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第29話 いざ試験会場へ

 ユウ達が受験する魔術学院は、ロワード王国の中心に位置する王都であるランクル大都市。そこから少し離れた山岳地帯に建っている。


 そして、クーツ村からランクル大都市までは魔術式車でも約5時間かかることから、都市に前日入りをする必要があるのだ。



 ユウ達はランクル都市へ向かう魔術式車の中、今まで一度も行ったことがない、大都市への期待に胸を膨らませていた。



「やべぇぇぇ〜! ワクワクしてきた。早くランクルにつかねえかな〜!」  


「まだまだ着かないってば」


「そうだ! 試験が終わったら、みんなで美味しい物沢山食べようね!」 


ノアとアミーは気持ちが浮き立っていた。 抑え役のアイナは大忙しだ。


「わかってるから、落ち着きなさいって」 


 ランクルへの道も半分が過ぎたと思われる頃、ルイがこう切り出した。


「そういえば聞いたか……。例の場所の調査が終わって、警戒が解除されたらしいぞ」


 参考書に目を当てたまま、特に興味がない様子で、アイナが返事をした。


「へぇ……調査の結果はどうだったの?」


「調査隊の報告によれば、一連の騒動は野盗による物だったとされていたな」


「え……? 野盗?」


「なんか意外だよな」


「ふ〜ん、まぁ解決したんなら、もういいんじゃない。

 でも、あれね……ふたりは現場に行ったのに知らなかったの?」


「いやいや、俺らは街で聞き込みしただけで現場には行ってねぇよ」


「わざわざ都市まで行ったのに……聞き込みだけって、貴方達らしくない」


「俺達が行こうとしたところを、オリビア先生に止められたんだよ。言っただろ、オリビア先生に指導してもらってたって」


「そういうこと……」


「だが、何か怪しいと思わないか? 調査隊の装備品が狙いだとしても、野盗にしては回りくどい」


「ルイ、気にしすぎだ。警戒解除ってことは、何も問題がなかった証拠だろう?」


「しかし……」


 ここ数日、特にルイは未だにあの音の件を気にしている様子で、何度かオレたちを問いただしてきた。

 嘘が下手くそなオレは内心ヒヤヒヤしたが、ポーカーフェイスなノアが前に出てくれたおかげで、嘘がバレることもなかった。


「はぁ……わかった。今はそれでいいが、何か些細なことでも、気がかりがあったら教えてくれ」


「わかってるって。何かあればな」


 ルイは何故ここまで、気にしているんだ? 根本は、単純にオレたちや村の皆の事を案じてのことだろうが、何か覚えがあるから、執着しているように見える。


 もしかして魔族が侵入していることを、勘付いているとか……。ルイもアリシアと同様にオレたちとは音の件の捉え方が違っていたから、何かを掴んでいる可能性はある。


 でも、そうならもっと必死になっている気もするし……わからないな。


 本来はルイが抱えている物、何か疑念があるなら、こちらから聴き出してやるべきなのだろうが。口止め、監視されている状況だ。何処で誰が聞いているかわからない以上は、得策ではない。


 そうだ、いつも率先してというか空気を読まずにズケズケと切り込んでいく、あのノアがだんまりを決めこんでいるんだ。


 恐らくは、関連がある話を迂闊に深堀するのは、真実の伝搬に繋がりかねないと考えて、突っ込めずにいるのだろう。


 ユウとして、悩んでいるルイを見て見ぬ振りしか出来ないのは心苦しいが、今は国の対応を待つしかないのだ。


 大丈夫だ。未だ国の結界が解かれた様子はない。何より姉さん達、大人が動いているだ。オレたちが考えた所で、何も出来ない、信じるんだ……。信じるしかないんだ。


         ・

         ・

         ・


 そして時は流れ、予約していたラントル都市の宿に着き、約5時間にもなる長い式車での移動は終わったのであった。村を出発したのが遅かったためか、はたまた同じ理由で集まった学生達で道路が混んでいたためか、時刻は午後9時前になっていた。

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