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第26話 秘密

 保険室に戻る途中の廊下で、オレは陰鬱な気持ちを切り替えてから入るつもりだったが、魔族との戦闘のことや、さらに魔人との再会が重なり、なかなか動揺した心が安定してくれなかった。


 気づけば、深々と呼吸を10回以上はしていたと思う。



 ……埒が明かない、もう入ろう。


 そして、保健室のドアの引き手に手をかけた。


「先生、戻りました」


 保健室では、既に目を覚ましたノアが先生と先の戦闘について、興奮気味に話していた。


 先生は少し、その勢いに疲れているようにも見えた。


 まぁ、火炎魔術を扱うノアにとって、オリビア先生は目標みたいなものだし、しょうがない。


「おう、ユウ。体は問題ないか?」


「かすり傷だけで、もう何ともない。ノアも肩とか大丈夫なのか?」


「もう、何ともねえよ。ほれこの通りだ」


 そう言って、肩をぐるぐる回して、元気さをアピールした。


 しかし、回した肩は魔族に掴まれた方ではなかった。


 ノアのことだ。まだ痛みはあるが、俺を心配させまいとしているのだろう。本当に配慮が行き届いた良いやつだ。


「あと、あの時は助かったよ。魔鉱石から出た炎はユウの応用魔術だろう」


「あぁ、あれな。上手く発動して良かったよ。焦って展開の方向、間違えかけたからな」


「えっ! ……冗談だよな?」


「いや……その」


「おいおい。方向違っていたら、シャレになってなかったぞ」


 そんなジョーク混りの会話に先生が割り込む。


「ユウ、今更そんなミスするなよ。もし、したら……矯正指導だ」


 うげっ……先生の矯正指導とか二度と受けたくない。勿論、オレ自身が直接受けたことはないのだが、ノア、アミーと共に受けたユウは、地獄だったと記憶している。


 いや寧ろ、今のオレには矯正ぐらい施さないと駄目なのかもれしない。だが、先生にオレの現状を詳しく知られる行為は軽率で、オレの正体がバレかねない。あの時は、本当に間違えかけたんだが冗談ということにしとこう……。 


「も、もちろん、からかってるだけですよ。あははは」


「だと……いいがね。

 あぁ、そうだった、2人が揃ったから言っておく。とても大切な話だ……。よく聞いてくれ」


「なんですか? 先生」


「今日起こったことは、私やユリなど一部の上級魔術師と国の上層、そしてお前達しか知らない出来事だ……。

 そして王は、現段階での国民への公表は無用な混乱を生むだけとお考えだ。だから、今回の件は、魔術師崩れの野盗によるものだと、偽り報せることが決定した。

 つまり、魔族の国内侵入は、絶対に口外禁止の情報というわけだ」


「はい……」


「私は……ノア、ユウ、お前達二人を信頼しているが、情報を知った一般人の二人には、これからしばらくは国からの監視がつけられることになる。

 勿論、日常生活に影響が出ない程度のものになるが、理解してくれるか?」


「まぁ、そうなりますよねって、感じなので、大丈夫です」


 軽いノリで、返しているが、ノアは聡明で理解ある人間だ。しっかりと事の重大性を理解した上での、発言だろう。


「オレも理解してます」


 正直、国の対応が正しい物なのかは、わからない。しかし、もし魔族が絶対的な存在であった守護結界の中に存在するなどの情報が広まれば、忽ち、この国の秩序が崩壊しかねないし。それが魔族の狙いである可能性もある。

 いずれ公開するとはいえ、魔族の脅威が何処まで迫っているか掌握できていない現状、今ではないのは確かだろう。


「それと明日、お前達を事情聴取をするために、情報兵団所属の魔術師が此処を訪ねる予定だ。だから、明日の昼まではポトルにいてもらわなければならない。負担になる思うが、よろしく頼む」

 

「え〜と、だとしたらここで宿を見つけないと駄目ですかね?」


「いや、その心配はない。今日は学生寮の空き部屋を貸すから、泊まっていけばいい」


 先生はオレ達の身を案じて、1番負担がないように配慮してくれたのだろう。正直、物凄く助かる。出来る事なら、今すぐ休みたいし、もう今日は何も考えたくない。


「助かります。そうさせてもらいます」


「決まりだな。なら、部屋番号は教えるから適当に使っていいぞ。番号はー」

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