のみを選択する者も居れば、第一志望に上級学科、第二に普通科など、併願受験する者は多くいる。勿論、専願している生徒を優先的に合格にするけどね」


「……つまり、私達の受験を内密に普通科の併願受験に変更することで、合格させてくれるということですか?」


「そういうことだね……表向きは元から併願受験だったことになる。

 ただ、もし最初から君達が併願を選択していても、残念ながら今回の成績では不合格だっただろうね。だから君達が望むなら、私の推薦という形で枠を設けるつもりだ」


「……疑問なのですが、何故そこまで?」


「う〜ん……。確かに君達の立場からして、面識もない私の推薦は気味が悪いだろう。根拠となる理由がほしいなら、実に単純だ。私が君達、二人に興味を持ったからだよ。


 そして、自分達だけの推薦だと思って、罪悪感があるなら、安心していいよ。

 推薦は君達だけの話じゃない。

 今年の上級科の合格者の約3割はこの国の特権階級による推薦だ。つまり、この学院では特別、珍しいことでもないのさ」


 上級科の3割が推薦だと!? 聞き捨てならない話だ。本当だとしたら、一般受験の門が狭すぎる。そうなると、アイツらの合否も危ういかもしれない。


「待ってください……推薦枠があるのは知っていました。でも、全体の3割なんて、私は納得できません!!」


 エリカの反応は当然だ。推薦者によって、正規の受験者の合格枠が侵食されているなんて、憤りを感じるだろう。


「エリカ、落ち着いて……。

 言い方が不味かったね。勘違いしないでほしい。推薦といっても、実力がない者が入っても意味がないことは誰でもわかる。だから、推薦される者は実力が伴っている者だけだ。

 どうせ合格するんだったら、試験を受ける理由はないだろう?」


「でも…………」


「納得がいかないか……。

 ここだけの話。かくいう私も推薦組なんだ、入学試験を受けてない。だが私は入学以来、学年1位の座を譲ったことはない、誰にもだよ」


「…………」


 会長にここまで言われては、エリカも言い返せない。

 それに実際にそうなのかもしれない。

 合格が確約されているような実力者に試験を受けさしても、相手との差がひらきすぎ、正当な評価を下すことが難しくなる。


「……わかりました。推薦される者は実力が伴っている者だけ。つまり会長から見て、自分達は普通科に入る資格があると認められた訳ですね」


「ハハ。そう捉えてもらってもいいよ。

 さて……とりあえず、私の提案について、概ね理解はして貰えたと思うけど、結論は出せそうかい?」


「それは、今すぐにですか?」


「流石に、今すぐとは言わないよ……。

 そうだね。他に受けていた学院もあるかもしれないし。

 君達にとっては、希望の科を下げることになるから、判断に時間が必要なのも承知している。

 あまり多くの時間は与えられないけど、今日の夕刻の鐘が鳴るまでは考える時間を確保しよう。それでいいかな?」


 突然の話で、まだ整理しきれておらず、頭がパニック状態だ。本当はもう少し考える時間が欲しいが、国立学院の合格発表は迅速で、今日から一週間後に行われる。それを考慮すれば、会長は充分に譲歩してくれている。


 俺がこれから考えなければならないのは、この話を受ける場合と受けない場合で、どのように俺の周りの環境と人間関係、そして進路が変化するかだろう。元々、アイツ等には落ちた話はしないといけなかったし、もし普通科に行くのだとしたら……。


 とにかく考えることは、とても多い。


「はい。問題ございません」


「いえ、私は結構です。今すぐに答えを出します!」


 驚きの余り、エリカの方を見ると、その顔に迷いや不安はない。


「いいよ。私は決断力がある人間は嫌いじゃない。それで……どうするだい?」


「私は是非、普通科に行かせてください」


「そう……歓迎するよ、エリカ。

 では、今から用意する必要書類に記入してくれるかな」


「はい。お願いいたします」


「おっと、ユウ……君は夕刻まで待つんだったね。外に出て考えたいなら、ドアの前にいるジークに言ってくれればいいからね」


「……待ってください。やっぱり自分も今、答えを出します」


「いいね、どうすんだい?」


「その前に質問があります。宜しいですか?」


「勿論、いいとも。私が知っていることなら、出来る限りのことは答えよう」


「ありがとうございます。質問は一つだけ、自分の幼馴染の4人も同じく試験を受けていたのですが、彼らの合否が知りたいのです」


「なるほど……。確かに君にとっては重要な事だろう。君のことを調べれば4人の事が必ず出てきたからね。

 だから、君の幼馴染の合否も当然知ってはいる。しかし、あと一週間は口外無用な件だからね…………」


「お願いします。どうしても決めるために、知りたいんです」


「……よし、いいだろう。君の口が堅いと信じて、話すことにしよう。

 

 おめでとう。君の幼馴染みは4人全員が見事に合格だ」


「…………分かりました。ありがとうございます。今、決意が固まりました。自分はー」

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