第28話 調査の終わり
1720年8月10日 午前11時10分 中等魔術学院。
昨日の衝撃的な事件のことなど、知らない様子で、都市ポトルのありふれた日常が始まる。
学生達は寝惚け眼で学院に登校し、都市で働く大人達もまた、朝早くから仕事に明け暮れている。
起きてから手持ち無沙汰だったオレたちには、すぐに来客がきた。
先生が言っていた通り、国から兵が数名、オレたちを事後の生き残りとして、取り調べにきた。しかし、姉や先生が殆ど状況を伝えてくれていたのだろう。特に難しいことはなく、簡単な質問と事実確認だけで、あっさりと終わってしまった。
オリビア先生は監視について、言及していたが、当然そのことは伝えられなかった。
……エリカ達のことは、気がかりだったが今はどうすることもできない。オレはオリビア先生に昨日の経緯を話し、気にかけてもらうように頼むことしかできなかった。
「じゃあ、帰るかっ! これ以上ここに留まる理由もない」
「そうだな。アイツらも早く帰ってこいって、ギャアギャアうるさかったしなぁ」
実は昨日の夜、連絡をしておかないと正確な状況が向こうに伝わっていないと考えて。
アイナに連絡を1本だけ入れることした。そして、繋がるやいなや、通信越しでも分かるほどの剣幕で、説教臭く怒鳴り散らかされたのだ。先程の兵士が妙に優しく感じた理由は、これも原因の一つだろう。
とりあえず音の調査を黙って実行した事を謝り、オリビア先生からの再指導により遅くなったから、泊めさせてもらっていることにしておいた。
まぁ大体は合っているし、嘘ではない。
ポトル都市、南門。
ノアは帆車に魔力を込め、魔術式を展開させた。
「じゃあ、先生。もう村に戻るよ」
「あぁ、本当にご苦労だった。今回の経験はお前たちの魔術師としての人生で必ず、役立つ。大切にしろ」
最後に先生はそれだけいうと、学院に戻っていた。そして、オレたちのポトル都市での長い調査は終わりを迎えたのだ。
※
帰還した日から試験までの2日間は、何も特別なことも起こらず、ユウとして変わらない日常を過ごしていた。
いや、変わったこともあったか……。この国、全体での警備が強化され、クーツ村にも駐屯している魔術兵の数が増員されていた。
知っている者からしたら、あからさまの対応だが、村の人達は特に気にしている様子もない。
まぁ、警備している彼らですら、何故、増員したかの本当の訳を知らないだろうしな。
あと……やったことといえば、オレの自己修練ぐらいだ。たった2日間で成果を出さなければならなかったので、不審がられながらも、姉に基礎魔術について再び教授してもらい、不出来だった魔術も少しはマシなっていた。
正直、帰還後のオレは答えを見つけられておらず、まだ戦うことへの抵抗が拭いきれていなくて、やる気が湧かずにいた。
しかし、ユウとして皆との約束を果たすことを優先的に考えるべきだと決めつけ、誤魔化すことで、気にならなくなっていた。いや、気に留めないように忘れることにしたのだ。
そして日は流れて、オレたちは無事に試験会場入りを果たしたのだ。