第194話 3rd case
私達は教室の椅子に座り、友達のように雑談していた。
「貴方のホントの名前はなんて言うの?」
「忘れちゃった」
「やっぱり貴方も忘れたのね」
「私も?」
「いえ転生者は皆んな、そうみたいだから」
「ふ〜ん、他の転生者……」
「興味あるの?」
「ううん、ぜんぜん」
「そういえば、さっき言ってた。目標は達成したって何のことなの?」
「あぁ……それはね」
・
・
・
「私はリアム ハッチンズといいます。よろしくお願いいたします。
では正体の確認から行います。貴方様の名前をフルネームで教えていただいてもよろしいですか?」
霊魂には口はない。しかし、意思を考えをつたえることはできる。霊魂は自身の名前を伝えた。
「なるほど、貴方様の名前は六波羅 陽月さんで間違えないですかね?」
そうですと、魂は白い魂は炎をユラユラと揺らした。
それと同時に魂に印字されていた『何か』が、魂から浮き上がり、リアムが持つ台帳に記録された。
「ありがとうございます、確認がとれました」
魂は揺らせることに気づき、膨らませたり、小さくしたり、弾けてみたり、色々と魂を動かし始めた。
「陽月様、遊ばないでください」
はっとした魂は何事もなかったかのように大人しくした。
「ゴホン……しかし、はじめてみましたよ。これほど綺麗な白色は。
私達が貴方様のできる限りの望みは叶えて見せましょう、私達にまかせてください!」
リアムはドンと胸を叩き、ドヤ顔をきめた。
『リアムさん!リアムさん! 気づいてないんですか?』
セリアはリアムに回線から話しかけた。
『なにがだ? 頭の中でそう叫ぶな』
『この人! かなり前に担当した人の探し人ですよ! ほら覚えてないですか? 記憶をキープできる身体をさがしていた人!』
『もちろん気づいている、私に任せておけ。ぎゃいぎゃいと頭の中で騒ぐな』
『はい〜……』
魂はふたりの様子を不思議そうに眺めていた。
「えぇ〜それでは陽月様の転生先ですが。何か希望はございますでしょうか? 私達は転生案内人です。できる限り希望にあった世界をご案内させていただきます」
白い魂は望みを伝えた。
「ゆ、夢羽様がいる世界にいきたい?
夢羽様とは先に死んでしまった貴方様の恋人ですね?」
そうですと、魂は揺らめいた。
「それはなぜ?
夢羽様はとっくの昔に転生して貴方様のことを、きっと……いえ、もう覚えてませんよ?」
魂はしょんぼりと炎を小さくした。
「なるほど、なるほど……ただ謝りたいと。
貴方の人生は、この台帳に記さています。
貴方の気持ちはわかります。
命をかけて救って貰ったのに貴方は数月と保たずに病に伏せ、死んでしまった。彼の約束を一度ならず二度も破ってしまった……だから、一言謝りたい。そして彼が幸せに生きているかを確かめたい」
そうです!と渾身の炎をみせた。
「はぁ…………はっきりと言いますね。かなり厳しいです。彼が生きている世界に送ることはできます。まぁ、これもかなりグレーですが。
しかし彼を探しだすことは不可能でしょう。
既に転生してしまっていて彼は名前も容姿も性別も、種族さえ違う、私達ではとてもー」
『待ってください! なんで嘘をいうんですか?
私たちはガッツリ知ってるじゃないですか?
彼が今どこで何をしてるのかも、何を目的としているかも! だって、私達が送ったんですよ!?』
『俺達の決まりを忘れたのか? 特定の誰かを検索することは禁止されている。プライバシーは守られなければならない。それは知っていても同じだ』
「ルールがなんですか……」
セリアの中でプツンと何かの線が切れた。
「お、おい……」
「私達! 転生案内人の役割は! より良い転生を亡者に与えることです!
ルールがどうとか知りません!
陽月さんも夢羽さんも同じ気持ちなのに!
会わしてあげないなんて! おかしいです!」
やってしまったとリアムは頭を抱えた。
「陽月さん! 任せてください!
夢羽さんがいる世界に貴方を送ってあげます!」
魂はその発言に喜び跳ねる。
「まてまてまて!!
