第32話 上級魔術科試験
試験二日目と三日目は、上級魔術科を志望する学生のみが参加する応用魔術実戦試験と、他の専門学科を志望する学生が対象の技術試験が実施される。
この上級科の試験は、前日の魔術発動試験とは異なり、より実戦にフォーカスした物である。応用魔術式の発想や、技術、熟練度などから、総合的に点数づけをする物で、試合の勝ち負けはそこまで重要ではないと言われている。
しかし実際の所は、卒業生のオリビア先生もわからないと言っていた。……まぁ言ってるだけなのかもしれないが。
オレたちは、魔術学院の敷地内に3つある闘技場内の第一闘技場に集合していた。その規模は長径168m、短径140mの楕円形、高さは46m。4階建てで、天井部分は開放されており、空が見えるように設計になっている。
そして、現在。試験の監督役の教師による試験内容の最終注意事項を聞いている最中である。
[1.試合時間: 1試合、30分以内とする]
[2.服装について: 学院指定の戦闘服に限る]
[3.武器等の持ち込み・使用: あらかじめ提出書類に記載、学院の許可を貰った物に限る。また、特別な条件つき魔術の場合も事前に審査を通ったもののみ許可する。]
[4.試合場の範囲: 今現在、整列している、観客席の前壁で囲われた円形のこのフィールド内と、上下500mまでとする]
[5.勝敗・判定]
①ノックアウト
②テクニカルノックアウト(医師、審判等の判定による)
③口頭によるギブアップ、その他戦意喪失の表明
④反則による失格、試合放棄、規定時間内に決着がつかなかった場合の審判全員による判定
[6.反則]
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「─以上が今試験のルールとなる。そして、試験点数の採点についての質問は一切受け付けない。では、試験監督である私からの話は以上だ。続いて─」
数十分の後、ようやく長い試験官達の話は終わり。オレたちは、受験番号ごとに会場に案内された。
オレは皆より遅くに願書を提出していたためか、試験会場がノア達と別の会場であった。
「じゃあな。ユウ、俺たちの方が早く終わると思うから、ユウの試合ゼッタイに見に行くぜ」
正直、前日の試験の様な無様を晒すかもしれないから、見に来て欲しくないのだが。オレの試合開始時間は最終組で、時間に余裕もあるし、特に見に来させない理由がない。
これについては飽きらめるしかないな……。
「あぁ、ありがとう。でも、そっちの活躍を見れないのが残念でならないな」
「何いってんの。私達5人の試合の勝利は決まってるんだから。別に見る必要なんてないじゃない」
『だったら緊張するから、見に来ないでくれ〜』とは言えない。しかも、勝つのは確定事項って、流石に冗談だよな。
「確かに。お前らが負ける光景は想像できないけど、先生が言ってたじゃないか、勝敗は関係ないって」
「そんなことも言ってたわね。だけど負けるより、勝った方が良いに決まってるでしょ?」
相変わらず凄い自信だ。これだから天才は……。
「えっ! アイナ、私の試合見てくれないの?」
アミーが分かりやすく、落ち込んでしまった。
「ち、違うの、そういう意味で言ったんじゃなくて。え〜と、アミー以外の参戦者はどうでもいいから見ないけど、アミーの試合は絶対に応援するから。大丈夫よ。うん!!」
アイナは慌てふためき、口からひょうひょうと言い訳がましい、言葉を紡ぐ。
「ははは、冗談だよ〜。ちょっとからかっただけ」
「もう、アミー!」
何をいちゃいちゃしてるんだ。てか、男陣のオレたちは一体何を見せられている。
「じゃあ、もう行くよ」
「あっ! 約束、絶対に勝ちなさい」
「わかったって。できることは、全てやってやるさ」
今はそれしか言えなかった。
はっきり言って、昨日の試験の成績からして、オレがどれだけ、本試験で素晴らしい結果を残そうが、上級魔術科の合格は絶望的だと思う。
だが、何か奇跡が起こるかもしれない。希望がゼロにならない限り、諦めるのはまだ早いのだ。