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第27話 迷い

 先生の言われた通り学生寮に向かうために、学院棟を出た。


 向かう途中、ノアは未だ興奮さめやらぬ様子で、先生が放った大炎柱の話をしている。


「マ〜ジで! オリビア先生の魔術、凄すぎだったよな。あの魔族を超高火力で一瞬で消し炭にしてさ。今までも先生の魔術は見せて貰ってたけど、今日のはマジ別格だったぜ」


「……確かにすごかったな」


 どうやら、オレたちは同じ経験をしたが、お互いが感じとったものが大いに違うらしい。そんなことを考えながら、オレは今ふと思いついたことを、口滑らしていた。


「なぁ、今日のことで戦うことに恐怖を抱かなかったのか?」


「……どうしたんだ? ユウ。弱音なんて珍しい。

 確かにさ。あの魔族に、オレ達の今の実力では全く敵わなくて、俺も絶望した。    

 けど、それは当然だろ? まだ中等を卒業したばかりなんだ。

 そして、俺達が目指す上級魔術師は先生やお前の姉さんだ。そんな、ふたりは、あの魔族に容易く勝ったじゃないか。だからな、俺は今日よりハッキリと目標を再確認できたと思うぜ。必ず上級魔術師になるって目標をよ」


 なるほど……素晴らしく前向きな思想だ。しかし、こうも考え方に差が出るのは、オレがやはりユウじゃないからなのだろう。

 もし、元のユウなら同じことを感じ取ることができたのかもしれない。


 そして引っかかるのは、弱音が珍しいということ。元のオレ(夢羽)はそんなことはない。むしろ、ガラスのハートといってもいい。ユウは相当な鋼の心を持っていたみたいだ。


「先生や姉さん達、上級魔術師が強いのは、わかっている。そして目標にするべきだともな。

 でも、使える魔術レベルだけで見ると中級魔術師の実力はオレ達と同じだ。その中級魔術師が、あの魔族に傷1つ付けられずに壊滅してるんだぞ。仮に上級魔術師に成れなかったら、オレはどうすればいい?」


 オレは転生による不安とか、戦う事への恐怖など色々な物に押しつぶされそうになっていたのだろう。ユウを取り繕うことなど忘れ、ノアにオレの本心の殆どをいいかけていた。


「ユウ……お前は慎重なやつだと思っていたが、慎重を通り越して臆病になっていないか?

 何よりオレ達は7年前に誓ったじゃないか。今、戦うことに疑問を持ってどうすんだ?

 オレは例え、今度試験に落ちて、上級魔術師への道が途絶えたとしても、立派な兵士に必ずなる。そして戦うことに臆したりしない」


 ノアの戸惑った表情を見て、自分の発言の危うさに今更、気づいた。


 私は間抜けだった。昨日の夜に立てた目標すら見失いかけていた。


 ユウためにもオレは……。


「……そうだったな。オレ達は約束した。絶対に今度は仲間を守ると」


「あぁ、そうだぜ。試験前にあんな事が起きて、しかも魔族が結界内部に潜伏しているかもしれないなんて、不安定になるのもわかる。

 だがな、いまの魔族との関係を考えれば、いつ戦いが始まってもおかしくないんだ。

 俺はあんな想いを2度としたくない……俺たちは守るんだ、皆を」


 そうだ、そのとおりだ。オレたちは仲間を守るために立ち上がらなければならない。


 しかし、甘く単調な考えになるが、9年前の事件以前は、魔族と人間は同じ地球で200年も共存できていたのだ。

 まぁ共存といっても表面上だけで、前大戦で負けた魔族が不利な立場だったのは間違えない。アガレフに先導され、魔族達が人間に牙を向いたのは、そのシワ寄せが来ていたからだろう。その不満を解消するのは、容易ではない。


 けど、可能性があるなら……戦いを避ける道を模索するべきだと思ってしまうのは、オレが臆病者だからなのだろうか。

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