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第22.5話 夢の間 世界が変わった日

熱い……。


辺りは激しい炎に包まれ、子供であれ容赦なく肌身をあぶってくる。


住み慣れた町の面影はなくなり、黒い影と赤い炎しか視界にうつらない。


意識は細く……天まで拡がる煙のせいで息苦しい。酸素を求めて呼吸は荒くなっていくが、吸えるのは嫌な匂いが混じった汚い空気ばかりだった。


この嫌な匂いと似たものを、つい最近体験した。

私が死んだビル火災の匂いとよく似ていた。

回りまわった火により燃えた有機物の匂いがあたりに充満しているのだ。


でも……それだけじゃない気分が悪くなる異臭が混ざっている。この最悪の匂いの正体に薄々気づいたが、脳が理解を拒んだ。恐怖を覚えたからだ。


加えて身体は魔獣によって傷つけられた無数の噛み傷がジュクジュクと痛む。


最悪の状況だ。

なんだって、こんな目に……。


虚ろな意識が少しハッキリしたかと思うと……声が聴こえた。


「言われなくても! ユウは返してもらう!!」

 

これは……ユリさんの声?

少し若いという言い方はあれだが、幼い子供の声ようにかん高い。でも、間違えなくユリさんの声だ。


上手く会話内容を聞き取れないが、ユリさんはいま、強い口調で誰かと言い合いになっている。ピリピリと緊張しているのが声から伝わってきた。


でも変だ、私はさっきまで…………。


この状況に至った過程を整理しようとしたところで、気づいた。


いや、この連続性のなさ、この非現実感……これは夢だ。


オレはまた夢をみているんだ。


ただ……正確にいうなら、これは夢ではない記憶というべきだろう。


この炎の光景は実際にユウが体験した過去の出来事、ユウにとってトラウマのような物だ。


9年前、講和条約を破った魔王軍のユーフテス全土への同時攻撃が始まってすぐのこと……。


平和だったオレ達の町も魔族の襲撃にあい、ものの数十分で、この地獄のような有様に変貌した。


町は囲い込むように火で焼かれ、逃げ惑う人々は抵抗むなしく魔族に殺されていった。そして死体すらも飢えた魔獣の餌にされたのだ。


この辛い記憶はユウが魔族を憎むようになったきっかけだ。


今日、オレが魔族と遭遇したこのタイミングで、わざわざこの記憶を引っ張り出してきたのはユウにとって、これが忘れてはならない重要なものだったからかもしれない。


しかしオレはどう受け取ればいいんだ……。


ユウの無念は痛いほど伝わってくるし、ユウのために何かしてやりたいと思うが、オレはこの関係のない絶望まで引き継ぐべきなのだろうか……。


少し考えたところで答えは出なかった。

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