第31話 学科共通試験
宿を出発して、30分。
とうとう着いてしまった。国立魔術学院に……。
といっても、市街地と学院敷地の境目がわからなかったから、何処からが学院だったかは知らない。それに、少し遠くに学院の本館である魔術学院所有の城は、随分前からに見えていた。
城の外観を簡潔に表すなら、山を切り拓くように立ったゴシック様式の巨大な石造りの城というべきか。
つまり、遠目からでもよくわかる、壮大な建物だということだ。王城ランクル城も来るまでに拝見したが、学院の城の方が大きいかもしれない。
しかし、今日一日目の試験の会場となるのは、学園のシンボルたる本館の城ではなく、敷地内の端っこに位置した副館である。
ただこの数個、存在する副館は、2千人という学生が同時に受験できる、立派な講堂であることには変わりない。普段は普通科等の上級科以外の生徒が主に講義を受けるのに、使っているらしい。
試験一日目は各学部共通の筆記試験と基礎魔術の実技試験である。
……緊張で手から汗が止まらない。ここまで試験で緊張したのはいつぶりだろう。前世界でも高校受験、大学受験、就職試験、資格試験など数々の試験を潜り抜けてきたオレだが、筆記試験はまだいいとして、実技がある試験は初めてである。しかも、魔術の発動試験とな。
チラリと、皆んなの様子を伺う。
……どうやら、緊張しているのは俺だけのようで。今日の試験はあくまで前哨戦であり、本番は明日の応用魔術試験なのだろう。
ノア達にとって、今日の基礎、中級魔術の発動なんて物は、今まで何百回も試行してきた訳で、今更苦労や苦悩する作業などではないのだ。
「ユウ? 緊張してるの? 」
「いや、ぜんぜん 」
「……でも、顔色悪いよ、真っ青」
「ちょっと……そんな調子で大丈夫なの? 本番なんだか、しっかりしなさいよ 」
「わかってる、まかせろって!」
アミーとアイナから、1人だけ緊張しているのを心配された。から元気をみせて、その場は誤魔化した。
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おわった…………。二つの意味で。
今日の全ての試験過程が終わり、分けられていた会場単位ごとに順次、解散となった。
本当にどうしよう。筆記試験はそこそこの手応えはある。
だが、基礎魔術発動試験、お前は駄目だ。ダメダメだ。
今回主だったのは、4元素の魔術の初級、中級の計8つの発動試験。しかし俺は中級1つ、初級2つができなかったのだ。
監督官の先生も驚いていた。『何故、初級で発動できないものがある? 中級は3つも発動できているの』にと。
まぁ監督官の指摘通り……普通はそうはならない。
なるとしても、逆の中級魔術の発動ができないだろ。
大体、俺は一ヶ月前に中級魔術師の試験を既に受かっているのだから、尚の事だ。
それに発動できた魔術の完成度も何ともいえないもので、筆記試験だって、そこそこであり完璧な訳ではない。
この状態から明日の試験で挽回できるのか……?
そんな事を悩みながら、オレは試験終了後、集合することになっている学院正門前まで、トボトボと歩いていた。
「おっ! ユウも早くおわったのか 」
「あぁ……」
そこには、オレよりも先に試験が終わったノアがいた。
オレとノア以外は皆、同じ会場での受験なので、他3人はまだなのだろう。
「なぁ……なんか今朝よりも顔色悪くないか? 体調悪いなら、皆んなを待たずに先帰ろうぜ」
「いや、ほんと体調は問題ないんだよ 」
「だったら、筆記試験でわからない問題でもあったのか?」
「そう言う問題……でもあるな」
「まぁ大丈夫だって、俺も筆記試験で解らないところは有ったし、俺達の本番は明日だ、明日。切り替えて、行こうぜ」
「そう……だよな」
そうであってくれないと困る。試験の採点、評価が明日の応用試験に重きを置いている事を願うか……。