お前わかってるんだろうな……この世界で話した内容は全て必ず忘れるようになっている。
仮に夢羽様と同じ世界に送ったとしても、望みは覚えていない。ただ普通に人生を送るだけだ」
「なに言ってるんですか? 私達にはあの作戦があるじゃないですか?」
「まさか!? お前また!?」
「そのまさかですよ〜! 記憶を保てる肉体に転生したらいいんですよ」
「この前はたまたまだ。そう都合よくそんな肉体現れるわけないだろ!?」
魂は口を挟む。
「か、構わない? 陽月様、これがどれほど無謀な事はわかってますか?」
魂はわかっている、何度も同じことを言わせるなと叫んだ。
「そうだ!そうだ! 黙ってろ!」
「お前が黙っていろ!」
「むぅ……」
リアムは落ち着くために、コーヒを一口啜った。
「ふぅー……そうですか。意思は固そうですね」
そして椅子にもたれ、どうしたらいいか分からず、天井を見上げた。
リアムの脳内には責任やルール、自分達の役割、この仕事を始めた理由……いろいろな事がぐるぐると駆け巡っていた。
「リアムさん、お願いします。私たちは……悪人じゃないって証明したいじゃないですか?」
悩んでいたリアムは、セリアの後押しに負け。
「はぁ……わかりました、特別サービスです、白い魂である貴方様だからです。
セリア探してさしあげろ」
「承知しました! リアムさん押しに弱いですよね〜」
「余計なことをいうな! さっさと探せ!」
「はいはい〜!」
「それでですが、陽月様。実は我が転生所はいま、人員不足でして。検索している間、暇を持て余すことでしょう!」
魂は確かにと炎を縦に揺らした。
「そこで! 転生所のサポート役として働くというのはいかがですか?」
魂はユラユラと悩むような動作をとる。
「ここで働くのは、そうそうできることじゃありませんよ!」
リアムが営業をかけていると。
「りりり、リアムさん!」
「なんだ! 今大事な話しをしているんだ。後にしろ!」
「みみ、みつけました! 空の身体です!」
「はぁ? あ、ありえないだろ?」
「嘘じゃないですよ! 確かにいま、この世界に存在します!」
「前から現実世界では、そう時間は経っていないはずだ。その世界で、一体なにが起こっているんだ?」
「この世界はきっとこの事例が起こりやすいですよ!」
「そんな事あってたまるか!」
魂は準備万端だと、火でグッドサインを作った。
「す、直ぐに行く〜?」
「すご! 火でそんな事できるんだ!」
「陽月様、なんでもありですね。
いやいや違います! 直ぐに行くとは身体の様子や、入る人がどういう人なのか調べなくてもいいと? 冷静になってください。貴方のこれからの人生ですよ?」
魂は急いでいるから、いらないと伝えた。
リアムは唖然として固まってしまった。
「ほ、本当におかしな人達だ」
人達と纏められたことに魂は疑問を持った。
「いえ、こちらの話です。でも、そんな貴方だからこそ、綺麗な白色なんですね……。
わかりました、時間はあまりないです。すぐに準備を進めましょう」
リアムは台帳に転生先の情報を書き込み、セリアに手渡した。
セリアは手際よく、旧世代のパソコンを操作し、転生先の登録を完了した。
「すぐに座標を出します!」
コピー機から、出てきた紙には丸い円の中に大変細かな模様がびっしり彫られていた。
「はい! できました!」
「わかった」
リアムは、それを受け取り台帳の一部と重ねた。すると模様は台帳に移りこんだ。
そして先程、魂から抜けた『何か』は再び形をなし、霊魂に印字された。
「手続きはこれにて完了です。あと数分もしないうちに、陽月様は新たな世界に旅立つことでしょう……」
鮮やか腕だったと魂は炎で拍手した。
「ありがとうございます。
陽月様、貴方は幸運な人だ。奇跡が起こってます。入る身体を簡単にですが、みたところ……夢羽様と関わりがある人物の姉です」
やった!と魂は跳ねてみせた。
「もちろん、この情報を貴方様は忘れしまう。しかし、チャンスはあるということです。
さらなる幸運を祈っています……」
「頑張ってください! 陽月さま! 応援してます!」
そして世界への扉は開かれた。
「新しい人生で、貴方様の希望が叶うことを、私どもは切に願っております
それではお気をつけていってらっしゃいませ。
陽月様……」
リアムの言葉を聞き終えると霊魂は新たな世界に旅立っていった。
・
・
・
「やっぱり……ナイショ」
「えっ? 教えてくれないの?」
「教えてもいいけど、私もよく説明できないんだよね。何故かよく分からないけど、私はこの世界にきて、目的の人を偶然みつけて、目標を達成したの。
たぶん神様のおかげ、うん絶対そうだね!」
「そうなの……? その目的のひとってもしかして……」
「だめだめ! わたし顔に出るから言わないで!
これ以上、情報与えたらエヴァ当てちゃいそうだね。もう何も教えてないから!」
「わかった……詮索はしないわ」
「それでよろしい〜。
ねぇ、私達ってこれからどういう関係になるの?」
「そうね……貴方はどうしたい?」
「えっ? そうだな〜エヴァがイヤじゃなかったら、このままお姉さんでいさして貰ってもいい?」
「いいわよ」
「いいの? 私に気つかってない?」
「別に罪滅ぼしのつもりじゃない。
ただ貴方のことを……もっと知りたいと思ったから」
「そうなんだ、じゃー遠慮なくお姉さんやらせていただきます。よろしく! エヴァ!」
「うん、えっと……」
「今まで通りでいいよ」
「わかった、姉さん……よろしくね」




