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第21話 赤い石

「ねぇ……もう終わりなの? 

 大口叩いてたけど。結局、大したことなかったみたいね」


 余裕の表情を見せ、ユリはさらに相手を刺激し挑発する。


「舐めるなよ。下等生物がぁぁ!!! これ、さえ無ければ、最初の一撃でお前を葬っていたぁ!」


「なに? その腕輪を外せば強くなるの? なら、早く外したら?」


 追い詰められたのか、最後の手段なのか、魔族は赤い石が植えられた腕輪を地面に叩きつけた。

 

 それと同時に魔族の女からは、魔力の反応が消えた。


 恐らくは、力を制限する要因となっていたのであろう。

 魔族は、美しかった女性の姿を捨て、奇怪な音をたてながら、筋骨隆々な見るも無惨な体長3メートル位の怪物に変貌した。


「ワタシに、こんな惨めな姿を晒させて、無事に生きて帰れると思うなよ」

 

 怪物の姿に成り果てた女は、最初とは比較にならない程の力と速度で、巨大な肉体によるがむしゃらな攻撃をユリに仕掛けてきた。


 化物が拳を放つ度に衝撃が地面と空間から伝わってきて、近くにいる者の身体を勝手に身震いさせる。


 それでも、ユリは魔族の絶え間ない攻撃を受け流しながら、未だに余裕の表情を崩すことない。


「すげぇ。なんて、美しい剣捌きなんだ……」 


 先程まで震え上がっていたノアは、余りのユリの美しい剣技に見惚れて、無意識に声を漏らしていた。


 しかし、剣と拳が衝突する音で騒々しかった場は、突如静まり返る。


 完全にこの戦いを支配していた筈のユリが、何かに気づいた様子を見せ、優勢を捨て、後ずさりしたからだ。


 さらに、あろう事か七彩剣の展開を解除してしまったのだ。


 ユリの無防備な姿を観て、魔族は低く野太い声で笑う。


「ハハハハ!! 見たところ、魔力が無くなってきたようだな。

 丸腰の人間に遅れをとるワタシではない」

 

 魔族の見当違いな考えに呆れたように、ユリは言った。


「違う……。展開する必要がなくなっただけ。どうやら、もう私が戦う必要は無いみたい」


「……何が言いたい?」


 いち早く、ユリはポトル都市がある方の上空を見ながらいった。


「もしかしたら、私が貴方に敵わない可能性があった。なら当然、救援は頼んでおくでしょ?」

 

 ポトルの街の方角からは、荒々しく燃え盛る火炎を纏った何かが猛スピードでこちらに近づいてくるのがわかった。

 オレたちは見る機会が度々あったから、直ぐに何者がこちらに向かってきているのか理解することができた。


 魔族は、さらなる脅威の登場に動揺し、体を硬直させてしまった。


「なんだ。あれは……」 


 その炎は地面に突撃する勢いで着地し、同時にユウたちや魔族の辺りを覆うように、火の籠を展開させた。


 周りは巨大な炎の壁で包まれ、中にいるオレたちの身体までじわじわと苛む。


 火焔の中から出てきたのは、間違いない。白い髪に白衣を羽織ったあの女性は、オレたちの元担任であるオリビア先生であった。


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